【まとめ】日産ゴーン前会長逮捕:事件の論点は?

2018年11月23日 21:30

日産のカルロス・ゴーン会長が19日夜、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで東京地検特捜部に逮捕されたことを受け、日産は22日、臨時の取締役会を開きゴーン氏の会長職と代表取締役の解任を全会一致で決めました。

日産サイトより:編集部

本事件についてはすでに様々な情報が乱れ飛んでおり、問題の所在がわかりにくくなっています。そこで今回は、アゴラを中心にこれまでの議論を整理することで、事件の論点をまとめてみました。
(※情報は随時更新・追加していく予定です。27日16:40更新)

日産・ルノーの経営統合計画を阻止するためのクーデターか

逮捕の翌朝にまず書かれたのは、大前研一氏が今年5月に解説していたような、日産・ルノーの経営統合を進めようとしたゴーン氏を止めるためのクーデター説。時価総額でも販売台数でも上回りながら資本関係で実質的に支配されている日産が、双方に議決権がない状態になるまでルノー株を買い増し、ルノーの影響力排除を狙っているのではという視点でした。

“足元をすくわれた”ゴーン氏。焦点は25%ルールか?(尾藤 克之)

ゴーン逮捕:政治的背景はあるのか?情報戦に留意を(新田 哲史)

経営統合はフランス政府の意向だった?国際問題に発展のおそれも

関連して、ゴーン氏による日産・ルノーの経営統合の動きの裏にはルノーの筆頭株主であるフランス政府、マクロン大統領の意向が働いていた可能性が指摘されました。仮にそうだとしたら、今回の事件が日仏間の経済問題にとどまらず、安全保障などの国際問題に深刻な影響を与えることも…。

ゴーン逮捕:政治的背景はあるのか?情報戦に留意を(新田 哲史)

カルロス・ゴーンの三重国籍とフランスからの視点(八幡 和郎)

虚偽記載の主体は会社ではないのか

ゴーン氏の容疑事実は「役員報酬を過少申告した有価証券報告書の虚偽記載」。従って20日昼の時点では、有価証券報告書は総務などの担当部門で情報を集約して作成・提出されるため、その中で役員報酬が過少に記載されていたのなら会社組織の問題であり、会長個人を逮捕することは通常ありえないという意見が聞かれました。

ゴーン逮捕から見えるグローバル資本主義の闇(池田 信夫)

役員報酬の隠蔽は、ゴーン氏主導か、会社主導か(郷原 信郎)

株価連動報酬の過少記載なら身柄拘束は妥当か

20日19時に日経新聞が、過少記載されていた報酬はストック・アプリシエーション権(SAR)と呼ばれる株価連動報酬であったことを報じました。SARとは「株価があらかじめ決めた価格を上回った場合に、その差額部分の報酬を会社から現金で受け取れる権利」のことで、これによりゴーン氏に支払われた5年間の報酬40億円が有価証券報告書では0円になっていたといいます。

これを受けて、アゴラの池田信夫は前日の記事を一部訂正し、会長がお手盛りで自分の役員報酬を上げてそれを隠すような行為は許すべきではないと述べました。

最高経営者が会社を欺くとき(池田 信夫)

また弁護士・元衆議院議員の早川先生は、有価証券報告書の虚偽記載容疑での逮捕はその方が形式犯なので立件しやすかったためで、税金逋脱などの罪はこれから問われることになるだろうと指摘しました。

ゴーン逮捕:税金逋脱や特別背任での捜査も免れないはず(早川 忠孝)

経営陣は今年6月にはじめて知った?他の役員の連帯責任の有無は?

