恥ずかしい佐倉市議会⑥:議会を動画公開したくない議員の心理(後編)

高橋 富人

前稿では、議員が「自分たちの利権維持のために行政を捻じ曲げる審議」を観られたくないという心理を、佐倉市議会にて実際に行われた審議の事例をあげて説明した。

今回の原稿では、「市役所からの要請」により、議会審議を公開しないよう仕向ける議員の心象風景と、その結果生じる戦慄すべき末路について考える。

Michael Blann/iStock

二元代表制における議員の「本来の姿」と「与党議員」の存在

以前の原稿に詳述したが、日本の地方議会は「市長」と「議員」が市民により直接選ばれる「二元代表制」という制度をとっている。

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市民としては、市長が無駄な政策で市税を浪費したり、贈賄をはたらいたり、専制政治を実行したりしないよう、市長の政治の「見張り番」として複数の議員を選挙により選び、それら議員の集合体である議会に拒否権という強い権限を与える。そのため、地方行政では市長と議会とは「牽制関係」にあることが求められている。

しかし、議員が本当の意味で直接市民と相対する期間は、4年に一度ある選挙期間の7日間だけだ。選挙以降次の選挙までの4年間は、基本的に大半の市民は市政や議会にほとんど、あるいはまったく興味がないまま生活する。

議員は、ご案内の通り市役所が提案してくる議案を審議する役割なので、市役所職員とのやりとりが仕事の起点となる。そのようなやり取りが繰り返されたある時、何らかの疑義が生じる議案が発生しても、日ごろからの市職員との人間関係を壊したくないがために、できればあまり深く突っ込みたくはないという心境を、議員なら誰しも抱く。そこで、心の弱い議員は「まぁ、市役所さんも色々あるでしょうから」的な態度をとることになるのだが、そのような形で議員と市役所とで、「暗黙の了解」が構成されていく。

もし、議員の議決に対して市民が「深い関心をもって議会を監視」していれば、そのようなことにはならないはずだが、市政に関心のない市民がほとんどであるならば、市役所のために「市役所に寄り添った仕事」をしたほうが、市職員からは重宝がられるし、役所内での自分の株もあがる。圧倒的にそのほうが、日々の議会生活は気持ちの良いものになる。そのようにして「市役所のほうを向いて仕事をする」議員団が形成され、「市役所とほぼ一体化」してしまった与党議員団が構成されることになる。

市役所としては、この与党議員団を手放したくないがために、私のような「そうではない議員」との間に情報格差をつけたり、与党議員団に所属する議員の無理なお願いを聞いたりしながら、なんとか自分たちの議案を「否決させない」よう必死になる。

このようにして「全員与党」になってしまう地方議会もあると聞く。そのような場合は、もはや議会の存在は意味がないに等しい。単に市長の「追認機関」として、税金を無駄遣いすることになる。

しかし、一部でも「疑義が生じる」議案に対して真摯に向き合う議員がいる場合、議会での審議内容を「できる限り公開してほしくない」とする市役所の心理は、本連載の3稿で説明した。また連載の4稿で、それら議案をずさんに審議している「与党議員」たちも、その姿は極力隠したいと考えていることを確認した。

このように、市役所の強い要請とあわせ、自分たち「与党議員」の思惑も加味され、いつまでたっても地方議会の主戦場である「委員会等の動画公開」は先に進まない。

しかし、このような悪弊が長く続くうち、「与党議員」たちは、自分たちには数に裏打ちされた「拒否権」という強大な武器が備わっていることに気づく。この武器を使えば、自分たちの利権を守るために行政を捻じ曲げることすら可能だ。そこに気づいた「与党議員団」は、やがて「市民の利益」はそっちのけの「利権議員団」という怪物になる。その姿は、本連載の5稿で概観した。

このようにして形成された「民主主義の怪物たち」に占拠された議会の姿が、佐倉市議会だと私は考える。

市役所がもたれ合いつつ大切に育ててしまった与党議員団は、もはや彼らの手に負えない怪物に育ってしまったのだ。

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