前稿では、議会の審議を動画公開したくない議員の「方便」と、その方便の裏側にある「市民に自分たちのずさんな審議をみられたくない」という本音について考えた。
今回の原稿では、「自分たちの利権維持のために行政を捻じ曲げる審議」を観られたくないという議員たちの本音を、実際の審議を例にあげて考える。
圧倒的多数会派による利権維持のための議決
通常、議会内に圧倒的多数をしめる会派が存在し、その会派が市長と対立関係にない議会では、市役所からあがってくる議案はすんなり通る。本来しっかり審議しなければならないような議案でも、当該「圧倒的多数会派」の所属議員は、委員会で突っ込んだ質疑は行わず、本会議では討論なしで「可決」となる。
しかし稀に、自分たちの意に沿わない提案や決定を市役所側が議会にあげてきたときは、圧倒的多数会派は突然、彼らがもつ「拒否権」を使って牙をむくことがある。佐倉市議会で過半数をもつ会派連合「さくら会、公明党、自由民主さくら」がしかけた「利権維持のための議決」とするより他理解できない議決が、昨年あった「草ぶえの丘指定管理者の否決」だ。
指定管理者の選定や入札といったいわゆる「厳正な審査」をはさむ事案は、原則として行政が結果に手心を加えてはいけない。職員が不正なくしっかりやればやるほど、審査は公平なものとなり、市民とって有利な結果となる。その意味で、市長や議会が想定してなかった結果になることも大いに有りうる。故に、結果が議会多数派の意に沿わないものになる可能性も高いのだが、その場合彼らは躊躇なく「否決」する。その判断の中に、市民の利益は存在しない。
本件に関する詳細は私のブログに書いたが、「後の佐倉市民がみてもわかる恥ずべき否決」であることを理解いただけるように、文章が長い。そこで、本論考用に思い切り要約すると
- 直近過去二回佐倉市が実施した「草ぶえの丘」と呼ばれる施設の指定管理者の選定にかかる入札において
- 事業者「甲」と事業者「乙」が競合関係にあったとき
- 厳正な審査にて、事業者「甲」が選定されるたび
- 佐倉市議会の「さくら会」をはじめとする議会多数派はその結果を不可思議な理由で「否決」した
- ちなみに、事業者「乙」が選ばれた過去2回の選考では、彼らは両方とも「可決」している
となる。
前編:草ぶえの丘等指定管理者の「否決」からひも解く「佐倉市議会という病」
この施設の指定管理者の入札と佐倉市議会による否決は、2016年と2020年に実際にあったものだ。私が議員として審議に参加したのは2020年だが、過半数をもつ会派連合「さくら会、公明党、自由民主さくら」の各会派議員が述べた否決理由は、控えめにいって「不自然で奇妙な理屈」ばかりだった。先に紹介した私のブログでそのあたりを説明しているので、興味があったら読んでいただきたい。
さて、このような審議について、もしインターネットで動画公開されていたらどうだろう?
動画ならば、審議の模様がリアルタイムで放映される他、YouTubeを使えば当該動画は自動的にオンデマンド配信用に保存される。この場合の利点は
- 動画は、リアルタイムに、あるいは自分が観たいタイミングで即日から閲覧可能
- テキストの議事録のように、公開までのタイムラグがない
- 動画の場合、閲覧者が直観的に「誰がどのような発言をしたか」がわかる
- 結果、議会審議に興味をもつ市民が増える
などだ。
また、例えば審議に不信感を持つ議員がいたら、動画のURLを引いて、「●●委員会審議である本動画32分以降の、●●議員の発言を聞いていただきたい。」などと引用し、議会後素早く論考を発表し、市民に問題提起が可能となる。
「行政を捻じ曲げる」事案は、利権維持の他、議会が市長と対立関係にある場合にも、市長に対して自分たちの力を誇示するためのマウント行為でも発生しうる。そして、議会で過半数をもっている限り、議会では「必ず成功」する。しかしそのような振る舞いの弱点は、「公開されたら市民に自分たちの悪行がばれる」という点だ。
以上のような理由から、いわゆる「利権維持のために捻じ曲げた審議」をする議員たちは、絶対に動画公開したくない。故に動画公開に断固反対することになる。
次回は、動画公開に反対する議員の本音の最後である「市役所からの要請」について考える。
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