出口里佐です。
パリ後、今回はいよいよ三つ星です。ミシュランの三つ星は、そのために旅行する価値のある卓越した料理と定義されています。1か月前に予約したときからとても楽しみにしていました。
(前回:ぶらり欧州の旅:パリ編② エッフェル塔の見える絶景レストラン)
4. アルページュ
アルページュは、ロダン美術館の向かいに位置していて、周りは閑静な雰囲気です。
今回は6年ぶりに3回目の訪問で、レストランの内装も、サービスも随分変わっていました。アルページュのシェフ、アラン・パッサール氏は、野菜の魔術師といわれるほど、野菜をレスペクトした料理で世界的に高い評価を得ています。
ランチのメニューは、野菜だけのコース、肉も魚もあるコース、そのほか、アラカルトで、前菜、メイン、デザートを選ぶ、選ばないを、自分で組み立てられるプランがありました。今サイトを見ると、10月の秋メニューに比べて、値段が少し上がっているような気がします。
野菜のコースだと、物足りないかもという考え(しかしこれは間違いと後でわかりました)と、肉の焼き具合を勉強のため見てみたいという気持ちがあり、アラカルトで選ぶことに。アラン・パッサールシェフは、以前は「肉の魔術師」とも呼ばれていた方で、肉の火入れにも注目です。
前菜は、野菜のカルパッチョのハーフと、野菜のお寿司のハーフ。ハーフでお願いしたのは、値段もハーフにしてくれました。ハーフで一人分くらいのボリュームです。メインは、仔羊の背肉(キャレダニョー)、デザートは以前その食感の軽さに感動した、ミルフィーユに。
野菜のカルパッチョの美しさに驚き。野菜はアルページュの菜園から運ばれてくるそうです。ドレッシングは、出汁の様な旨みを感じつつ、ポン酢の様な柑橘の爽やかな味も。
野菜のお寿司の酢飯のお米は、日本のコシヒカリを使っているとか。ただし、イタリアのリゾットの様に洗米しないで炊いた感じの、なんとなくざらっとした食感。きっとフランスの野菜にはこういうのが合うのでしょう。
ソースは、カラマタという種類のブラックオリーブから作った旨みの強いもの。お醤油の代わりだから、ブラックオリーブを使ったのかなと思いました。野菜、ご飯、ソースが一体となって、やっぱり久しぶりのご飯はホッとして、美味しいなと、自分は日本人だと再認識。この時、旅は10日目で、白いご飯も10日間ぶりでした。
メインの仔羊は、切り分ける前に、2人分くらいのローストしたばかりの塊を持ってきて、見せてくれました。外側は良い感じに焼けていました。
そして、5分後に、一つ目のお皿です、と登場。メインに一つ目って、二つ目があるの?と思いましたが、とりあえず一つ目を。カットされた断面は、理想的なピンク色。肉汁が見えて、キラキラしています。一口食べると、外側がカリッと、また肉質も良いからか、柔らかで、食べやすかったです。
ソースは珍しい、人参のソース。仔羊のジュだけのソースよりも優しい味わいでした。あまりに美味しかったので、帰国してから、仔羊の塊を買ってきて、ソースの再現に挑戦してみたくらいです。
二つ目のお皿がやはり登場。もうお腹いっぱいでしたが、せっかくなので。こちらは仔羊のジュのソース。付け合わせにカブなどの蒸し野菜。アルページュの野菜なので、蒸しただけで、ご馳走なのです。
デザートのミルフィーユは、高さ30センチ位の巨大なタワーでした。思わず、スタッフさんに、これは10人分?と聞いたほど。隣のテーブルに、日本人の若い女性が2人いらしたので、食べるのを手伝ってもらえませんか?とお願いしたところ、快諾していただきました。
おふたりとも可愛らしい雰囲気で、まだ20歳前とか。調理師学校の生徒さん達で、フランスに一年研修に来ているそうで、アルページュに食べにきたのも勉強のため。フランス語でオーダーして、えらいな、羨ましいなと思っていました。このミルフィーユの味とレストランでしか食べられない超軽い食感を覚えて、いつか作るときの参考にしてくださいね、と話しました。
アルページュのスタッフにミルフィーユを切り分けるのを頼んで、別のお皿に綺麗に盛り付けてもらいました。彼女達は、野菜だけのコースを召し上がっていましたが、コースの感想を聞くと、決して物足りないということは無く、満足でしたと話していました。未来のパティシエールさん、キュイジニエールさん達、頑張って欲しいです。
ミルフィーユは、もちろん美味しかったです。ケーキ屋さんで売っているのとは違って、パイ生地は、持ち帰りしたらすぐに崩れてしまいそうなくらい、繊細で、舌の上でふわりと溶けてしまいそうな軽さです。
最後はアルページュの定番、リンゴの薔薇。薔薇の花びらのようにリンゴを美しく仕立てています。
今回私が予約したのは、地下のサロンで、壁面全体に、アルページュの野菜や果物の料理の刺繍が施されていました。最後にいただいたリンゴの薔薇もありました。ルサージュという、シャネルなどハイブランドのオートクチュールの生地にも使われる、刺繍の工房による作品だそうです。
このサロンは、前回6年前にはなく、コロナ禍の頃にリノベーションされたそう。お料理を待つ間、壁の刺繍を観ているだけでも豊かな気持ちになります。フランスの最高の刺繍職人の作品に囲まれて食事ができるのは、アルページュでしかできない経験です。
会計は一階でと言うことで、階段を登っていくと、アラン・パッサールシェフがそこに!私のメインは仔羊と分かっているらしく、仔羊は、どうでした?と聞かれました。火通りが完璧でした!!(こうして書くと偉そうですね)と答えると、とても嬉しそうでした。シェフはとても日本びいきで、日本にも何度も来ているそうです。
フランス料理の世界で巨匠といわれる、パッサールシェフに歓迎していただいたのには、大変恐縮しましたが、嬉しかったです。料理人ではなくても、料理学校で1年半、専門的に学んだことのある人間としては、神様のような存在です。
素晴らしい空間で、美味しいものを食べて、アラン・パッサールシェフと話して幸福な気持ちになったので、お向かいのロダン美術館でアートを観たい気分になり、立ち寄りました。
その後、ボンマルシェまで行き、お目当てのハーブティーを見つけて、リュクサンブール公園までまた歩いて、さらにサンシュルピス教会近く、ショコラトリーのパトリック・ロジェでチョコレートを少し、ポワラーヌでスプーン型クッキーをお土産に。お土産買わない主義は、この日だけ返上です。
気が付くと1万歩も元気に歩いていました。三つ星レストランでの食事は、やはり、お店を出た後に何かが変わっているのかもしれません。
パリは、観光名所を回るだけだと1回で良いかもしれません。しかし、季節ごとに変化のある料理を味わえる、お気に入りのレストランが何軒かあると、また絶対戻ってきたいなと思います。
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