IPCC報告の論点㊳:ハリケーンと台風は逆・激甚化

杉山 大志

IPCCの報告が昨年8月に出た。これは第1部会報告と呼ばれるもので、地球温暖化の科学的知見についてまとめたものだ。何度かに分けて、気になった論点をまとめてゆこう。

pfb1/iStock

以前、ハリケーン等(ハリケーン、台風、サイクロンの合計)が温暖化で激甚化している、とするIPCC報告の誤りを指摘した。

今回は、この分野の第一人者であるピールキーによる最新のデータを紹介しよう。

図は、台風(太平洋)とハリケーン(大西洋)の上陸数の合計を示したものだ。

黒い線が全ての上陸数で、赤い線は強いハリケーン等の上陸数

強いハリケーン等とは、上陸時の風速49メートル以上(米国でカテゴリー3から5に分類されるもの)。これに、風速33メートル以上(米国でカテゴリー1から2に分類されるもの)を足したのが全ての上陸数である。

図から一目瞭然、1945年以来、もっともハリケーン等の上陸が頻繁だったのは、1950年代と60年代だ。このころは、日本にも第2室戸台風(1961年)や伊勢湾台風(1959年)などの恐ろしい台風がやってきていた。

人類がCO2を多く出すようになったのは1945年以降だが、ハリケーンや台風の激甚化など起きていない。

1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。

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「脱炭素」は嘘だらけ