『インプレゾンビ』からわかる先進国と途上国のSNSの違い

最近日本のあるユーザーが、最近ナイジェリアの『インプレゾンビ』の方に、クソリプをするよりも現地の写真や食を紹介したほうがいいと提言したところ、『インプレゾンビ』であった人々が次々に地元の写真や食レポ投稿するようになり、日本人ユーザの多くが閲覧するため、彼らの投稿のインプレッションが上がり収入につながったという事件がありました。

2023年12月8日に発売された私の新作書籍『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、海外のネット事情は日本と色々異なるので、『インプレゾンビ』出現に関しても海外の事情を知っておくと様々なことが読み取れます。

現地の人々は悪意があって『インプレゾンビ』をやっていたわけではなく、あくまで日々の生活の糧を稼ぐために「仕事」としてやっていたのです。子供がいる人も少なくなく、家族の写真をアイコンにしている人もいます。彼らのタイムラインにはたまにパキスタンの貧しい村や、学校に行く子供、質素な食事の写真が混ざります。

彼らは生活費を稼ぐために、仕事でやっていたので、日本のユーザーや先進国の人たちがクソリプを送り付けることが嫌だということがわかっていなかったようなのです。

このようなことから、彼らにとってSNSの用途が、日本人や他の先進国の人々とはかなり違うということが見えてきます。

まず、途上国の人々は承認要求を得るためにSNSをやっているわけではありません。情報を得たり実用目的でやっているのです。

とにかく日々の生活が非常に厳しく、仕事を探すのが大変で、現金を得る手段がないので、ありとあらゆるものを稼ぐためのものとして見ているのです。

そこには娯楽や自己承認が入り得るスペースはありません。生活に余裕がないので、趣味とか自己実現とかのためにやるというということが存在しないのです。

これは、私が日々イギリスで生活していて、発展途上国から来た人々と接触して感じることです。

親の世代で移住したような人でも、地元には基盤がなく親の代から貧しいので、頭の中には儲かるか儲からないか、得するかしないかということが主流です。何かを楽しむとか、交友関係を広げるために行うということがありません。

したがって、「人間関係=利害関係」であり、こちらは友達だと思っていたのに、あちらはただ単に何かを得るためにしか考えていなかったということがよくあります。

これもやはり、彼らの育ってきた環境では利害関係がない友人関係を作るとか、ただ単に一緒に楽しむとかということが存在しなかったからだと考えられます。

そしてこの『インプレゾンビ』の人々にとって、クソリプを送り付けるのは生活のためであって、楽しみのためでも、嫌がらせの為でもなかったわけです。

この様な現実から、自己承認や見ず知らずの他人に嫌がらせをしてストレスと解消するという、先進国の人たちがSNSのでやっていることが、いかに恵まれたことなのか、それは生活の余裕があるからこそ可能なのだということがわかる訳です。

Chainarong Prasertthai/iStock

実際に途上国に行くとわかりますが、2024年になっても道路は舗装されていないので、雨が降ればドロドロ、家は日本の感覚だと廃墟です。

私の知人が住んでいるガーナの場合は、地域に有力者が勝手に道路を引いてしまうので、いきなり他人の家を破壊して道路にします。家には虫が大量に湧くので一年中虫との格闘です。行政もまともではないので、一生懸命買った家の権利書や登記はめちゃくちゃです。

パキスタンの場合では、就職はコネがなければ出来ないしやる気があっても学校に通えないので、首都の近代的なオフィスで働くのは夢の夢です。ごみ収集などなく、水は汚染されても当たり前。水道もなく井戸に水を汲みに行く。トイレはその辺の穴です。

リベリアの田舎では、荒れ果てた畑で少し野菜を作って近所に売りに行ったりするのがせいぜい。配達の仕事があればラッキーなのです。

【参考記事】