アゴラ 言論プラットフォーム https://agora-web.jp 経済、ビジネス、情報通信、メディアなどをテーマに、専門家が実名で発言することで政策担当者、ジャーナリスト、一般市民との交流をはかる言論プラットフォーム ja Tue, 26 Sep 2023 08:05:41 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925234556.html 関東移封で家康は大喜び:家臣たちの序列を壊すのに成功 https://agora-web.jp/archives/230925234556.html 「どうする家康」の、次回は小田原の役と徳川の関東移封がテーマになるだろうと思うので、DIAMOND Onlineに、「北条氏における失敗の本質」「関東移封を家康が大喜びしたわけ」「なぜ家康は江戸を居城にしたか」をテーマにした『【どうする家康】秀吉に「関東左遷」された家康が大喜びした理由とは?』という記事を書いた。

【どうする家康】秀吉に「関東左遷」された家康が大喜びした理由とは?
1590年の小田原征伐と、それに引き続いた東北地方の仕置きで、素直に秀吉に従わなかった大名たちは淘汰され天下統一ができた。徳川家康に、関東への移封が伝えられたのは、小田原城が開城する前のことであったが、家康にとっては青天の霹靂だったはずはない。

ここでは、その要旨を紹介するとともに、さらに深掘りしてみよう。そのためには、まず、室町時代の関東がどうなっていたかを知らねばならない。

足利尊氏は、足利一族の鎌倉(関東)公方に関東を統治させたが、上杉氏(足利尊氏の母の実家)を関東管領とし目付役とした。

しかし、この両者の対立が続き、応仁の乱の前から戦国状態だった。幕府は関東公方家を見限って、将軍義政の弟の足利政知を新しい関東公方を送り込んだ。だが、新旧の公方ともに鎌倉には定住できず、伊豆の堀越公方と下総の古河公方が並立した。また、政知の子で天竜寺に入っていた義澄が将軍になってしまった。

ところが、伊豆では堀越公方の家で内紛が起きて、庶子の茶々丸が弟を殺し、この混乱に乗じて将軍の意向を受けて伊豆の茶々丸を滅ぼし、さらに、相模に勢力を伸ばしたのが、足利将軍側近で今川家の食客だった北条早雲(伊勢新九郎。二代目の氏綱が北条に改姓)だった。

上杉家を関東から追い出し、古河公方(鎌倉公方が移転)を名目上の主君にして南関東の支配者になったのは三代目の氏康のときだ。

北条氏康像(小田原城天守閣所蔵模本品、原本は早雲寺所蔵)

家康は秀吉から依頼されて、北条氏に上洛を要求し、しないなら、娘を離別して返してくれと言った。そこで、氏政は弟の氏規を上洛させ時間稼ぎをした。大河ドラマでは、これで一件落着のはずが、秀吉が欲を出したと描いていた。しかし、氏政・氏直も上洛しないのではすむはずがない。

NHKでは韓国や中国を攻めた秀吉を悪く描かないと許さないという事実上の内規が存在するのである。

家康にとってこの転封は覚悟していたという以上に、願ったり叶ったりだった。家康は三河の田舎大名でなく、源氏の棟梁になりたい。そのためには、三河を離れたかったのだ。

兼業農家である三河武士を、根拠地から切り離せることは好都合だった。

家臣の方たちは、武士か農民かはっきりしないような親戚も多いから大反対だったので、家康も苦い顔をして「陸奥の国に移ろうとも百万石の領地があればいかようにでも生きていける」とか隠忍自重を装ったが内心は嬉しくて仕方がなかった。

引越ししたほうが組織改革をやりやすかった。家臣間の序列も好きなように変える機会でもあった。

関東では、井伊直政が上野箕輪(後に高崎)12万石に抜擢されて筆頭となり、本多忠勝が上総大多喜10万石、榊原康政が上野館林10万石となった。

家康のこどもたちとか松平一門を別にすると、小田原に大久保忠隣が6.5万石で、鳥居元忠は下総矢作、平岩が上野厩橋、奥平が上野小幡で3~4万石でしかない。酒井は忠次が隠居していたので嫡男で家康の従兄弟である家氏が下総臼井3.7万石で留まった。

信康事件のために家康から意趣返しを受けたという説もあるが、世代交代期で家次の素質がもう一つだったので軽視されたのだろう。ただし、家次は晩年になって高田10万石をもらい、さらに子孫は庄内藩主となって家格は回復した。

令和太閤記 寧々の戦国日記

徳川家康像(狩野探幽画、大阪城天守閣蔵)

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Tue, 26 Sep 2023 03:00:51 +0000 Tue, 26 Sep 2023 03:00:51 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925002415.html https://agora-web.jp/archives/230924094656.html https://agora-web.jp/archives/230923154836.html https://agora-web.jp/archives/230909210627.html https://agora-web.jp/archives/230907002053.html
https://agora-web.jp/archives/230925074430.html 政治化した自動車産業の行く末①:労組ストライキ https://agora-web.jp/archives/230925074430.html アメリカの自動車産業のストライキが深刻化しています。ビック3の組合が労働条件の改定を求めて行っているストライキにまさかのバイデン大統領の援護、応援が入るとされています。バイデン大統領はアメリカの自動車産業のEV化を推し進めるべくインフレ抑制法に於いて特定条件を満たしたEV車の購入には補助金がつき、販売が加速しているところです。

Elena Perova/iStock

今回大手3社がストライキに入ったのは必ずしも労働条件改定だけではなく、産業の急激な変化に対する自動車産業従事者の切実なる声を反映したものだと考えています。とすればバイデン氏はEV自動車の普及を目指す補助金を出す一方で、内燃機関の自動車を作る労働者の雇用を守る方にも応援するという実に頓珍漢な動きを示すことになります。

バイデン氏がそうせざるを得ないのはなぜでしょうか?やはり私には1年1か月後に迫りつつある大統領選に向け、全米自動車労組(UAW)を支持し、大統領選に於いて自身、そして民主党の支援をもらいたいという選挙対策が透けてみます。もちろん、民主党の立場からすれば労働組合を支持するのは当然の政策ではありますが、今回の労働組合の要求は4年間で30-40%の賃上げなどあまりにも大きく、会社が面倒を見る従業員の間接コストもより高くなることで国際競争力という点では完全に力を削ぐことになります。

ご記憶にあるかと思いますが、いわゆるアメ車は性能が悪く、故障も多いというイメージが長年ありました。いや、イメージだけではなく事実だと思っています。私もカナダでアメ車を何台も乗り継いできた中で新車の見た目の良さと数年使った後のへたり具合があまりのギャップで下取り価格も低く、クルマとしての価値は悩ましいものでした。では、なぜ、それでもアメ車を買い続けたかといえばラグジュアリーな内装に対して欧州や日本のクルマに比べて若干安かったのです。あと、排気量が大きく、ボディーもフルサイズになれば長さは5メートル越え、アメ車独特のサスペンションの柔らかさでハイウェイ走行時はまるで自宅のソファに座っているような心地よさが長距離ドライブにはうってつけだったのです。

さすが、このところは品質改善も進んだのだろうと察します。しかし、労働組合の言いなりになれば輸出などの競争力は維持できず、十分な利益が取れず、それが最終的には研究開発費の削減につながりかねません。

ご存じの通りアメリカは確かに物価が高いのでそのアメリカの労働者はインフレに見合う労賃の引き上げ要求は当然起きます。が、アメ車を含めアメリカ国内で製造される商品の労働コストが上昇すれば当然ながら見合いの販売額引き上げとなります。問題は他国ではアメリカほどの物価水準ではないのです。私が高いと悲鳴を上げるカナダの物価でもアメリカに比べれば何割も安いのです。

経済学的には自動車産業のように多くのライバル会社が世界に散らばっており、販売も世界展開するのであれば経営者は価格競争力を維持するための最大限の努力をします。ですが、仮に大統領が労働組合の味方をし、破格の労働条件を経営側に飲まさせることになればそれはアメリカの自動車産業の崩壊を意味することなのです。

多くの自動車会社では既に一定時期に内燃機関の自動車製造を止める、ないし相当縮小し、EV化することを打ち出しています。今回の労組の要求は企業側にEV化を更に推し進めさせることになり、下手をするとアメリカで予想よりも早くEV化が進んでしまう気がします。果たしてそれがバイデン大統領の真の戦略なのかそれは私には分かりませんが、たぶん、そんな深い考えよりも目先の票ではないかと思います。

そういう意味では今回は自動車労連が政争の具と化したとも言える気も致します。

明日は政治とEVについて考えてみたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月26日の記事より転載させていただきました。

