「少子化と縮減社会」の再設計の問題⑨:「骨太の方針」と「国民生活基礎調査」から

金子 勇

(前回:「少子化と縮減社会」の再設計の問題⑧:全国知事会「鳥取宣言」の焦点

「骨太の方針2026」の公表

高市内閣は『経済財政運営と改革の基本方針2026』(「責任ある積極財政」元年~日本の挑戦を起動する)』(以下、「骨太の方針」と略称)を7月21日に閣議決定して、すみやかに公表した。これは38頁の冊子であり、まずはその目次を紹介しておこう。

第1章 マクロ経済運営の基本的考え方

1. 「強い経済」の実現に向けて
2. 将来世代への責任を果たす持続可能な経済社会の構築

第2章 日本の成長力強化と安全・安心の確保

1.「強い経済」の実現
(1) 「日本成長戦略」の推進
(2) 成長基盤の強化
(3) 強い地域経済の構築
(4) 人材力の強化・人材総活躍

2. 強い外交・安全保障の確立
(1) 外交力・安全保障・情報力の強化
(2) 経済安全保障の強化

3. 国民の安全・安心の確保
(1) 防災・減災・国土強靱化の推進
(2) 東日本大震災・能登半島地震への対応
(3) 治安・安全の確保
(4) 外国人政策の推進

第3章 責任ある積極財政に基づく「中長期経済財政計画」

1. 「強い経済」の構築と「財政の持続可能性」の実現

2. 全世代型社会保障の構築
(1) 社会保障と税の一体改革の推進
(2) 成長型経済に合わせた持続可能な社会保障制度

3. 主要分野ごとの重要課題と取組方針
(1) 少子化対策と日本の未来を担うこども・若者のための政策の推進
(2) 公教育の再生、研究活動の活性化
(3) 戦略的な社会資本整備の推進
(4) 持続可能な地方行財政基盤の強化

4. 計画推進のための取組の強化

第4章 当面の経済財政運営と令和9年度予算編成に向けた考え方

1. 現下の経済情勢と当面の経済財政運営について

2. 新たな予算編成の在り方と令和9年度の基本方針

ここでは「骨太の方針」全体を満遍なく紹介せずに、私の関心に沿う内容を選択しながら、コメントを付加してみたい。

厚生労働省「国民生活基礎調査」結果

本稿では、ほぼ同じ時期に公表された厚生労働省「国民生活基礎調査」(7月17日公表)結果も使い、「骨太の方針」の論点を相対化する素材として活用する。

「国民生活基礎調査」は、保健、医療、福祉、年金、所得などを包括する国民生活の基礎的事項を調査し、厚生労働行政の企画、立案に必要な基礎資料を得ることを目的に、1986年から始まり、3年ごとに大規模な調査、その間の各年は調査事項と対象世帯の少ない簡易な調査が実施されてきた。

2025年は14回目の大規模な調査の実施年に当たり、6月に世帯票・健康票が約30万世帯、介護票は約7千人、7月に所得票・貯蓄票が約2万8千世帯を対象として配布され、世帯票・健康票は約18万8千世帯、介護票は約5千人、所得票・貯蓄票は約1万7千世帯の有効回収となった。

国勢調査を除けば、行政の社会調査としては最大の規模であり、その結果は各種研究や行政での政策形成などに活用されている。

強い経済

一方「骨太の方針」を全体的にみると、「強い経済(強い地域経済も含む)」が22回も使われていたところが大変印象的であった。

「強い経済」の定義は明確には下されてはいないが、本文からいくつか拾えば、

「従来の延長線上ではない、新たな経済財政運営への抜本的な転換を図る」(:1)
「『安定的な物価上昇』の実現に資する適切な金融政策運営が行われる」(:2)
「国内投資を拡大し、供給力を強化し、潜在的成長率を引き上げる」(:4)
「強い中堅・中小企業が主役」(:11)
「民間投資の拡大による供給力の強化を、経済規模の拡大、税収基盤の強化につなげ」(:24)
「危機管理投資・成長投資を支える社会資本を戦略的に整備する」(:34)

