ある基礎自治体の条例改定と議会傍聴
長野県富士見町の元町議、エンジェル千代子氏のFacebookの投稿を読んだ。
千代子氏は現在いわゆる一般町民であって、議員ではない。
そこで、彼女が感心をもつ条例の改定について審議される議会の常任委員会を傍聴しようとした。
ところが、議会事務局からは「委員会の傍聴はコロナ対策もあり抽選で3名に限る」との返事が来たため、「なるべく傍聴者が増やせるように、もっと広い場所で」委員会を開催するようかけあったところ、なんとか無事に傍聴ができた顛末について書かれている。
この論考は、彼女が感心を持った条例改定の是非を問うものではない。そうではなく、この時代にわざわざ傍聴に行かなければリアルタイムな、あるいは自分が観たい時間に、条例改廃の審議が聞けないということがこの上なく問題だ、という指摘である。
地方自治体における条例の重要性
条例というのは、ざっくり言えば地方自治体における法律だ。地方自治法の15条において、「法令に違反しない限りにおいて」首長が制定する権限を有する。
また、同法96条において、地方議会の議決事項として「条例の制定や改廃」が定められている。つまり、市町村において制定あるいは改廃される条例のすべては、議会によって審議されなければならない。
「条例なんて、対したこと決められないんでしょ」と思っているあなたは、大きな間違いをしている。
例えば、身近なところでは、公立学校の給食費・水道料金・家庭ごみの廃棄にかかる料金・公共施設の使用料の設定、市長・議員・市職員の給料、生活環境を乱す騒音や悪臭の防止についてなどは、すべて条例により決められている。
つまり、あなたの住む市町村の生活・福祉・産業・教育・環境など、あらゆる政策の基本となっているのは、すべて条例だ。
そのため、原理的には、「燃えるゴミ」一袋あたり住民から300円の処理費用を徴収することも、小学校の給食費を現状の倍に設定することも、条例改定さえすれば可能だ。
そのような馬鹿げた改定はなかなかないが、「影響がわかりづらいが、市民生活にとってとても重要な」条例改定は、議会で日々審議されている。事実、現在佐倉市議会で審議されている議案に、水道料金値上げのための条例改定がある。
にもかかわらず、相変わらず私が所属する佐倉市議会を含む地方議会は「傍聴できるんだから文句言うな」という態度を取り続けている。現役世代は、平日昼間の傍聴はほぼ不可能だ。また、現在選挙権は18歳以下に引き下げられているが、それらの若者世代にも「議会審議は見るな」と言っているに等しい状態が続いている。
よって昨年10月、10名の議連を作って、佐倉市議会において「委員会等の動画公開」の議論を開始すべく議長に申し入れを行ったが、議論が引き延ばされた挙句、本年4月に議長が交代して「なかったこと」にされてしまっている。
さくら会という最大会派に、自由民主佐倉、公明党のあわせて18名が、これら会議体の動画公開に反対する勢力だ。
そこで本年9月15日、昨年議連が提出したものと同趣旨の要望書を、今回は無会派議員3名の連名で提出した。
・委員会等各種会議体の動画公開検討に係る議会改革推進委員会の開催について
今回は、アゴラの媒体力をお借りして、「佐倉市議会の恥」をあえて全国にさらけ出すことで、逃げ道を塞ぐ作戦とする。
よって今後の展開は、アゴラで引き続きお伝えする予定だ。
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