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Tue, 26 Sep 2023 03:00:28 +0000 Tue, 26 Sep 2023 03:00:28 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230923074547.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html
https://agora-web.jp/archives/230925074456.html 核兵器は「イスラムの教え」に反する https://agora-web.jp/archives/230925074456.html 国際原子力機関(IAEA)の第67回年次総会は25日、5日間の日程で本部のウィーンで開幕した。同総会(加盟国177カ国)では、ウクライナ南東部にある欧州最大規模のザポリージャ原子力発電所の安全問題、日本の福島第一原発の処理水の放出問題などのトピックのほか、イランの核計画問題、北朝鮮の核問題などが協議される。

第67回IAEA年次総会でオープニングスピーチをするグロッシ事務局長(2023年9月25日、IAEA公式サイトから)

「イランは核兵器を製造しない」と答えるライシ大統領(IRNA通信9月25日から)

ここではイランの核問題についてまとめておく。

IAEAの9月理事会(35カ国理事国)に提出されたイラン核問題に関する最新報告書では、「監視カメラの再設置など未解決問題の解決は進展していない」と指摘された。IAEAのグロッシ事務局長は2月28日、イランの核関連施設で濃縮ウラン83.7%が発見されたことを確認している。兵器用濃縮ウラン90%までもはや手の届くところまできている。濃縮ウラン83.7%の痕跡は、今年1月、イラン中部フォルドーの地下ウラン濃縮施設の検査中に発見された。イラン当局はIAEAに対し、「非常に高いレベルの濃縮は意図しない変動で生じたもの」と弁明してきた(「イラン『濃縮ウラン83・7%』の波紋」2023年3月2日参考)。

ちなみに、9月のIAEA報告書によると、イランは8月19日時点で60%に濃縮した六フッ化ウランを推定121・6キロ貯蔵している。5月の報告書から7.5キロ増えた。

また、イラン当局はここにきて同国の核施設の査察を目的としたIAEAからの追加査察官の認定を取り消している。グロッシ事務局長は今月16日、「イランのウラン濃縮活動を監視するIAEAの監視能力が大幅に制限される」と発表し、「イランの決定は、間違った方向への新たな一歩だ」と述べ、懸念を表明した。

イラン側は、「ドイツ、フランス、英国が今月14日、核開発計画を巡るイランに対する既存の制裁を解除しないと決定したことを受けた対応だ」と主張。イラン外務省のナセル・カナニ報道官は声明で、「西側諸国がイスラム共和国とIAEAの協力を妨害しようとしている」と非難し、「査察官の認定取り消しは合法である」と強調した。

IAEA年次総会に先駆け、イランのライシ大統領は米CNNとのインタビューに応じている。同大統領は「イラン人は自国のウラン濃縮を純度60%レベルまで上げた、これは2015年の核合意を欧州諸国が遵守していないことへの対応だ」と述べる一方、兵器級レベル近くまでのウラン濃縮をきっぱり否定し、「われわれが取ろうとしている行動は、いかなる種類の核兵器やいかなる種類の軍事的側面に及ぶことを意図したものではないと公式に発表されている」と説明した。

イラン最高指導者ハメネイ師は過去、「大量破壊兵器の核兵器はイランの教えとは一致しない」と強調し、イランが核兵器を保有する考えがないことを繰り返し主張してきた。

イランは2015年7月、国連安保理常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国と核合意を締結し、イランの核開発計画があくまでも核エネルギーの平和利用と主張してきた。イランの核合意の代わりに、制裁を解除することになっていた。しかし、トランプ米前政権は2018年5月、イランが核合意の背後で核開発を続行しているとして核合意から離脱。それ以来、イランは順次に核合意で締結した合意内容を破棄してきた。

そして、21年1月1日、同国中部のフォルドウのウラン濃縮関連活動で濃縮度を20%に上げると通達。2月6日、中部イスファハンの核施設で金属ウランの製造を開始している。4月に入り、同国中部ナタンツの濃縮関連施設でウラン濃縮度が60%を超えていたことがIAEA報告書で明らかになっている。なお、イラン議会は20年12月2日、核開発を加速することを政府に義務づけた新法を可決した。そして今回、ウラン濃縮83.7%の製造だ。イランの核開発計画は核拡散防止条約(NPT)など国際条約の違反であり、国連安全保障理事会決議2231と包括的共同行動計画(JCPOA)への明らかな違反だ。

一方、イランの核武装化を恐れるイスラエルは、「テヘランが核兵器を保有することは絶対に容認されない」と指摘、必要ならばイランの核関連施設を空爆すると警告してきた。イスラエルは2007年9月、シリア北東部の核関連施設(ダイール・アルゾル施設)を爆破したことがある。

スンニ派の盟主サウジアラビアもイラン(シーア派)の核兵器開発をただ静観していることはないはずだ。サウジの実質的統治者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は20日、米FOXニュースとのインタビューの中で、「イランの核武装は悪い一歩。もしテヘランが核爆弾を手に入れたら、サウジも同じことをしなければならなくなり、地域全体での核軍拡競争をもたらすだろう」と警告を発している。

ところで、同総会では中国や韓国の代表が基調演説の中で、福島第一原発の処理水の海洋放出開始について言及するものと予想される。IAEAは独自の調査結果をまとめ、「福島第一原発の処理水放出では国際規約に一致し、問題はない」と公表済みだ。日本からは高市早苗経済安全保障担当相が出席し、処理水の放出に加盟国の理解を求める。

なお、グロッシ事務局長の再任が今回の総会で承認される。任期は今年12月から4年間だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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Tue, 26 Sep 2023 02:55:52 +0000 Tue, 26 Sep 2023 02:55:52 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html
https://agora-web.jp/archives/230926005030.html ニトリ就職人気1位は会長の執念か?それとも大学生の無知か? https://agora-web.jp/archives/230926005030.html ニトリホールディングスが、日本経済新聞社とマイナビの共同による調査で、大学生の就職人気ランキング(文系総合)の首位になりましたが、似鳥昭雄会長の採用への意気込みや取り組みが話題になっています。

ニトリHPより

インターンシップの活用がうまくいっているようです。ニトリが内定者を対象にホテルで開催した食事会で人気メニューの皿が空になってしまったとき担当者はひどく叱られたそうです。

学生のキャリア形成への意識は並々ならぬものがあります。ニトリのインターンシップでは店舗運営、商品開発、店舗開発といった多岐にわたるキャリアを疑似体験させて「やってる感」がとてもよく出ているそうです。

でもやっぱりキレイごとではないようです。なくなるような会社には新卒で勤めたくないですよね。

しかし、年配者からは疑問の声も上がっています。

就職人気上位なのは、知っている会社だからに過ぎないという指摘は昔からありますが・・・。

縮んでいく行く日本で小売業に希望が見えてくるのはいいことですね。

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Tue, 26 Sep 2023 02:50:24 +0000 Tue, 26 Sep 2023 02:50:24 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925143958.html https://agora-web.jp/archives/230924233301.html https://agora-web.jp/archives/230924001007.html https://agora-web.jp/archives/230922202804.html https://agora-web.jp/archives/230922211424.html
https://agora-web.jp/archives/230925002415.html 大河ドラマ『どうする家康』解説⑥:家康はいつ秀吉に臣従したか https://agora-web.jp/archives/230925002415.html 先日の『どうする家康』第35回の放送で、徳川家康が豊臣秀吉に臣従した。

さて『どうする家康』でも描かれていたように、一般に家康はなかなか秀吉に臣従しなかったと考えられている。秀吉が妹の旭姫を家康の正室という名目で人質に送り、さらに母の大政所を旭姫の様子伺いという名目で人質に送り込んだため、家康はようやく重い腰を上げて、大坂城に赴き、秀吉に臣下の礼をとった、というものである。

しかしながら、誇り高い家康が容易に膝を屈しなかったというイメージは、神君家康を顕彰する江戸時代の史料によって作り出された側面が大きい。

第35回「欲望の怪物」より
NHK「家康ギャラリー」

天正13年(1589)11月13日、徳川家で秀吉との交渉を担当していた取次(外交窓口)の石川数正が出奔し、秀吉の麾下に入った(『当代記』など)。数正は秀吉との融和を主張し、決戦派が多数を占める徳川家中で孤立したため、秀吉のもとに亡命したのである。

対秀吉の取次である石川数正の失脚は、徳川家が秀吉との決戦という意思統一を行ったことを意味する。そこで秀吉は翌年正月に家康を討伐することを決定し、諸将に出陣の準備を命じた(「一柳家文書」)。

ところが11月29日夜半、畿内を中心に大地震が起きた。いわゆる「天正地震」である。秀吉の領国は大きな被害を受け、戦争を起こすことは困難になった。秀吉は家康との決戦回避を模索し始める。