などに、その概略が読み取れる。

地域未来戦略

もう一つの特徴は、石破内閣の目玉の一つであった「地方創生」は完全に姿を消し、代わりに「地域未来戦略」が9回使われていたところにある。これもそれほど正確な定義はなされておらず、

「強い経済を構築する」(:4)
「国が一歩前に出て、大胆な投資促進策とインフラ整備を一体的に講ずる」(:10)
「『地域未来交付金』を拡充し、成長資金の供給、企業支援、インフラ整備、特区制度等を活用した規制・制度改革、産業人材の育成を一体的に進める」(:10)
「『地域未来戦略』の推進に向けて重要な役割を担う北海道開発を推進する」(:12)
「福島イノベーション・コースト構想や福島国際研究教育機構(F-REI)の取組を、『地域未来戦略』等と連携して進め、産業発展を促進する」(:21)
「『地域未来戦略』を実行し、地方が持つ伸び代を活かし、新たな産業基盤を構築する」(:24)

などが、主な内容になっている。

持続的な成長を実現する経済

以上の2つの事例から、高市内閣の「強い経済」とは、景気対策を超えて、近未来の日本における生産力・技術力・経済安全保障を強化しながら、degrowthやdécroissance(脱成長と訳されることが多いが、正確には非成長)ではなく持続的な経済成長を実現しようという目標が伝わってくる。サブタイトルに「責任ある積極財政」が掲げられていて、この延長線上に成長戦略が置かれている。

主な内容は4点にまとめられる。

1. 17の戦略分野への大規模投資

  • AI・半導体、情報通信、量子技術、宇宙、防衛産業、エネルギー、国土強靭化など将来の成長産業へ重点投資し、日本の国際競争力を高める。

2. 経済安全保障の強化

  • エネルギー、食料、重要物資の安定供給を確保し、海外依存を減らすことを重視する。

3. 物価高への対応

  • エネルギー価格対策や家計支援を行い、国民生活を守る。

4. 積極財政

  • 財政支出を成長投資に振り向け、成長によって税収を増やし、財政健全化につなげる。

という理念がはっきりと打ち出されている。

私の「縮減社会」との関係から見ると、「強い経済」や「地域未来戦略」は人口減少の原因やその対応や適応についての議論をほとんど行わないままに、技術革新や投資によって供給力と成長力を維持・強化しようとする政策であると思われる。

同じく「人口減少時代」の位置づけ方についても、基本的な認識において「縮減社会」とは大きな違いがあり、むしろ「人口減少社会」は論じられていないといった方が正しい。わずかに「日本成長戦略の推進③(8つの分野横断的課題)」の6番目「THEME06」で「子育てや介護等と仕事の両立支援」が置かれただけである。

「世帯数」の漸増と「平均世帯人員」の漸減

私が提起した「縮減社会」論は、たとえば図1を使えば「世帯数」の漸増と「平均世帯人員」の漸減を重視する。

これは今回明らかになった「国民生活基礎調査」による結果であるが、「骨太の方針」でものべられた「国民のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を図り、誰もが社会の担い手として活躍できる日本の実現」(:30-31)における「国民」が、このような小家族化が進展した世帯構造で暮らしていることへの積極的な配慮が欲しい。

図1 世帯数と平均世帯人員の推移
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」(2025年)

「児童のいる世帯」では「生活が苦しい」比率が上昇

たとえば図2から、全世帯でも3つの世帯類型でも3年前に比べると、「普通」が減り、「生活が苦しい」の比率が上昇していることに気がつく。とりわけ「児童のいる世帯」では、「普通」が39.0%から32.8%に減少した半面、「大変苦しい」では22.9%が27.6%に上昇し、「やや苦しい」も31.7%が33.9%に上がっている。

図2 各種世帯の生活意識
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」(2025年)

しかし、2023年のこども家庭庁設立以降では、『こども未来戦略』加速化プラン通りに、児童手当2兆1000億円が使われ、その他にも育児休業給付1兆900億円を始めとして、若者・子育て世代の所得の増加、子育て支援の拡充、共働き、共育て、社会全体の構造・意識の変化を促す取組がなされた。にもかかわらず、3年前とは「生活が苦しい」が増えている。

本来ウェルビーイングは主観指標だから、国家目標の指標にはふさわしくないことは繰り返してきた(金子、2023;2026)。なぜなら、「資金援助」では国民の「ウェルビーイング」評価は上がらないからである。

