「費用対効果が低い」という恥ずかしい言い訳
市議会の委員会審議等を動画公開しない理由として、動画公開に反対する佐倉市議会議員がよく口にする言葉に「費用対効果が低い」というものがある。
もう言い飽きてしまったが、現在多くの都道府県、及び市区町村で実施しているYouTubeアカウントでの動画公開ならば、ランニングコストは無料だ。ネット環境の整備が必要だ、ということであれば年間10万~20円程度かかるかもしれないが、今時の議会で既存のネット環境がないことは考えられないし、動画配信に耐えられないような貧弱な環境なのだとしたら、そもそもリプレイスするべきだろう。
イニシャルとしても、現在の動画撮影用のカメラとPCの価格帯を考えるならば、複数台購入しても100万はかからない。その点は、すでに2年以上前の論考で明らかにしている。
ちなみに、昨年11月から動画配信を開始した小田原市議会は、カメラと配信用PCをそれぞれ3台購入し、3つの委員会室にカメラを設置した工事費用をあわせ、約73万円とのことだった。
さらにいえば、この場合「費用対効果」という言葉を選ぶこと自体が誤りである。
忙しい市民は、議会のすべての委員会審議など観ない。それは「当たり前の話」だ。市民の立場によって「確認しておきたい審議」はまちまちだ。例えば、子を持つ親にとっては小中学校の統廃合にかかる審議は重要課題だし、商工業者にとっては税制優遇策や各種活性化施策の審議は確認しておきたいはずだ。
また、例えば「兵庫県議号泣事件」や「市役所内家庭用サウナ持ち込み・泊り込み市長問題」、「豊洲市場移転問題」など、政治家や執行部の不正、贈収賄、問題行動などを質す「百条委員会」も、地方議会の委員会審議だ。しかし、ほとんどの自治体で動画公開されていないため、市民県民は詳細な審議を観ることができない。動画公開されていれば、一次データというこの上なく「重要なコンテンツ」であるため、閲覧数は相当なものになるはずだ。
以上のように、議会の委員会等の審議は、テレビ番組のように「常に高い視聴率を維持する必要があるコンテンツ」ではない。その意味で、ある一定期間の動画閲覧数の多寡を前提に、「費用対効果」という価値観ではかるべきものではないことがわかる。
動画公開をする理由は、市民県民が「観たい審議」を「観たいタイミング」で閲覧可能にすることで、市民個人にとって必要な情報を提供すると同時に、「市民の代表たる政治家」の仕事を確認するために必要だからだ。さらに言えば、その一連のサイクルが、我が国の民主主義を強固なものにするために大切だから、なのである。仮に視聴数をあげるべきと考えるならば、そのように努力するのが議員本来の役割であるはずだ。
にもかかわらず、なんとその民主主義の信奉者であるはずの議員が、何の努力も検討せず、動画公開の評価を「費用対効果」という言葉で矮小化し、公開に反対している。あきれ果ててモノが言えないとはこのことだ。
動画公開は議会と執行部がタッグを組んででも阻止したい
以上からわかるように、佐倉市議会をはじめとする地方議会の大多数の議員は、「どんな屁理屈をつけてでも」委員会の動画公開を阻止したいと考えているし、またそれらの議会議員の思惑は、現状ほとんどの地方議会で成功している。なぜだろうか。
最大の要因は、「市長、市役所、議員」が、それぞれの思惑で「委員会等の動画公開に反対」であるからだ。
また、この状況について、市民がほとんど無関心であることが、動画公開を推進したい議員の心を折っている、ということも大きな原因であると言えるだろう。
次の論考では、「市長、市役所、議員」が議会の委員会等の会議体の動画公開に反対する要因を概観する。
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