ここで、織田信雄が一肌脱ぐ。信雄はもともと秀吉の主君であったが、この時期には既に秀吉に臣従していた。徳川家康は織田家に従属していたので、信雄は家康にとっても主筋にあたる。

天正14年正月下旬、信雄は自ら三河岡崎城まで出向いて家康と会談し、秀吉と家康の和睦を斡旋したのである(『当代記』『顕如上人貝塚御座所日記』など)。信雄の岡崎訪問は秀吉の依頼を受けたものと見られる。信雄自身が説得に赴いたら家康も断りにくい、と秀吉は思ったのだろう。かくして秀吉と家康の戦争は回避されることになった。

ただ、和睦と言っても、秀吉は関白に就任した「天下人」であるから、対等な立場での停戦や同盟ということはあり得ない。この時点で家康は秀吉への臣従を承諾したものと考えられる。

2月8日一柳直末宛て豊臣秀吉朱印状(「一柳家文書」)によれば、家康が「何事も関白の意向に従う」と申してきたため、秀吉は家康討伐を中止し、赦免することにしたという。また2月晦日、秀吉は真田昌幸に対して、家康を赦免することを伝えた上で、家康との停戦を命じている(「真田家文書」)。家康の臣従の意向を確認した上で、秀吉は家康との対立関係を解消したのである。

このように、家康が秀吉への臣従に同意したことを前提に、秀吉妹の旭姫が家康に輿入れすることになった。この縁談は4月初旬から具体的な計画が進められ、トラブル発生による延期もありつつ、5月14日に旭姫が家康の居城である浜松城に到着し、無事に実現したのである(『家忠日記』)。

ただし、家康の臣従は、家康が秀吉のもとに出仕することで確定される。かつての研究では、家康が旭姫との結婚後もなかなか上洛しなかったことから、家康が秀吉への臣従に依然として抵抗していたと見られてきたが、家康が上洛しなかったのは、真田問題が解決していなかったからである。

上洛前から家康は、徳川家から離反した真田昌幸を徳川の与力につけてほしいと秀吉に要請している。この要請は、家康が秀吉を徳川・真田の上位に立つ調停者=「天下人」として見ていたことを示すもので、既に家康の臣従は既定路線であった。

8月9日水野忠重宛て豊臣秀吉朱印状(「徳川美術館所蔵文書」)によれば、秀吉は、家康が既に真田討伐のために出兵しているのであれば、家康自身が出陣して真田昌幸の首を刎ねるべきであり、上洛が遅れることはやむを得ない、と考えていた。秀吉は家康の早急な上洛を必ずしも求めていなかった。既に臣従は実質的には成立しており、大坂城への出仕は家康の臣従を諸大名に見せつけるための形式的なものにすぎず、ことさら急ぐ必要はなかったのである。

もっとも、家康が真田を徳川に帰属させるため、交渉カード(取引材料)として上洛を引き延ばしていた可能性はある。しかし、それは秀吉からより多くの果実を引き出すための条件交渉にすぎず、臣従を前提にしたものだった。

結局、家康は10月末に上洛するが、この時期になったのは、正親町天皇から後陽成天皇への譲位式(11月7日)に参加するためと考えられる。家康上洛中の安全の保障として、大政所が人質として三河に下向したことは周知の通りである。

江戸時代に作られた「家康神話」をいかに相対化していくか。これが徳川家康研究の最も重要な点である。

【関連記事】
大河ドラマ『どうする家康』解説①:桶狭間合戦の実像
大河ドラマ『どうする家康』解説②:武田信玄は上洛を目指していたか
大河ドラマ『どうする家康』解説③:鉄砲3段撃ちはあったか(前篇)
大河ドラマ『どうする家康』解説④:鉄砲3段撃ちはあったか(後篇)
大河ドラマ『どうする家康』解説⑤:小牧・長久手合戦の実像

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Mon, 25 Sep 2023 22:00:15 +0000 Mon, 25 Sep 2023 22:00:15 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925234556.html https://agora-web.jp/archives/230924094656.html https://agora-web.jp/archives/230923154836.html https://agora-web.jp/archives/230909210627.html https://agora-web.jp/archives/230907002053.html
https://agora-web.jp/archives/230925000912.html 割高な太陽光や洋上風力を無理やり推進する必要はない https://agora-web.jp/archives/230925000912.html

nitinan chumdavong/iStock

洋上風力発電事業を巡る汚職事件で、受託収賄容疑で衆院議員、秋本真利容疑者が逮捕された。捜査がどこまで及ぶのか、今後の展開が気になるところである。各電源の発電コストについて、いま一度確認しておきたい。

2021年8月経済産業省は、石炭、液化天然ガス、原子力、風力、太陽光など電源の2030年における発電コストの精査結果を公表した。この発電コストは、LCOE(Levelized cost of electricity、均等化発電原価)と呼ばれ、発電所を新設した場合の建設や運営にかかるモデル費用である。

メディアが注目したのは、再生エネルギー由来の発電コストが、火力発電などより低コストになったということだった。例えば、太陽光発電の2030年時点のコストは1kWh当たり8.2~11.8円などと安くなっていた。火力(LNG、石炭)は、燃料費やCO2対策費を考慮して上昇傾向であり、洋上風力は2030年時点でなお26.1円であり、他の電源に比べると高くなっていた。

2030年の電源別発電コスト試算結果

この結果、特に太陽光発電については、設備費が他の電源と同程度に安くなったなどという理由を付け、住宅に太陽光パネルを設置するということが進んだ。また、メガソーラーについては、風光明媚な自然を破壊してまで設置される地域も出ており、大雨や台風などの自然災害によって、パネルが崩落、飛散したりする人災を招いている。

表中のコスト試算については、3つの問題点が指摘されていた。

  1. 再エネ発電出力の不確実性、低稼働率対策として、既存火力などを稼働させるのだが、運用変更や発電効率の低下に伴うコストが発生する(プロファイルコスト)
  2. 再エネ発電所を増やせば、風況や日照の変動に伴い発電出力が変動する点で、火力発電とは異なる。同じ時間で同量出力を維持するためには石炭火力などの調整電源が必要となる。そのコストや系統安定化費用も織り込まれていない(バランシングコスト)
  3. 送電網への接続費などが含まれていない(系統・接続コスト)

さて、米国などでも、環境保護主義者、バイデン政権、および一部の州が、低コストで気候変動への対処に役立つとして、風力や太陽光などの再エネへの抜本的なエネルギー転換を推進している。しかし、最近の研究では、すべてのコストを考慮すれば風力や太陽光発電は発電コストが高く、そのような転換は経済的、環境的にも成立しないことが判明している。

OECDが、電力システムの総コストを試算した結果が下図である。横軸には各電源とその普及率が示され、縦軸は発電コスト(US$/MWh)である。今回の洋上風力発電をみれば、10%の普及率で発電コストが28 US$/MWh、30%で40 US$/MWhである。再エネ発電は、普及が広まれ広まるほど、1、2と系統コストが増え、その結果、10%から30%の普及で総コストが1.5倍以上は増加すると算出された。

出典:OECD、The Full Cost of Electricity Provision 2018

次に、下図は、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)がEnhanced Levelized Costを用いて算出した電源ごとのLCOEを算出した図である。横軸に、ガス火力、CCS付ガス火力、陸上風力、事業用太陽光、洋上風力、縦軸には発電コスト(£/MWh)が示されている。グレー色の棒グラフが従来のLCOE(単純LCOE)、青い四角は、全体コストを表している。

出典:BEIS、Electricity Generation Costs 2022

洋上風力についてみれば、単純LCOEは、2025年から2035年の間で54から40£/MWhに減少しているが、総コストでみると各年で幅があるものの、2025年が67~85£/MWh、2035年は60~80£/MWhなどとなっている。

こうした推算は前提条件に左右されることが多く、海外の事例でもあるため、参考程度に見てみると、2035年の全体コストは、単純LCOEの1.5~2倍程度になることがわかる。大規模太陽光についても、同じような結果が得られている。この結果を2021年8月の経済産業省資料に適用すると、再エネ由来の発電は、火力発電よりかなり高コストになるということが推定される。

これから、素晴らしい自然環境を破壊して、山中や草原・大地、そして海洋に、太陽光パネルや風力発電設備を「無理やり設置するという行為」は、高コストであるだけでなく、安全配慮義務を無視した不法行為に当たると思われる。事業者、行政、地元利害関係者が絡んだ一連の活動は、「今だけ、金だけ、自分だけ」の愚の骨頂ではなかろうか。

 

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Mon, 25 Sep 2023 21:50:05 +0000 Mon, 25 Sep 2023 21:50:05 +0000 https://agora-web.jp/archives/230919102201.html https://agora-web.jp/archives/230918083732.html https://agora-web.jp/archives/230911005113.html https://agora-web.jp/archives/230906001149.html https://agora-web.jp/archives/2041521.html
https://agora-web.jp/archives/230925143958.html ウクライナがクリミア半島へミサイル攻撃:ロシア黒海艦隊に大ダメージ https://agora-web.jp/archives/230925143958.html ウクライナ軍が23日にクリミア半島南部に位置するロシア黒海艦隊司令部を攻撃しました。この攻撃により、ロシアは甚大な被害を被っています。

ウクライナの攻撃により、ロシア黒海艦隊司令官を含む130人以上が死傷し、同艦隊の建物は復旧不可能な状態になっているそうです。

2014年にロシアに不法占拠されたクリミア半島でしたが、9年後に戦場になっているなど誰が想像したでしょうか?