小家族化の動向

さらにいえば、「全世代の国民一人ひとりが活き活きと活躍することで、日本人の底力を解き放つ」(:15)、「誰一人取り残されない社会の実現」(:15)などもまた、国民の一人ひとりがこのような小家族化の中で暮らしていることとどのように結びつくのかが不明である。

ちなみにこの40年間の「国民生活基礎調査」における「平均世帯人員」の推移は表1の通りであり、6年おきのデータを見ても着実に「平均世帯人員」が縮小している事実が分かる。

1986 3.22
1992 2.99
1998 2.92
2004 2.75
2010 2.59
2016 2.47
2022 2.25
2025 2.17

表1 「国民生活基礎調査」における「平均世帯人員」の推移
(出典)厚生労働省 「国民生活基礎調査2025」

日本国民は単身者の増加とともに、このような小家族化のなかで暮らしているから、家族機能のうち医療・介護支援機能はもとより、家族機能の低下を踏まえた「こども未来戦略」や「地域未来戦略」の姿が「骨太の方針2026」では皆目見当がつかない。

孤独・孤立対策

さらに本連載⑦(7月19日)で触れたように、WHOですら健康の要に「社会的つながり」を重視するようになった時代なので、「孤独・孤立対策」が掲げられたことは評価できる。しかしその説明が、『重点計画』に沿って『予防』の観点を重視した居場所・つながりづくり等の対策に取り組むNPO等を支援する」(:16)に至っては、二重の疑問点が浮上する。

一つは、「平均世帯人員」が縮小してきた現実に正対せず、「居場所・つながりづくり」を先行させたことへの疑問がある。なぜなら、日本ではますます在宅における「老老介護」の実態が顕著になったからである。

老老介護の実態

図3は2025年日本の「老老介護」の最新の姿を描いている。日本の介護保険制度は2000年4月から始まったが、当初の「要介護者等」と「同居の主な介護者」の年齢の組合せのうち「60歳以上同士」の割合は54.4%であったが、それが25年後には79.0%へと伸長した。

同時に「65歳以上同士」でも40.6%が61.9%に伸び、「75歳以上同士」でも18.7%であった比率が37.1%にまで上がってきた。25年間でいずれの年齢幅の「老老介護」も上昇傾向が鮮明になった。

さらに「国民生活基礎調査」では、「同居の主な介護者」の介護時間について、「要介護者等」の要介護度別にみると、「要支援1」から「要介護2」までは「必要なときに手をかす程度」が多くなっているが、「要介護3」以上では「ほとんど終日」が多数派を占めている。

「同居の主な介護者」のうち、介護時間が「ほとんど終日」である者は、「配偶者」が64.6%と最も多く、次いで「子」が28.9%となっている(「国民生活基礎調査」:25)と分析して、介護問題の重要性を強調している。

図3 老老介護の実態
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」(2025年)

この孤立した「老老介護」の実態は、「骨太の方針」で強調された「全世代の国民一人ひとりが活き活きと活躍する」や「誰一人取り残されない社会の実現」とどのようにつながるのか。この実態に直面すれば、「居場所・つながりづくり」が「老老介護」を取り込みながらどのようになされるのかが知りたくなる。

「強い経済」や「日本成長戦略」それに「地域未来戦略」などの「動脈」への注目もいいが、これらいわば「静脈」に対しても丁寧な対応が欲しいところである。

間接的な「NPOだけの支援」でいいか

もう一つの根源的な疑問は「孤独・孤立」者への直接的支援ではなく、「居場所・つながりづくり等の対策に取り組むNPO等を支援する」(:16)という間接的表現のみに止まったことにある。

NPO支援は当然だとしても、それで「孤独・孤立」者への直接的支援の肩代わりが出来るものではない。「孤独・孤立」者への直接的支援ができない理由は人員不足なのか。それは児童虐待の専門相談員の場合と同じ構造なのか。公的な支援員や相談員が不足しているから、民間のNPOを支援するのだろうか。

この根拠となった「孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画」(2024=2026)で強調された、「悩みや困りごとが深刻化・複雑化する前に対応する」取組であれば、NPO支援だけを強調する必然性はない。