一方で、ゴーン氏のSARだけがわかりやすくずっと「0円」になっているのに、今年6月になるまで周りは誰も気づかなかったのでしょうか?池田と元検事・弁護士の郷原さんは、財務部門のスタッフや他の日産役員もやはり認識していたはずだと指摘しています。そうなると今後は、他の役員の連帯責任も焦点になってくることが予想されます。

ゴーン事件は「役員報酬飛ばし」か「経営統合つぶし」か(池田 信夫)

日産幹部と検察との司法取引に“重大な欺瞞”の可能性(郷原 信郎)

日産役員と検察の司法取引は許容範囲内の取引だったのか

他の役員の連帯責任という観点では、日産役員と検察官の間で行われたとされている「司法取引」についての疑念も示されました。郷原さんによれば、今回ゴーン氏、ケリー氏のみを処罰の対象とし、他の会社幹部は処罰しないという「合意」が成立したのだとすると、それは今年6月に導入された「日本版司法取引」の許容範囲を超えているおそれがあるといいます。

日産幹部と検察との司法取引に“重大な欺瞞”の可能性(郷原 信郎)

アゴラでもおなじみの八幡さんは、検察もグルになった会社乗っ取りとも見なせるゴーン氏の逮捕・解任を問題視する一方、国際的な批判が高まることで日本の検察制度が変わるためのいいきっかけになるかもしれないと指摘しました。

ゴーン逮捕と解任は日本の司法制度の自殺行為か(八幡 和郎)

会社は誰のものか:日本型 vs. 英米型

報道によると、ゴーン氏はSARの虚偽記載の他に、ベンチャー投資を装った住宅購入業務実績のない姉とのコンサル契約締結を行なっていたとされています。この点に関連して、「経営者の報酬」についての日本と海外の考え方の違いも議題に上りました。

役員報酬の隠蔽は、ゴーン氏主導か、会社主導か(郷原 信郎)

検察はゴーン氏の5年間の実際の役員報酬は約99億9800万円だったと発表しましたが、世界的にみると年間100億円を超える役員報酬もあります。ゴーン氏は、90年代末に倒産寸前だった日産をV字回復させて多大な貢献をしました。池田が指摘するように、ゴーン氏の「隠れ役員報酬」は日産経営陣の合意によるものだったことも考えられます。

ゴーン逮捕から見えるグローバル資本主義の闇(池田 信夫)

最高経営者が会社を欺くとき(池田 信夫)

ゴーン事件は「役員報酬飛ばし」か「経営統合つぶし」か(池田 信夫)

日本のいまのシステムとヒエラルキーを温存したい攘夷派の反撃か

「いま日本は、まるで幕末のように開国と攘夷で揺れているのではないか」と問題提起したのは、海外で学位を取り、外資系の金融機関で長年働いていた藤沢数希さん。大学入試から会社での働き方まで、日本のヒトに関する制度は非常に特殊でいまもまったくグローバル化していない。今回の事件も、グローバル化をこれまでどおりモノだけに留めて、日本のいまのシステムとヒエラルキーを温存したい攘夷派による反撃の一場面だったと指摘しました。

カルロス・ゴーン逮捕は攘夷派の反撃か ⁉︎(藤沢 数希)

【追記】ゴーン事件に関するネット記事まとめ

追記2415:20)ネット上のゴーン事件に関する記事をまとめました。

日産にとって悪材料ばかりではないゴーン氏らの逮捕(外から見る日本、見られる日本人)
要旨:経営の自由度が増して日産色を出せるようになり中長期的にはプラス

日産会長金商法違反事件-司法取引は国民目線で考えよう(ビジネス法務の部屋)
要旨:会社法より金商法違反の方が他の役員の虚偽記載の認識が問題になりにくいが、投資家の投資判断に影響を及ぼすほどの「重要な虚偽記載に該当するのか」という疑問も

ゴーン氏解任後の日産は、大丈夫なのか?(片山修のずだぶくろ)
要旨:ゴーン独裁への不満が噴出した反乱だが、ゴーン氏がルノーCEOを継続する可能性はまだなくなっておらず、ゴタゴタが長引けば3社凋落も

「ホリエモン逮捕」に通じる「ゴーン氏逮捕」(生きた経済ブログ)
要旨:小が大を呑み込む構図、個人の強欲をクローズアップした報道などがライブドア事件を彷彿。国策逮捕だろう

