日本の営業マンの感性ではヨーロッパで売ることができない

オーナーの趣味で出来た高級家具店

大阪を後にして名古屋で訪問する店GAIAは初めての訪問であった。オーナーは環境保護に関係した企業の創業者で趣味で高級家具ショップをつくった人だ。その企業は現在一部上場企業となっている。

店の玄関も立派なもので高級感が溢れていた。店を訪問するとオーナーがいた。そして店長を紹介してくれた。この店長もすでに定年を過ぎた方で、以前家具の輸入卸業社に勤務されていたとのこと。

iv-serg/iStock

これから高級家具ショップとして軌道に乗ろうとした時にオーナーが他界した。最初にバレンシアを訪問された時はすでに81歳だった。それで店の売上も十分に利益を上げていないということで閉店することになった。もともと、オーナーの趣味でつくった店であって、オーナーが創設された企業とは全く関係のない業種だった。

オーナーが他界されたので本社の方ではそれを維持していく意味がなくなったということだった。結局、弊社とは10年くらいの取引で終わった。辛抱して事業を継続していれば名古屋では本物の高級家具ショップとして成功していたと思う。

 店員との商談は時間の無駄

1998年頃は小売業者もまだ買い付けに力があったので、筆者が訪問してその場で注文がなくてもそのあと注文が入って来ていた。だから、顧客への訪問で新商品を紹介したり、疑問点などに答えるための訪問であった。

また訪問して弊社が取り扱っている商品により親密感を持ってもらうのも訪問の狙いとしてあった。店員に弊社の商品への関心を持ってもらわないことには商品は売れない。しかし、商談で単に店員との商談はあまり成果がないと常々感じていた。私との商談のあと店員の方ではテーマになった商品が売れても売れなくても関係なく責任がないからである。一方、筆者の方は時間とお金をかけて客先を訪問するのであるから買い付けに決定権のある責任者との商談の時間をできるだけ多く取れるようにした。

日本往復は疲れる

1998年4月の帰国では今回の帰国では広島まで行くのに成田から成田エクスプレスそして新幹線というルートではなく、成田から大阪に飛んで、そこから新幹線で広島に行くルートを試してみた。成田からエクスプレス、それから4時間余り新幹線で広島まで移動というのはスペインから日本までの旅で疲れている上に疲れが幾倍にも倍増するからである。

今回はバレンシアに戻るのも1回のトランジットだけにした。2回もトラジっとするのはもう疲れる!!!

それで関空からフランクフルトに飛んで、そこからバレンシア直行便を利用した。

 和家具の卸屋が輸入家具で成功しない理由

今回の訪問では兵庫尼崎のTAM社を初めて訪問した。日本の家具を専門に卸販売をしている会社だ。福岡のKT社の社長と一緒にTAM社の専務がバレンシアを訪問されたのが縁であった。

日本の家具しか扱ったことのない卸屋がヨーロッパの輸入家具を仕入れて小売販売して行くのは容易ではない。先ず、その為には社員を教育する必要がある。日本の家具を売るような売り方では輸入家具は売れない。つくりが日本の家具のように几帳面にはできていないからだ。日本の高級家具だと引き出しを一旦出して、底板を上にして入れてもおさまる。それだけ精工で几帳面にできている。

ところが、ヨーロッパの高級家具を同じようにしても引き出しは中に入らない。しかし、ヨーロッパの家具は象嵌や色の出し方が日本では真似できない。この違いを十分に理解した上で販売をやらないと小売業者を説得できないということ。それが日本家具しか扱ったことのない卸屋の営業マンではできない。先ず、本人自身が売るのに自信を持って売れないからである。家具のつくりを気にするからである。家具もファッションだという感性が営業マンに必要なのである。

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