これまでのウクライナはロシアが実効支配する領土への攻撃していたことを認めていませんでした。しかし、今では堂々と攻撃の事実を認めています。

局所的には善戦しているように見えるウクライナですが、昨年のハルキウ奪還のような軍事的成果を実現することができていません。

膠着状態が続くウクライナ戦争に欧州は痺れを切らしています。欧州の中で最も親ウクライナのひとつだったポーランドが軍事支援停止に言及したことがそのことを象徴的に表しています。

ウクライナの最大の支援国であるアメリカも頼りになりません。自国の予算さえも成立させることが出来ない国がどうして外国の戦争を支援できるのでしょうか?

ロシア黒海艦隊への攻撃成功で盛り上がるウクライナですが、同国が前途多難であることには変わりありません。

クリミア半島 Wikipediaより

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Mon, 25 Sep 2023 21:45:55 +0000 Mon, 25 Sep 2023 21:45:55 +0000 https://agora-web.jp/archives/230926005030.html https://agora-web.jp/archives/230924233301.html https://agora-web.jp/archives/230924001007.html https://agora-web.jp/archives/230922202804.html https://agora-web.jp/archives/230922211424.html
https://agora-web.jp/archives/230925062831.html 屏東のパイナップル畑で「ホタテ有事」を考える https://agora-web.jp/archives/230925062831.html 中国は日本産水産物を禁輸したが、処理水放出を理由にしながら日本沿岸で漁を続けるなどは、政治的嫌がらせを自白したに等しい。台湾パインも2年前の2月26日、中国から唐突に3月1日から輸入禁止にされた。が、強かな台湾は、国内消費と日本輸出を増やして危機を切り抜けた。良い手本になる。

筆者は拙稿「日本産ホタテはたったの4%:中国ホタテ需要の驚くべき実態」で台湾パインの例に、「先ずは自国民が消費に努め、次に諸外国への販路を拡大」せよとし、中国が米国・韓国・台湾・カナダ・豪州及び日本に輸出しているホタテ2万4千トンを日本で加工すべき、と書いた。

それにはHACCPやFDAなどの認証や、中国の水産加工会社並みに工場までの全プロセスでの諸承認が必要なので、政府はここへの補助金や税の優遇などでホタテ加工品の価格競争力を強化し、西側諸国への売り込みを岸田総理自らがして回ることを提案した。

果たして24日の「時事通信」は、中国の禁輸からひと月、ホタテの過剰在庫や価格下落が顕在化して漁業者らの苦悩が深まり、政府の支援策にも「対策に即効性がない」「スピード感が見えてこない」などと不満を募らせている、と報じた。

青森県の漁協連合会長は「ホタテの出荷が止まって業者の在庫が満杯。みんなに食べてもらわねばどうにもならない」と述べ、政府が打ち出した米国輸出などのための加工設備導入補助にも、禁輸が撤廃されれば「ただ維持費がかかるだけになってしまう」と指摘した。

筆者は、政府の対応と時事の論調にもだが、会長の「禁輸が撤廃されれば“ただ維持費がかかるだけになってしまう”」との談にも一言ある。将来への懸念は判る、が「人間万事塞翁が馬」、この「有事」を付加価値を上げるチャンスを捉えて欲しい。後述する屏東の若い3代目のパイン生産者も、屈託なく作業に励んでいた。

日経は22日、「イオン、北海道産の生ホタテを350店で販売 産地支援」と報じた。22〜24日の北海道フェアの一環として、生ホタテの貝柱を関東などの総合スーパー350店舗で、通常の約2割引きで販売するという。いい話だ、ぜひ応援する。

が、地域や期間を限定せずに全国で一年中やって欲しいし、他の大型スーパーなども、大店法廃止の恩恵を受けて地域の小売店を潰した過去に贖罪の気持ちがあるなら、イオンに負けじと3割でも4割でも値引きして、支援を競ってもらいたい。

政府も、産地に運転資金を速やかに渡し、併せて業態変更を早めるべく、設備資金の補助や税の優遇を即刻実施せよ。マスメディアも、中国非難や現場の悩みを伝えるだけでなく、政府の施策や販売店と国民の支援行動を強く促す論調で、尻を叩いたらどうか。

関連して「共同」が15日、米大使館が台湾、タイ、ベトナムなどのFDA登録済の加工施設を日本の業者に紹介し、米国向けに輸出する仕組みの構築を目指していると報じた。

仕組みが、現物は日本(冷凍貝)→東南アジア加工場(貝柱)→米国、伝票の流れは日本→東南アジア(加工費)→日本→米国なら一考に値する。が、貝の仕向地が中国から東南アジアに変わるだけなら、事業関係者の付加価値も変わらないので、日本での加工が本筋だ。

そこで屏東のパイン畑に行った話。台湾パインの3〜4割を生産する屏東県は農業と観光が二枚看板。西を台湾海峡に面した高雄市に、東を太平洋に面した台東県に挟まれた、ちょうどサツマイモに似た台湾島の尻尾に位置する、もっともオールド台湾っぽい地域だ。

屏東は蔡英文総統の出身地でもある。蔡氏は父方から客家の、母方から同地の原住民パイワン族の血を受けている。本省人の出身地で最も多いのは福建で次が広東だが、客家の多くが広東から渡台したことから、日治時代は広東出の者を須く客家籍に分類していた。

8月に麻生太郎氏が基調講演した「ケタガラン・フォーラム」の名称も、かつて台湾北部の平地に居住し、漢人と混血が進んだ平埔族のひとつ「ケタガラン族」に因む。屏東地域の平埔族はマカタオ族という。もしかする蔡さんの血はマカタオかも。

さて、高雄市内を出て高速を南東に向かうと、左手に台湾最高峰の玉山から南に連なる山々、右手には台湾海峡まで平地が広がる。30分程で下道に降りると、椰子の木を細くした体の10mほどの背丈の木が、道の左右に林立している。檳榔(ビンロウ)だ。

石灰と混ぜて噛むと酩酊や興奮の作用があるその実は、肉体労働者やトラック運転手らの間で今も嗜好されていることが、夜の道賂でクジャクの羽のように点滅する派手なネオンサインや道端の汚れー噛むと赤茶色になる唾液を吐いた跡ーで判る。

屏東県のパイナップル畑
台北ナビより

到着したパイン畑は広かった。手前の区画には、春に収穫を終えた株が数知れず植わったままだ。これらは撤去され、適時、新たに苗を植えるとのこと。さらに奥に進むと畝を黒いネットで覆った区画があり、これから収穫するという。

台湾パインの出荷は3月に本格化する。中国の禁輸が政治的だったことはタイミングで判る。ならば、シーズンを終えた8月21日の今般のマンゴー禁輸はどうかといえば、これも「いつであろうが、検疫有害動植物が出れば禁輸する」との政治的ポーズだ。

収穫時期が6〜7月に限られるマンゴーと違い、台湾パインは一年中栽培できて、苗を植えて18〜20ヶ月で収穫出来るのだそうだ。生産者は出荷したい時期から逆算して苗を植え付ける。結果、台湾パインはほぼ一年を通して市場に出回るという次第。

人海戦術で行う収穫の人手は、訪ねた生産合作社ではベトナム人とのこと。同じ区画でも株によって実の熟れ具合が違うので、人の目で判断する必要があり、株や実の形状からも機械化は困難らしい。最盛期は大勢を雇い、夜中の2時3時から始めるという。

今年6月、1日に「産経」が屏東の、11日に「毎日」が嘉義の生産合作社を取材し、パインの現状を報告している。

生産合作社とは、収穫物をクラス分けして包装するパッキング会社と生産農家が一体で経営する一種の組合で、パイン以外も様々扱う。むろんHACCP認証も取得済みだ。この生産合作社の仕組みは、今後のホタテ漁師と加工業者にとって一つの手本になると思う。