実際にこの「重点計画」では、NPOの他にも「地方版官民連携プラットホーム」、「社会とのつながり」、「民間企業におけるつながりづくり」さらに「居場所づくりなどの地域資源につなげる取り組み」なども挙げられていたからである。むしろNPO以外にも、多様な主体が存在することの周知が「骨太の方針」ではほしかった。

子育てしやすい社会

次に「子育てしやすい社会」や「こどもとともに成長する企業構想」(:32)について述べておこう。

「国民生活基礎調査」の結果の一つに図4があり、この40年間で「児童のいない世帯」が徐々に増加して、2025年の結果ではそれが83.3%にまで増えてきたことが分かる。この急減からも、政府が40年間続けてきた「少子化対策」は完全な失敗といえるのではないか。

図4 児童の有(児童数)無の年次推移
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」(2025年)

現代日本で「児童のいない世帯」が80%を超えた現在、「骨太の方針」でいわれる「こどもとともに成長する企業」(:32)のイメージがつかみにくいし、「『こども若者まんなか』という社会的価値と企業的価値の向上に一体的に取り組めるよう支援と環境整備を行う」(:32)とは何をどうすればいいのか分かりにくい。

わずか30年前には半数程度の世帯には子どもがいたのに、2025年ではそのような世帯は20%にまで減少した。この激減した子どもを「まんなか」にして、「若者が希望を持ち選択できる環境の整備」として、いつまでに何をどうするのか。それが鮮明にならないと、「強い経済」も日本の未来もおそらく明るくならない。

国土強靭化

次に「国民の安全・安心」に直結する防災・減災・国土強靭化の問題に移ろう。「骨太の方針」でも、富士山の噴火や南海トラフ地震それに首都直下地震など、予想される災害被害がたくさん取り上げられている。

基本は「テクノロジーを駆使してハード・ソフト両面の対策強化」(:20)であることは間違いないが、衛星・AI技術も利用できる。ここでは「災害教訓の伝承による行動変容」の重要性が指摘されている(:21)。ただ惜しいことに「行動変容」の具体的方法については記載がない。

行動変容ステージモデル

しかし、幸いなことに厚生労働省「健康日本21アクション支援システム」では、健康づくりに関する多くの研究成果から行動変容ステージモデルが紹介されている。

行動変容ステージモデルとは、1980年代前半に禁煙の研究から導かれたモデルであるが、その後食事や運動をはじめ、いろいろな健康に関する行動について幅広く研究と実践が進められて改良されてきた。

現段階での行動変容ステージモデルは、人が行動(生活習慣)を変える場合は、図5のように「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通るとまとめられた。このモデルは健康づくりだけに止めておくことはなく、防災行動の変容にも十分応用可能である。

図5 行動変容ステージモデル
出典:厚生労働省「健康日本21アクション支援システム」(閲覧日2026年7月26日)

どの行動変容を取り上げるにしても、現段階からひとつ先に進むには、その人が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけが必要になるが、その判断は本人に任せるしかない。

「行動変容」させるきっかけがない

ただ「健康づくり」の「行動変容」分類自体は納得しやすいが、「行動」を「変容」させるきっかけへの言及に乏しい。これは防災に関する行動変容でも同じ問題が生じる。

たとえば「周りの人」という表現だけでは説明が不足していて、個人に対する外部からの全般的影響力に配慮が行き届かない。なぜなら、「周りの人」の範疇には、家族、親戚、友人、学友、親友、親密な他者、知人、学生時代の恩師、職場の同僚、取引先の相手、かかりつけ医、テレビや新聞を通して情報を伝える専門家、ニュースを読み上げたキャスターなどが混在しているからである。

防災庁設置はいいのだが、その下に位置づけられる「地方機関の防災局」(:20)が、どこまで全国的な地域防災力の強化に向けて、行動変容のプログラムを実行できるかどうかが今後の課題になる。

国土強靭化=社会的共通資本+社会関係資本

そのためには社会的共通資本の補修・整備・新増設を優先すること、同時に国民の間に張り巡らされている社会関係資本の積極的活用をめざすことになる。そしてこれらが「社会資本主義」を支える基盤でもある(金子、2023)。

