世界はトランプより習近平を信頼するようになった

ドナルド・トランプ米大統領は1日、イランについての米国民向け演説で、「われわれは今後2~3週間のうちに、イランを彼らにふさわしい石器時代に戻す」とし、「わが軍はこの4週間、戦場で迅速かつ決定的・圧倒的な勝利を収めてきた。これまで誰も見たことのないような勝利だ」とした。

野蛮きわまりない内容だが、高市首相はこの暴君にみっともなく媚びただけでなく「世界に繁栄と平和をもたらすのはトランプ大統領だけだということを世界に伝え、応援したい」といってトランプを増長させたことの責任は大きい。高市首相が褒めても大して影響力ないという人もいるが、世界から総スカンのなかで、腐っても鯛というか、世界第5位の経済大国の首相から無条件の支持を受けていることには大きな意味がある。

かつて小泉首相も、イラク戦争に派兵はしなかったが、最初に全面支持を表明したことでブッシュ大統領から大変感謝された。それと同じようにトランプ大統領は喜ぶだろうが、世界にとっては迷惑この上ないし、政権交代のあと報復が待っているかもしれない。

マクロン大統領がG7議長国として訪日し、愛想良く振る舞って帰ったが、マクロンにしてみれば、エヴィアン・サミットでトランプを過度に支持しないように釘を刺しに来たということだろう。

2026年4月1日 日仏首脳会談

同じトランプ対策でも、安倍首相のときには、仲介を頼んだり、知恵を授かりに来たが、高市首相には誰もそんなことは期待していない。トランプの考え方を変えさせた実績などないからだ。

マクロンに限らずトランプに困り果てている欧州各国が日本を含むアジアの主要国への接近を試みているのは事実である。ただし、その中心は中国である。

習近平国家主席 (中国共産党新聞)とトランプ大統領(Wikipedia)

少し前の中国への警戒感、封じ込めなんかどっかへ吹っ飛んでいる。イタリアのメローニは、政権初期に一帯一路からの離脱でもたもたしたが、その後は打って変わったごますり外交で、とくに台湾や人権問題について苦言を呈したりしないのが評価されている。

フランスのマクロン、英国のスターマー、ドイツのメルツは大型の経済代表団とともに訪中した。マクロンはパンダももらって帰ったが、経済については、中国の自動車産業などの対仏投資を陳情し、あわせて優れた中国の技術をヨーロッパに移転してほしいとした。資本進出と技術移転の方向が逆転したのである。

カナダのカーニー首相は、HUAWEIの幹部逮捕事件以来の冷たい関係を修復し、「ここ数カ月の中国との関係強化は、米国より予測可能だ」といった。日本が中国との関係が悪いことは、世界は歓迎していないし、味方になってくれることはない。

折しも、米国のポリティコ(Politico)がイギリスの世論調査会社に依頼して米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツを対象として世論調査を行った結果、同盟国の人々は「トランプよりも習近平が頼りになり、中国の技術の方がアメリカより優れていると思っており、さらに10年後の世界の覇者は中国であると思っている」という結果だった。

少なくともトランプか習近平を比較すれば日本にとっても習近平のほうがトランプより明らかにベターである。トランプ退陣後はこれほど酷い米政権はないだろうとは思うが、中国と米国との関係の比重を見直すことも選択肢に入れるべき時期が来たように思う。

ウクライナについて西欧がもう少し柔軟にならないと難しいのだが、英国、EU、日本、豪州、インド、ロシア、中国で米国抜きの世界秩序をつくって、米国をそれに従わせるという発想が建設的かもしれない。そういう時代はいずれ来るかもしれないとは思ってきた。そのことは、『国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退』(さくら舎)でも論じたが、それはあと2世代くらい先かと考えていたが、トランプのせいで1世代前倒しが課題になるかもしれない。


国家の興亡史からわかる現代地政学――西欧の衰退

【目次】
第1章 文明の源流と民族奥亡が紡いだ古代ユーラシアの大地図
第2章 大航海、新帝国、革命が形づくった近代ユーラシアの再構築
第3章 ユダヤ・イスラーム・ギリシアの世界が形づくった中東の文明圏
第4章 ロシアとウクライナを形づくった千年の興亡史
第5章 インド文明を形づくった大地・民族・宗教の多層史
第6章 王朝・民族・地政学で読み解く東アジア世界の歴史構造

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