2年前の調べでは、台湾パインの生産量は年間約40万トン。国内9割・輸出1割で輸出の大半が中国向けだった。環球時報も20年の台湾パイン輸入量を4.2万トンと報じた。が、19年に中国が生産したパインは172万トンで、台湾パインのシェアは2.4%に過ぎない。

日本の台湾パイン輸入量は、21年は約1.8万トンで前年比8倍以上、22年も1.8万トン前後を維持し、23年は3月末までに約6千トンだ。一方、中国の台湾パイン輸入は22年に424トンに激減した。思うに、これは台湾人が大陸で経営する果汁会社向けだ。

パイン畑の後、その北に位置する国立屏東科技大学に立ち寄った。ここは日治時代の1924年4月に高雄州立屏東農業補習学校として開校し、初代校長には高雄区農業改良場長を21年間務めていた鳥居武男が就任した。

戦後、国民政府により台湾省立屏東農業職業学校と改称され、81年の国立屏東農業専科学校への改称などを経て、97年8月に国立屏東科技大学となった。この経過に見るように農業県屏東のこの100年を象徴する教育機関といえる。

一方で長い海岸線を持つ屏東は、「台湾有事」に人民解放軍とって格好の上陸地。それもあってか21年9月15日の「漢光演習」(陸海空3軍の演習)で、蔡総統は屏東県佳冬郷の「戦備跑道」(通常は公道で戦時に滑走路となる道路)を訪れ、演習を視察した。

こうした厳しい現実の中にあっても、退校時とあってリュックを背負ったバイクが列をなし、食堂では大勢の学生が談笑している。パイン畑の若い経営者もそうだが、学生たちもみな表情が明るく、屈託なく見える。熱帯性気候のせいかも知れぬ。

東北の漁業関係者もあやかって気持ちを明るく持って欲しい。前述のように中国の台湾パインのシェアは2.4%で、政治の道具として買っていたに過ぎなかった。日本のホタテのそれも4%だ。それも政治的だったとは言わぬ、が、なくて困らないのも事実。

この先「禁輸が撤廃され」ても、いつまた止められるか知れない。漁業関係者にはぜひ、この苦境を、国内消費と輸出先を西側諸国に切り替えて、より付加価値の高い業態に転換するチャンスにして欲しい。政府も国民も西側諸国も、必ず「この有事」を支援する。

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Mon, 25 Sep 2023 21:40:25 +0000 Mon, 25 Sep 2023 21:40:25 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230925065611.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html
https://agora-web.jp/archives/230924231358.html スペイン議会内で公用語になったカタラン語・バスク語・ガリシア語 https://agora-web.jp/archives/230924231358.html

filophoto/iStock

スペイン議会で演説が可能になった3つの言語

スペインには独立を望む自治州政府が2つある。カタルーニャ州とバスク州である。それにポルトガルと歴史的な関係が強いガリシア州も固有の文化をもっている。

この3つの自治州は独自の言語をもっている。カタラン語、バスク語、ガリシア語である。バレンシア州にもバレンシア語が存在しているがバレンシア語の場合は独立した言語だ、或いはカタラン語の派生語だと意見が2つに分かれている。

http://spaining.zening.info/map/index.htm

今月21日、スペイン下院はこの3つの言語を上下院内で公用語として承認された。即ち、議会でスペイン語以外にこの3つの言語で演説や議事応答ができるようになったということである。

この議決に導いたのはただ一つの理由からだ。7月23日に総選挙が実施されたが、どの政党も過半数の議席獲得でない。他党と連携して議席票を集めても党首の首班指名で国民党(PP)は4議席足らない。一方の社会労働党(PSOE)も同じく4議席足らないという事態になっている。

そこで現在、暫定首相として政権を預かっている社会労働党のサンチェス氏がこのまま政権を継続できるように上記3つの地域の独立政党からの支持を仰ぐために議会でこの3つの言語を公用語とさせたのである。

3つの公用語による弊害

この決定によって次のような問題が発生している。

  • 国会議員の全員がこの3つの言語を理解できるようにするためには通訳が必要になっている。
  • 同時通訳で全議員がそれを聞くことができるように同時通訳機材の設置も必要になっている。

この2つの問題から今年末までに通訳と機材とで28万ユーロの支出が必要になっている。

更に問題は特にバスク語である。バスク語はラテン語とは全く異質の言語で、議事を記録している速記者にとって非常に難しいという。しかも、通訳が誤訳すればその誤訳された内容が議事記録なってしまう。

仮にその内容が法定上の問題となっても誤訳だということで効力を発揮しなくなる。しかも議会内でのヤジもスペイン語以外だと通訳に依存するようになる。その為、速記者は誤った速記をしてもその責任は負わないと表明している。

まるで「カラオケ」だ

サンチェス暫定首相が自らの政権をこのまま維持したいという我欲から国家予算から予定外の出費を生み、さらに速記者にとっても負担を重くさせている。

国民党の党首フェイホー氏はこのような議決をさせたサンチェス首相の決断を揶揄して「カラオケ」だと表現した。

この3つの言語が公用語になった日に、カタルーニャ出身の議員が演壇からカタラン語で演説し、そのあとバスク出身の議員がバスク語とスペイン語をチャンポンして喋り、次にガリシア出身の議員がガリシア語で演説。恰も喜劇でありまた悲劇でもあるような光景を生んだのである。

憲法でスペインの公用語はスペイン語と定められている。それを歪めてサンチェス暫定首相は自らの政権継続を望んでこの3つの言語も議会で公用語にさせたのである。

一旦議事室から出れば、大半の議員がスペイン語を完璧に喋っている。今回の決定は正にサンチェス暫定首相の上記3州への胡麻すりでしかない。その為に余計な出費と通訳上の問題を発生させることになる。

更に、スペイン暫定政府は先ず最初にカタラン語をEU内でも公用語と認められるように働き掛けているのである。その次にバスク語とガリシア語が続くことになる。

私利私欲に走っているサンチェス暫定首相の国家のリーダーとして存在意義が問われるべきであろう。

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Mon, 25 Sep 2023 21:30:54 +0000 Mon, 25 Sep 2023 21:30:54 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html https://agora-web.jp/archives/230923005208.html https://agora-web.jp/archives/230924090745.html
https://agora-web.jp/archives/230923074547.html 納税する義務と寄付する権利 https://agora-web.jp/archives/230923074547.html アメリカにおいては、おそらくは、建国以来の伝統のもとで、自分の安全を守る権利、自分の健康を維持する権利など、社会全体の仕組みにおいて、個人の自主自律と自助努力が基本にされていて、それが例えば医療保険や銃規制をめぐる議論に濃厚に反映しているようである。

123RF

それに対して、日本は、戦前の国家体制に対する反省と戦後の経済復興政策によって、徹底して福祉国家の道を歩んできた経緯があって、アメリカとは対極的に、税金や社会保険料等の徴収を通じた所得の再配分機能が大きくなっている。しかし、超成熟による深刻な転機を迎えるなかで、少しずつ社会構造の見直しが始まっているのかもしれない。例えば、寄付に対する税制優遇措置の拡大である。

納税を通じた再配分では、納税者は使途を特定できないが、寄付を通じた再配分では、逆に使途を特定するのが普通である。納税は義務であって、権利ではないが、寄付は自分が自由に寄付先を選ぶものだから、義務ではなく、むしろ権利である。そこで、国民の自主自律を徹底させるのならば、納税から税制優遇措置の拡大によって寄付を促す方向への転換が考えられるわけである。

事実、周知のように、アメリカでは、大学の運営を始め、多くの社会的事業分野において、寄付が大きな役割を演じている。特に、多様な価値観を許容しなければならない文化的な領域においては、政府は補助先を選択できないのに対して、寄付では、寄付者の多様な見識により、多様なものが寄付対象になり得るという利点があり、また、寄付を受ける事業者の利益誘因として、寄付者の支持を集めるために事業運営の質を高める努力を促す点も見逃せない。

しかし、寄付という予測のつかない資金をあてにしていては、事業運営できない。そこで、寄付金を事業支出に充当するのではなく、寄付金で財団を作り、その運用収益を費消するのである。故に、税制優遇措置としては、寄付者にとって寄付金が損金算入できることだけではなくて、財団の運用収益を非課税にすることも必要なわけである。