すなわち、

国土強靭化(National Resilience)= 社会的共通資本(SCC) + 社会関係資本(SC)

が成立するのではないか。なおSCCはsocial common capital、SCはsocial capitalの略号である。

農林水産業の行方

「骨太の方針」で気がついた最後の内容として、農林水産業の行方を展望しておこう。

図6はみずほ銀行産業調査部の資料に基づくが、日本農業の高齢化率は他産業比突出して高く2023年段階で54%になっていた。これから想定できることは、農業への人手不足が2030年段階では厳しくなることであり、予想される人手不足率は40%に達すると見込まれる。そのため農産物収量の大幅な減少、作物の品質低下、 耕作放棄地の増加、食料自給率の一層の低下、貿易赤字の拡大に繋がるおそれがあると思われる。

図6 産業別高齢化率(2023)
出典:みずほ銀行産業調査部、2025:17.

しかし「骨太の方針」では、農林水産業では「生産者の急減が見込まれる」(:13)とは書かれたものの、その打開策はほとんど示されず、わずかに「新規就農者や法人等の担い手の確保と田畑のフル活用を進める」(:14)に過ぎなかった。

これでは「食料安全保障の強化と農林水産業の振興に取り組む」(:13)ことはできないのではないか。たとえ「農林水産業分野への投資を促進」しても、中軸となる農業従事者が10年後には半数程度が75歳を超えるのであるから、その構造転換は困難になるであろう。

未来が読めなかった

これは総人口減少、合計特殊出生率の低下、出生数の激減などが予想されるのに、「ワークライフバランス」にこだわり続けてきた厚生労働省の体質と同じであり、農林水産省もまた農業従事者の高齢化と漸減への対処が乏しかったことになる。

「既知の既知」から「未知の未知」までを分類する

この「既知の既知」(known knowns)から「未知の未知」(unknown unknowns)までを分類は表2のようになる。

既知 未知
既知 既知の既知 既知の未知
未知 未知の既知 未知の未知

表2 知識の世界の分類
(注)アーリとマッカスキルの文献から金子が整理した

私が初めて接したのはアーリ(2016=2019)であったが、近著のマッカスキル(2022=2024)でも使われている。要するに人類が知っている社会的事実と未知の社会的事実を組み合わせて、探求する知識の世界を見直すというパラダイムである。

「既知の既知」でさえも、調査や実験方法の革新によって「未知の世界」を発見できるが、「未知の未知」への探求にも人類の関心は止むことがない(表2)。すなわち、知識の探求にはこの4象限からのテーマの選択が最初のスタートになる。

本格的「縮減社会」の到来は不可避だから、最初から「スマートシュリンク」(賢い縮減社会)などは使わずに、「人口減少社会」への対応に関しては、身近な「既知の世界」を見直すことにより、少しずつ「未知の世界」への探索を行うことが「適応」への近道になると考える。

【参照文献】

  • 金子勇,2023,『社会資本主義』ミネルヴァ書房.
  • 金子勇,2026,『少子化と縮減社会』東京大学出版会.
  • 厚生労働省,2024,「健康日本21アクション支援システム」(第三次).
  • 厚生労働省,2026,『2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況』.
  • MacAskill,W.,2022,What We Owe the Future, Basic Books.(=2024 千葉敏夫訳『見えない未来を変える「いま」』みすず書房).
  • みずほ銀行産業調査部,2025,『日本産業が直面する制約を乗り越えるために~人口減少を好機と捉え生産性向上へ』同調査部.
  • 内閣府2024=2026,「孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画」.
  • 内閣府,2026,『経済財政運営と改革の基本方針2026』(「責任ある積極財政」元年~日本の挑戦を起動する)年7月21日.
  • 内閣府,2026,『経済財政運営と改革の基本方針2026』(「責任ある積極財政」元年~日本の挑戦を起動する 政策ファイル)7月21日.
  • Urry,J.,2016,What is the Future? Polity Press Ltd.(=2019 吉原直樹ほか訳『<未来像>の未来』作品社).
  • WHO,2025,From Loneliness to Social Connection : Charting a Path to Healthier Societies、(Report of the WHO Commission on Social Connection).

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