2025年12月9日発売の私の最新書籍である『世界のニュースを日本人は何も知らない』をお読みになるとおわかりになると思いますが、実はイギリス人は海外の様々な所に散らばって住んでいます。

ドバイは近年大人気の都市の一つでした。そして前回の記事でご紹介したように、ドバイには大勢のインフルエンサーが住んでいます。


ドバイが様々な施策を実施してインフルエンサーを誘致してきたのにはいくつか理由があります。
まず観光です。
UAEは他の中東湾岸諸国同様、近年観光に力を入れてきました。資源が枯渇するのを見据えて、UAEだけではなくこれらの国々は産業の多角化を進めてきたのです。
UAE、特にドバイは都市そのものを「体験すること」を売りにしてきました。欧州のような城や貴族の館はありませんし、スイスのような山はなく、日本のような温泉もありません。アメリカとは売りにする文化も違います。そこで都市でラグジュアリーな体験、ちょっと変わった体験をすることを提供してきたのです。
その広報に重要だったのがインフルエンサーなのです。
政府によれば、2025年にドバイには1,959万人の観光客が訪問しています。
ドバイ経済観光局は「Beautiful Destinations」と組んで「Beautiful Destinations Academy, Powered by Dubai」を立ち上げ、「旅行コンテンツ制作の新しい基準」を作るとしています。
ただ待っているだけでは観光客は来ないので、国家として、自国の売りやイメージを、映像、物語、豪華さを全面に出してデジタル媒体で流す仕組みを作ってきました。
拡散にはインフルエンサーが重要です。特に女性や家族連れにアピールするために、「安全」「清潔」「豪華」「楽しい」「一年中行ける」というポイントを重要視してきました。SNSの使用者の多くは女性なので大変効果的です。
口コミの拡散なので、信頼性が高く、親しみやすく、共感を得やすいわけです。そして女性が重視するのは美しさ、豪華さ、安全性、清潔感です。特に寒いところが多い欧州の観光客は暖かいところに行くのが好きなのでこれが大いに受けました。
2025年の発表でも安全都市評価や女性一人旅の安心感が強調されています。
2つ目がドバイの不動産市場の活性化のためでした。
観光客だけではなく、UAEは実際に住んでくれる人への広報を熱心に行ってきました。行くだけではなく「住んでみたい街」、それがドバイの魅力です。
UAE政府は、一定額以上の不動産購入者や投資家向け居住許可や、5年か10年居住可能な「ゴールデンビザ」を提供しています。物件購入でビザが得られる仕組みです。
これを広報するにあたり、インフルエンサーは実際にドバイの物件に住んで、どんな生活をしているかを投稿してきたのです。豪華で美しいタワマン、プール、レストラン、清潔な街並み、夜景、車、オフィス、パーティー、イベント、家族連れに優しい施設、素敵な学校などの「ライフスタイル」をInstagramやTikTokで頻繁に投稿します。大手デベロッパーやテレビが広告を流すよりも生活の様式が身近に感じられます。
3つ目が国家ブランドの構築です。クリエイターを通してUAEを活性化するための政府組織であるCreators HQによれば、UAEに集まったクリエイターは「単に再生数を稼ぐ存在ではなく、人々との信頼関係を築き、世論を形作り、社会・経済・文化への認識を動かす存在」としています。
つまり政府は、インフルエンサーを単なる広報役ではなく、UAEという国の海外に対するイメージを作り出す「重要な語り手」として扱ってきたのです。
そこで若くて有能、明るいインフルエンサーを大量に誘致し、「未来志向」「国際性」「寛容」「成功」「安全」という印象を世界に広げたかったのです。その中心は、若いユーザーが多いInstagramやTikTok、YouTubeなど、動画や画像中心のSNSです。
2025年のEmirati National Identity Strategyでは、UAEの国家アイデンティティを国内外で推進することを目標にし、コンテンツ制作者向けのメディアの内容方針と行動規範を整備する方針を打ち出しています。
つまりUAEは、国家ブランドをSNS時代に合わせて拡張するために、かなり作り込んだ戦略を持っているということなのです。
日本政府は日本の対外イメージ作りをまだまだテレビや雑誌など既存のメディアに頼っていますが、UAEのようにSNSやインフルエンサーを通したもっと攻めの戦略も必要でしょう。
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