恥ずかしい佐倉市議会③:議会を動画公開したくない市役所の心理

高橋 富人

地方議会当事者のほとんどは動画公開を望まない

論考2では、議員28名で構成されている佐倉市議会において、委員会等の動画公開に反対している「さくら会、公明党、自由民主さくら」の合計18名が言い続けている「動画公開は費用対効果が低い」とする言説がいかに筋違いなものであるかを説明した。

本稿では、彼らが、さらに敷衍すれば「全国の動画公開を渋るすべての議員」が、なぜ頑なに動画公開を阻止しようとするのかを理解するために、まずは「公開してほしくない」本丸である市役所側の本音を明らかにする。

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市役所が「委員会等の動画」を公開したくない理由

市役所が動画公開したくないと考えるのは、ある意味「当たり前」だ。もし私が市役所の職員であれば、正直なところ動画公開はしたくないと考えるだろう。

議会というのは、主に市の予算の使い道や優先順位の付け方、予算を伴う政策の妥当性を審議する場所だ。その意味で、議会審議で深掘りされる内容は、「この税金の使い方はどうなの?」や、「この政策って意味あるの?」という疑問符がつくポイントついて、となる。

議会の常任委員会とは、そういう点について専門的に議論を深める唯一の会議体であり、言ってみれば「詰める」側の議員と、「説明する」側の市役所職員との真剣勝負の場である。議員になって以降、常任委員会審議をほぼすべて傍聴してきた身からすると、「これは市役所側の説明がまったく足りてないな」という議案は確かにあった。

その意味で市役所が、彼らからすれば一方的に「自分たちの政策の粗さがしをされている」議会の常任委員会を、「ぜひ公開してほしい」と考える道理はないのだ。

さらに、委員会の中には、先の論考で説明した「百条委員会」も含まれる。百条委員会とは、自治体の事務全般について疑惑や不祥事があった際、事実関係を調査するために、当該自治体の議会が立ち上げることができる会議体だ。その中には、もちろん市職員の贈収賄や公金不正についても議題になることがあるため、そんな「身内の恥」をさらしたいと思うわけがない。

そんなわけで、市役所側は「議会における委員会等の会議体は公開してほしくない」と考えているとみてよい。なお以上の話は、当然だが「市役所の長」である市長にもあてはまる。市長は通常委員会審議には参加しないが、市役所が議会に審議をかける議案のすべては「市長提出議案」と呼ばれるとおり、市長の名において提出された議案だ。以上のような理由で、市長と市役所は、本音のところでは「議会の動画公開はしないでほしい」と考えているといえる。

地方議会議員はなぜ動画公開を阻むのか?

以上を読んだ読者の中には、「では、なぜ多くの議員は動画公開をしたがらないの?」という疑問を持つはずだ。

確かに、「議案の疑問点を市役所に質問、確認」する立場にある議員は、常任委員会審議が公開されたとしても、「普通に審議している分においては」自分のマイナスになることはない。むしろ、自分の政策や税金用途の優先順位を市民に知ってもらえる機会が増えるし、常任委員会での討論を聞いてもらえれば「自分がなぜこの議案に賛成(反対)したのか」を詳しく伝えられるので、ぜひ公開したいというモチベーションすら生じるはずだ。私も、議員になる前は、公開を決定することができる「議会の主催者」たる議員たちが、なぜ公開を渋るのかあまり理解できなかった。

そこで、次回原稿では「多くの議員が委員会等の会議体を動画公開したくない理由」を考える。

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