会計トリックスター・ゴーンの失脚は必然(投資を楽しむ♪)
要旨:ゴーン就任直後のV字回復は会計操作による演出だった。長い目で見ると失脚は悪材料ではないかも

日産が仕掛けた「ゴーン追放」でルノーとの経営統合はどうなる?(M&A Online)
要旨:フランス政府の強い意向により、ゴーン氏追放はルノーとの経営統合を早める

ゴーン追放はクーデターか…日産内で囁かれる「逮捕の深層」 井上 久男(現代ビジネス)
要旨:ゴーン氏ら一部の外国人が高級取りで会社の金で贅沢三昧なのに現場投資を怠っていることへ社内の不満を放置していれば、矛先はいずれ自分に向かってくるという西川氏サイドの判断だったのでは

日産「ゴーン逮捕」で「大いなる後退」を憂う 大西 康之(Foresight)
要旨:犯罪は経営者として失格だが19年間の数々の改革は全否定されるべきではなく、「やはり日本的経営でいいのだ」では時計の針が戻ってしまう

カルロス・ゴーン逮捕、アメリカでどう報じられたか 冷泉 彰彦(ニューズウィーク日本版)
要旨:巨大権力に溺れた「経営者の腐敗」と「グループを構成する一企業が独断でローカルな国の捜査当局に捜査協力している状況への違和感」の2種類の見方に分かれている

ゴーンを“追放”した西川社長の誤算 日産立件で総退陣浮上(日刊ゲンダイ)
要旨:特捜部は法人も罰する金融商品取引法の両罰規定を適用する可能性があり、法人も立件されれば現執行部は責任を取らざるをえないのでは

追記2716:40)ネット上のゴーン事件に関する記事のまとめを追加しました。

先送り報酬80億円を不記載 ゴーン元会長、報告書に(日経新聞)
要旨:有価証券報告書に記載されていなかったゴーン元会長の役員報酬は、「受領を先送りした報酬80億+SAR40億」の合計120億円か

「カルロス・ゴーン氏は無実だ」ある会計人の重大指摘 細野 祐二(現代ビジネス)
要旨:問題はゴーン氏の「故意」があったか。海外の高額マンションの購入は会計基準上の役員報酬とはならず、オランダの非連結子会社から得た役員報酬は内閣府令が定める連結役員報酬に該当せず、40億のSAR費用処理はゴーン氏が日本の連結財務諸表規則や開示内閣府令などを知っていたはずがなく、故意は認定できない。

ゴーン後任はフランス人と仏経済相が言明(八幡 和郎)
要旨:仏経済相はゴーン後任の3社連合のトップはフランス人と言明。ゴーン氏はフランス政府に対してむしろ独立性の高い経営者だった。日本の司法の異常さは日米地位協定の改定などの支障にも。日本が「野蛮」な国と思われないためにも、日産が主導権をとるために検察と組んで取締役2人を逮捕させて、そのあいだにクーデターを起こし、後戻り不能な措置をとったりしてはならない

役員報酬「隠蔽」は退任後の「支払の約束」に過ぎなかった(郷原 信郎)
要旨:虚偽記載とされたのは「退任後の支払の約束」だった。開示義務があるのか重大な疑問。私的な投資資金・経費の支出はまず取締役会で議論するのが本来の会社のガバナンスで、特捜部に持ち込んだのは二人の出席を妨害する目的だったか。SARを虚偽記載ととらえることには重大な支障となる事実あり

ゴーン氏事件 朝日新聞は、なおも「従軍記者」を続けるのか(郷原 信郎)
要旨:退任後報酬の開示義務は疑問、それに加えて、投資家の判断を左右する「重要な事項」であることも立証しなければという二重のハードルが残る。そこに気づいた読売に対し、時効の成立する10年も前の、最終的な損益が不明な余罪(特別背任)の可能性を報じる朝日。朝日はいつまで検察の「従軍記者」を続けるのか

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