長期投資という名のもとで大きな誤解があるようだが、資産運用には運用収益を利用する事業目的が明確にあって、その目的を実現することが資産運用なのだから、事業遂行に必要な原資が予測可能なものとして生成されるべきことは、資産運用の基本中の基本なのであって、この基本の徹底が投資技法の高度化をもたらすのである。実際、アメリカでは、高度な資産運用能力を有することで知られている財団が多くあるわけだ。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
facebook:森本 紀行

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Mon, 25 Sep 2023 21:20:43 +0000 Mon, 25 Sep 2023 21:20:43 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230923014720.html https://agora-web.jp/archives/230923004920.html https://agora-web.jp/archives/230921213721.html https://agora-web.jp/archives/230922005933.html
https://agora-web.jp/archives/230925065611.html 元愛知大学生、反戦デモ参加で退学処分問題の論点 https://agora-web.jp/archives/230925065611.html

Nadya Ustyuzhantseva/iStock

反戦デモに許可なく参加したなどとして、愛知大学が学生自治会役員の学生3人に退学の懲戒処分を通知、それに納得がいかない元愛知大生3人が再審査請求したことが話題になっている(『中日新聞』9月22日)。

大学が学生3人に退学の懲戒処分を通知したことが賛否両論を呼んでいるのだ。「反戦デモに参加することの何がいけないのか」「日本で反戦を叫ぶことは許されないのか」と学生に心を寄せる意見もある。

私も、学生が反戦デモに「普通に」参加すること自体、何の問題もないと思っている。「普通に」参加しているのに「それがダメだ」と言って、大学が学生を退学処分にしたならば、不当であろう。

参加学生は大学側によると「反戦デモに参加して、無断で愛知大学学生自治会の旗を掲げ、本学公認の活動であるかのような外観を作出」「学長の顔写真に(中略)ビラを掲示して、学長を侮辱、本学を愚弄」したという。

つまり、デモに参加し、無断で「愛知大学学生自治会の旗」を掲げて、学長を侮辱するかのような行為が問題視されたのだ。

「戦争に反対したら退学になるのか」という声もネット上で聞かれたが、反戦デモに参加したこと自体を大学側が問題視しているわけではないのだ。デモにおける元学生たちの行為が問題視されたのである。

しかし、学生側は「ビラは自分たちが撒いたものではない」として、冤罪を主張している。学生側の主張が本当か否かが、今後は1つの争点となるであろう。そして、デモにおいて「無断で愛知大学学生自治会の旗を掲げ」たことが退学処分を喰らうことか否かということも、論点の1つであろう。

ちなみに、学生自治会側と大学は「学生会館の管理運営権」などを巡っても、争っているという。愛知大学は「大学構内の施設の使用に関する規定」を制定・施行し、会議や集会を開催したり、宣伝や勧誘などの目的で施設を使用する場合は、大学の許可が必要としているが、学生自治会が「自治活動や表現活動を制約するもの」として、反対したのだ。

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Mon, 25 Sep 2023 21:10:07 +0000 Mon, 25 Sep 2023 21:10:07 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html https://agora-web.jp/archives/230923235915.html https://agora-web.jp/archives/230922205401.html https://agora-web.jp/archives/230922204320.html
https://agora-web.jp/archives/230924115400.html 日本という「世界最高の楽園」はもうすぐ終わる https://agora-web.jp/archives/230924115400.html 赤坂見附のサイゼリヤに行ってみました。グラスワインは税込100円。ワイン3杯とグリルドチキン(写真)などのお料理を4品注文して、会計はわずか1600円。今や新興国よりも安い価格です。

サイゼリヤは極端だとしても、円安によって日本国内の価格優位性が高まっています。

ファストフードのマクドナルドから高級フレンチレストランのロブションまで、グローバルに展開している飲食店の価格を比較してみると、先進国では日本の安さが際立っています。

しかも、日本は安全と清潔という生活のクオリティも極めて高いのが特徴です。

夜中に街を歩いていても危険はないし、都市部であれば公共交通で便利に移動できます。財布を落としても、お金を抜かれることなく翌日に届けられることは珍しくありません。

繁華街にある公衆トイレも清潔で、街自体が綺麗に清掃されています。お刺身やお寿司のような生ものを食べても安心ですし、水道の水だって飲むことができます。

さらに医療も充実しており、健康保険制度によって低負担で高い医療技術を享受することができます。

飲食店はチップを要求されることもないのに、接客は極めて丁寧。職人気質の料理人のこだわりの料理が低コストで提供されています。

四季折々の自然を楽しむこともでき、東京にいても1時間ほどで温泉に出かけてのんびり寛ぐことができます。

住む場所としては日本は「世界最高の楽園」です。

しかし、この楽園は残念ながらもうすぐ終わるのではないかというのが私の予想です。

人口減少による人手不足でサービス業の水準はこれから下がり、人件費の上昇から価格も上昇していくことでしょう。サービス業はなり手が少なくなり、外国人や機械化で代替されていき、味気ないものになっていきます。

円安が更に進めば、外国人にとっては更に割安な観光地となって訪日客が増加し価格が上昇。高級ホテルや人気の高級飲食店は、一般の日本人には手が届かないものになります。

健康保険をはじめとする社会保障も財政赤字によって賄われているものですから、持続性はありません。いずれ、社会保障制度の抜本的改革が必須となり、医療サービスは高コスト化していきます。

財政赤字削減のために公共サービスは質が低下し、街はゴミだらけになり、建物や道路のメンテナンスも充分にできなくなります。

「タコ足」という言葉があります。お腹が空いたタコが、食べるものがなく仕方なく自分の足を食べるという話です。

財政赤字を垂れ流しながら、コストに見合わない社会保障を国民に提供し続ける日本政府。やっぱり足を食べているタコと同じなのかもしれません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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Mon, 25 Sep 2023 21:00:58 +0000 Mon, 25 Sep 2023 21:00:58 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html https://agora-web.jp/archives/230923005208.html
https://agora-web.jp/archives/230924231639.html 幻想を超えたインドとのパートナーシップは不可能なのか https://agora-web.jp/archives/230924231639.html インドとカナダの関係が悪化している。発端はカナダ西部のシーク教寺院駐車場で6月18日に発生した銃撃事件だ。殺害されたハルディープ・シン・ニジャル氏は、シーク教徒の独立運動に関わる過激派組織の幹部とされる。インド政府は、ニジャル氏を「テロリスト」として指定している。

トルドー首相とモディ大統領 同首相HPより

この事件について、カナダのトルドー首相が、インドの諜報員が関与した可能性があるという疑惑を積極的に追求している、と述べたことに、インド政府が激高した。カナダ政府は証拠がないまま公然とインド政府の責任を述べたとして、カナダ人へのビザの発給業務の停止を発表した。

私自身は、事態の推移を非常に残念な気持ちで見ている。インドとカナダの関係悪化も残念なのだが、実はもっと残念なのは、日本も含めて欧米の「リベラル」派メディアや有識者たちが、一斉に「インドは異質(だから関係見直そう)論」を唱え始めて、ことさらに事態を深刻なものとして脚色して盛り上げようとしていることだ。

カナダのトルドー首相も、国内世論対策の事情があって、やむなくやっていることだろう。日本や欧米諸国の外交当局も、事態の鎮静化に向けた努力に奔走しているところだと思われる。無責任なメディアの「インドは価値観を共有するパートナーではない」の論調は、自国の外交基盤を弱体化させるだけの結果に終わるだろう。

残念である。

第一に、事実関係がはっきりしない。偏見を持った状況の推察でインド政府の犯行を断定するのは、あまりに危険だ。オサマ・ビン・ラディンをはじめとするアルカイダ系・イスラム国系の「テロリスト」を暗殺するのは、無人機を用いて数限りない無数の他国領土内の標的殺害を繰り返してきたアメリカ政府以外にはない、と推察できるかもしれないが、インドの状況は異なる。即断はできない。

第二に、インドは、21世紀の超大国である。カナダとは、現在の国力や近未来の潜在力が違いすぎる。インド批判を好んで行いたい国はない。万が一にも、どこかの国がインドの国力を過小評価するような言動を見せたら、インドに反発されるのは当然である。拙速なインド批判の論調は、直近のロシア・ウクライナ戦争における国際世論対策でも、ウクライナを支援する欧米諸国に否定的な影響しかもたらさないだろう。

第三に、インドが「価値観を共有するパートナー」だと考える、ということは、インド人がいずれ、「トルドー首相はモディ首相より格好いい」と信じるようになり、「カナダ人が批判するならインドが間違っているのだろう」と考え始める、などという幻想に浸ることを全く意味しない。そんなことは決して起こらない。だが、欧米諸国の「リベラル系」知識人は、そのことが、全くわかっていない。

