防災と消防団⑥:消防団への寄付を存続するための試案

高橋 富人

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前回の原稿では、消防団への地域住民による寄付を存続する場合整理すべき論点のいくつかを、試案を元に検討してきました。

今回は、引き続き「寄付金の用途の透明性確保」と「消防団の公務外の貢献に対する対価の整理」という二つの論点を概観した後、法律整備の方向性について考えます。

前回:防災と消防団⑤

寄付金の用途の透明性確保

寄付金の用途の透明性については、多数の報道や、全国の市民から基礎自治体に寄せられた意見等で昨今頻繁に指摘されている点です。

寄付を存続させる方向で検討を進める場合、「用途の透明性」の確保は必須だと考えます。具体的にいえば、寄付金の用途を定めた規定類の整備と、領収書等の提出を前提とした支出証憑の提出と公開であり、その手法は地方議会議員の政務活動費のそれを参考にするとよいと思います。

というと、半分は皮肉が込められた表現でもあって、日本の地方議会の政務活動費については、依然透明性が高い地方議会は少ないのが現状です。おかげさまで佐倉市は規定類や領収書はすべて公開されていますので、その意味では「佐倉市等の政務活動費の公開手法を参考に」と言えるのだろうと思います。

消防団の公務外の貢献に対する対価の整理

消防団の公務外の貢献については、非常に悩ましい論点です。

地域のお祭りの警備や神社の草刈りなど、消防団の本来業務ではない地域貢献をどう考えるか。

そもそも、地域のお祭りなどがなかったり、お祭りはあっても消防団に協力をお願いしていなかったりするエリアにお住まいの方なら、「消防団に頼まなければ継続できないようなお祭りならやめてしまえばよい」という立場もありえます。

しかし、消防団員とはまぎれもなく「防災・消防を含む地域貢献ための組織」という成り立ちの歴史があり、地域のお祭りに対する消防団の貢献等も、「地域住民と消防団を構成する若手住民との結束を培う装置」として機能している場合が多くあります。

その意味で、「消防団は公務だけ行えばよい」と結論することは、あまりに短絡的であると考えます。しかし一方で、その業務内容を考えたとき、「防災・消防といった公務に対する慰労」と「公務以外の地域貢献に対する支払い(慰労?)」は、明らかに趣旨が違う。とはいえ、公務以外の地域貢献に対して、税金を投入するわけにもいかない。

また、仮に「公務以外の地域貢献」に対価を支払ってもよい、とした場合支払いの基準はどうあるべきか、という議論もある。「公務以外の地域貢献」の内容、重要度、難易度、危険度、頻度は地域によりまちまちであり、一律規定はなじみません。では、業務として警備会社等に発注するような市場原理にまかせた価格を設定するとした場合、地域によっては支払えなくなるケースもあるでしょう。

この点については、今のところ良い知恵がありません。他方、避けては通れない論点にはなるはずですから、国民的な議論の高まりに期待したいと思います。

まずは、全国的な調査をし、価格や支払いについて一般化できる部分はあるか、例外的に扱わなければいけないのはどのようなケースか、などを精査するところから始めるべきであろうと思います。

法律の整備

以上でみてきた論点などを整理した後、総仕上げとして法律の整備をする必要があります。

次回原稿では、法律整備の方向性について考えます。

次回:「防災と消防団⑦」へ続く

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