インドと日本や欧米諸国が共有しているのは、アメリカの東海岸の大学の教授陣が熱心に講義している「リベラルな秩序」というよりも、「国連憲章の諸原則を基盤にした国際秩序」である。両者は重なるが、同じではない。インドは後者に明確にコミットしているが、前者へのコミットの度合いは欧米諸国や日本ほどではない。

だがそんなことは言う必要もない自明の事柄である。欧米諸国とインドが違うということは、インドがロシアや中国が同じだということを、全く意味しない。だが短絡的な欧米中心主義的な二元的世界観は、インドのような異質な超大国の存在を許さない。

残念である。

豊かなインド文明への尊敬を忘れ、インドが世界最大の70年以上の歴史を誇る民主主義国である(ただしリベラルではない)ことを忘れる者は、いずれ痛い目にあうだろう。

日本にとって、そして欧米諸国にとって、インドは、異質な国であるまま、基本的な価値観を共有する偉大なパートナーになりうる。それなのに「欧米と違うなら、ロシアや中国と同じだろう」と言ってインドを突き放すのは、自殺行為だと言っても過言ではない。

安倍首相が、「自由で開かれたインド太平洋」構想をインドで披露し、米国(とそのジュニア同盟国)がインドと連携する「クアッド」を確立したとき、インドが欧米のような国になるとか、将来インドをG7に入れるべきだとか、インドと軍事同盟を結ぶべきだとかは、言っていなかった。インドは、欧米諸国とは異質だが、「(国連憲章の諸原則の)価値観を共有する」偉大なパートナーになりうる。そう考えていたはずだ。

今や日本でも、「自由で開かれたインド太平洋」を忘れ、「(弱くて貧しい)グローバル・サウスを手なずける先進国」でありたい、という幻想にしがみつく者ばかりになってきた。

非常に残念である。

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Mon, 25 Sep 2023 03:00:35 +0000 Mon, 25 Sep 2023 03:00:35 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230925065611.html https://agora-web.jp/archives/230924005436.html https://agora-web.jp/archives/230923235915.html
https://agora-web.jp/archives/230924115312.html 第二幕に入る送金、決済ビジネスの行方:メガバンクのステーブルコインの成否 https://agora-web.jp/archives/230924115312.html フィンテックという言葉がようやくなじみ始めたという方もいらっしゃるのではないでしょうか?ファイナンスとテクノロジーを掛け合わせた造語ですが、日本の造語ではなく、海外でもちゃんと通じます。Financial Technologyという言葉をFintechとしたのが語源です。

結局、フィンテックとは何だったのか、といえば個人的に思い当たるのは途上国などで銀行口座が持ていない人が送金する手段を持ち合わせていない中、いかに簡単に送金できるか、という代替手段でした。途上国の人の送金手段とは他国に出稼ぎに出ている家族が自国の家族に生活費を送金することも含まれます。フィリピンやメキシコの出稼ぎの人がスマホの格安送金をしていたのが話題になったのもずいぶん前の話です。

途上国の人たちがスマホを持っているのは経済のバランスからおかしいと思ったのですが、生活の糧でもあったわけです。

次いでビットコインが生まれましたが、最大の特徴はブロックチェーンと称するお金の流れのヒストリーが全部わかることです。我々が使う紙幣は過去、誰がどう使ったか全くわかりません。銀行から引き出す、お釣りでもらうなどお金の履歴は直前だけしかわからず、その前は一切不明です。それが明白になると資金洗浄のような取引には不利となります。

但し、いくら仮想通貨とは言えども今や2万種もあるとされるコインが絡むと経路の判明を難しくすることも可能です。ちなみにビットコインはコインとの相性は悪く、イーサリアムが主体となります。

このような流れが生まれる中、アメリカの当局は必死に仮想通貨の普及を阻止しようとしていました。理由は基軸通貨ドルの尊厳が歪むからです。アメリカが膨大な借金ができるのは基軸通貨のおかげといってもよく、日本政府がせっせとアメリカ国債を購入するのは基軸通貨であることが最大の拠り所ともいえましょう。

現在ある世の中の通貨はほぼ政府保証のマネーです。つまり、国家がそのお金の価値を約束しているということ。ではアメリカがもしも経済や国家運営に詰まり、「お約束している国債の利払いや償還ができません」といえばアメリカ国債は暴落します。基軸通貨といえども結局健全なアメリカ経済が前提であり、極端な言い方をすれば地球はアメリカを中心に回る天動説であるともいえるのです。

ここで第三極的な仮想通貨が生まれようとしています。日銀はかつて仮想通貨を暗号資産だと命名しました。確かに今までは正しかったのですが、これからは仮想通貨に戻すべきでしょう。なぜなら通貨としての役割を持たせる方法が出来つつあるからです。

それがステーブルコインと称するものです。これは発行する仮想通貨の量に見合った政府通貨などを担保として持っていることが前提になります。今でも仮想通貨にステーブルコインと称するものはあるのですが、その担保が怪しかったこともあり、ステーブルではなくなったものも存在します。

今回、その発行を試みているのが日本のメガバンクで当初計画より大幅に遅れましたが、来年にも登場しそうな勢いです。主体は三菱UFJでみずほ、三井住友はそれに乗っかる感じでしょうか?今後、煮詰まれば3社でスタートし、徐々に他の銀行も交えた形になるのでしょう。

gopixa/iStock

今年の春、みずほはLINE銀行計画から撤退し、幻の案件となりました。双方いろいろ問題があったことも事実ですが、フィンテックの世界が目まぐるしく進化する中でみずほが銀行主導のステーブルコインに舵を切ったからではないか、とみるほうが正しい気がするのです。

確かに当時はQR決済が花形のように言われ、事業会社は必死のマーケティングを展開していました。まるでQR決済が今後の支払いのデファクトスタンダードになると言わんばかりでした。確かにQR決済は新しいし、スマホをピッとやれば払えるなんておしゃれです。ですが、いまや、クレカでもスマホピッで払えます。それにQRを出すのが面倒な場合もあるのです。更に店側は決済の費用が掛かるし、各社別の端末なのでレジの前は端末だらけで実に見苦しいわけです。

ここでメガバンクの打ち出すステーブルコインは通常の決済のみならず貿易決済に使えそうだという点が極めて重要なのです。現在、海外送金はSWIFTという決済システムを介して行われます。この前近代的な送金の仕組みは今、お金が何処にあるか分からず、事故も生じるし、決済コストが高いのです。ステーブルコインになればSWIFTがいらなくなる、これは画期的です。そして送金のコストも極めて安く、送金は瞬時に完了します。これは貿易決済の世界に於いて革命的と言ってよいでしょう。

個人的にはメガバンクが発行するステーブルコインは第二幕で、これも幕間つなぎだとみています。最終兵器は中央銀行が発行するデジタル通貨でこれが出来れば世の中の決済は激変します。まず、銀行ビジネスが激変します。駅前一等地に銀行は不要でどこかのビルの上の方に入っていればよいことになります。給与はスマホのアプリに直接入り、支払いもスマホでします。銀行がそこでは介在しません。よってメガバンクのビジネスはともかくリテールバンクは厳しい将来が待っていることになります。

現在のQR決済業界だこれから激変時代を迎えるわけで個人的には民間のQR決済は1-2社を除き無くなるとみています。結局、金融を扱うのは政府の意向を汲んだ大手が主流ということになるのでしょう。いつの話ですかね、と聞かれたら30年代初頭にはそうなっていると予想しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月25日の記事より転載させていただきました。

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Mon, 25 Sep 2023 03:00:08 +0000 Mon, 25 Sep 2023 03:00:08 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html https://agora-web.jp/archives/230923005208.html
https://agora-web.jp/archives/230924141502.html 【Vlog】インドが投げかける西側諸国の悩ましいジレンマ https://agora-web.jp/archives/230924141502.html アゴラチャンネルで鎌田慈央のVlog、「インドが投げかける西側諸国の悩ましいジレンマ」を公開しました。

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Mon, 25 Sep 2023 03:00:01 +0000 Mon, 25 Sep 2023 03:00:01 +0000 https://agora-web.jp/archives/230924140401.html https://agora-web.jp/archives/230923235239.html https://agora-web.jp/archives/230923080914.html https://agora-web.jp/archives/230923003327.html https://agora-web.jp/archives/230922125455.html
https://agora-web.jp/archives/230924115337.html 長距離地対地ミサイル供与の効果 https://agora-web.jp/archives/230924115337.html ウクライナのゼレンスキー大統領は訪米ではあることを肌で感じたのではないか。最大の支援国・米国でもウクライナ戦争への関心が減少していることをだ。バイデン米大統領はウクライナへの追加支援を発表したが、米議会でのゼレンスキー大統領への歓迎ぶりは昨年12月の最初の訪米時と比べれば、明らかに冷めていた。米議会での演説も出来ず、米国らしい熱狂的な歓迎といったシーンは少なかった。

米陸軍の長距離地対地ミサイル「エイタクムス」 Wikipediaより

次期大統領選を来年11月に控えている米国では政治家も有権者も最大の関心事は次期大統領選に注がれている。大統領を含む政治家の全ての言動は選挙戦にプラスか否かが最大の判断基準となる。戦場から飛んできたゼレンスキー氏は一抹の不安と寂しさを感じたに違いない。その点、米国訪問後のカナダ訪問(22日)では大歓迎を受け、ゼレンスキー氏は鼓舞されたことだろう。カナダのトルドー首相は今後3年間で約715億円相当の追加支援を発表した。

ゼレンスキー氏はカナダ訪問後、帰国の途上、ポーランドに寄ったが、ポーランドの政治家との会合はなく、負傷したウクライナの子供たちの支援活動に活躍したポーランド人に国家賞を授与したことが唯一のトピックだった。ウクライナ産穀物輸入問題でウクライナとポーランドの間で対立が生まれてきている。そのうえ、ポーランドは現在、議会選挙戦(10月15日実施)の最中だ。与野党は農民層の支持を得るためにウクライナ産穀物輸入には強く反対し、ウクライナとの関係は現在、険悪となってきた。ウクライナ戦争の勃発以来、隣国ポーランドはウクライナからの避難民の最大受け入れ国であり、武器も積極的に供与してきた支援国だった。何度もキーウまで足を運んで支援を表明してきたモラウィエツキ首相は現在、ウクライナ批判の最先頭に立っている、といった具合だ(「ウクライナ戦争と欧米の『選挙戦』」2023年9月23日参考)。

ところで、ゼレンスキー氏の訪米での成果は、当初供与を渋っていた射程約300キロの長距離地対地ミサイル「ATACMS」(エイタクムス)の供与をバイデン大統領が土壇場で約束したことだ。それに先立ち、バイデン氏はウクライナに対する総額約3億2500万ドル(約480億円)の追加軍事支援も表明したが、長距離地対地ミサイルの供与は最後まで拒否していた。

長距離大型地対地ミサイルの数や供与時期は未定だが、米国がエイタクムスをキーウに供与することを決めたことで、ドイツの長距離巡航「タウルス」(Taurus)のキーウ供与の道が大きく開かれる。ショルツ独首相は主力戦車「レオパルト2A6」のキーウ供与問題でも常に「わが国は単独ではできない。米国がその主力戦車『M1エイブラムス』を供与するなら、ドイツもそれに応じる用意がある」と表明。米国が今年1月25日、主力戦車の供与を決定した時、ドイツ側は同時に「レオパルト2A6」の供与を決定した経緯がある。

それだけに、ドイツ製長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与問題でも同じことがいえるというわけだ。ちなみに、ドイツ製長距離巡航ミサイル「タウルス」の射程距離は米国のそれより長い約500キロだ。米国とは違い、ウクライナにとって欧州大陸のドイツから長距離巡航ミサイルを獲得できれば、運搬も補給作業も米国のそれより容易だ。英国とフランスは既に射程距離250キロのミサイルをウクライナ軍に供与しているが、ドイツの「タウルス」が加われば、モスクワにとって脅威となることはいうまでもない。

ウクライナは現在、2014年にロシア側に併合されたクリミア半島の奪回を最大の目標としている。ウクライナ軍は22日、クリミア半島の軍港都市セバストポリにあるロシア海軍黒海艦隊司令部を攻撃し、大きなダメージを与えたという。ウクライナ軍が米国やドイツから長距離地対地ミサイルを獲得できれば、ロシア軍への攻撃力は数倍強化され、戦局を大きく左右することにもなる。例えば、ロシア本国とクリミア半島を結ぶ「クリミア橋」が完全に破壊されれば、ロシア軍のウクライナ南部への補給は完全に断たたれる。

参考までに、ウクライナとの戦争が始まって以来、約3500人の兵役年齢のロシア人男性がドイツへの亡命を申請している。ドイツ連邦内務省が明らかにしたものだ(独週刊誌「ツァイト」オンライン9月24日)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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Mon, 25 Sep 2023 02:55:36 +0000 Mon, 25 Sep 2023 02:55:36 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html
https://agora-web.jp/archives/230924233301.html 糖尿病の呼称が「ダイアベティス」に:日本語じゃなきゃなんでもいいの? https://agora-web.jp/archives/230924233301.html 糖尿病に対する世間の誤解や偏見をなくそうと「日本糖尿病協会」などが、糖尿病の新たな呼称として英語の病名に基づいた「ダイアベティス」とする案を発表しました。

これらの学会によると、現在の糖尿病という病名は①糖が尿に出ない患者も多く症状を正確に表していない。②「尿」ということばが不潔なイメージにつながり誤解や偏見を生んでいる。という点で新たな呼び方を検討していたそうです。

素朴になんかカッコいいかもという声や。

病名で無自覚な偏見生んでるのは間違いないので変えるの賛成という意見も。

ただし、カタカナなんて分かりにくい病名にしちゃいかんよという声も。

なんと「ダイアベティス」に尿という意味も含まれているとか。

名称にこだわるのが日本的だという指摘も。

https://twitter.com/AyakoMiyakawa/status/1705124005345120535

お医者さんの間でも候補としての「ダイアベティス」の人気はあまり高くなかったようです。

呼称の変更は素朴な善意か、なにかの利害関係から生まれたのか、とても日本的な推移のように思えてきました。

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Mon, 25 Sep 2023 02:50:55 +0000 Mon, 25 Sep 2023 02:50:55 +0000 https://agora-web.jp/archives/230926005030.html https://agora-web.jp/archives/230925143958.html https://agora-web.jp/archives/230924001007.html https://agora-web.jp/archives/230922202804.html https://agora-web.jp/archives/230922211424.html
https://agora-web.jp/archives/230924094656.html 鎖国しなければオホーツク海沿岸は日本領だった:『江戸幕府の北方防衛』 https://agora-web.jp/archives/230924094656.html

omersukrugoksu/iStock

このところ北海道の歴史に注目が集まっている。どうしたわけか、保守系までが一緒になってアイヌ先住民説を無批判に受け入れ、北海道開拓を負の歴史と捉えかねない勢いだ。

オーストラリア人がにわかにアポリジニーへの恥知らずな虐待を反省してるのに触発されたらしい。

私は、新大陸の黒人奴隷と南アフリカのアパルトヘイトと並んで、オーストラリアの白豪主義は世界史上の三大人種差別で、オーストラリアがいちばん反省が遅れていると昭和の頃から主張し続けてきたのでこの問題はよく知っているが、北海道のアイヌ問題とは何も似ていない。

もちろん、全く何も反省しなくて良いわけでないのだが、しっかりと結論ありきでない検証が必要だし、どうもアイヌ先住民論を唱えている人たちの歴史認識が正しいとも限らず、また、法律の枠組みにも疑問はある。

ところが、そのことを議論することすら封じられそうな気配で、困ったものだ。杉田水脈代議士が民間人時代に、国連に乗り込んで蛮勇をふるって慰安婦問題やこうした流れに抵抗したのは、まことに勇気ある行動だったが、SNSでの報告の際、少しノリの良すぎる表現をつかったとして「政治家を辞めろ」とかいう向きもあるが、全体の構図をしっかり見て欲しいものだ。

それはともかくとして、「江戸幕府の北方防衛 ─いかにして武士は「日本の領土」を守ってきたのか」という本を中村恵子さんという方が書かれて話題になっている。ここの主題になっている、北方防衛のために松前藩や幕府の武士たちがたいへんな苦労をされたことは事実であって、その志を褒めることはいいことだ。

ただそもそも、松前藩はカムチャッカやサハリンまで領土だと認識していた。また、「平家物語」には、平宗盛が蝦夷や千島に流されても、生きていたいといったことが書かれているとおり、平安時代の人々も日本の領土として認識していた。

したがって、徳川幕府が適切に動いていたら、オホーツク海沿岸はすべて日本に帰属させるのはさほど、難しいことでなかった。ところが、松前氏にアイヌの有力者を介した間接支配させることで満足してしまった。

ましてや鎖国までしていたから、ロシアがオホーツク市を1643年にコサックの越冬地とし、1649年には砦を建設したのにもかかわらず、ロシアという国の存在すら知らないまま、無為無策で放置したのである。

ところが、戦争の捕虜としてカムチャッカに抑留されていたハンガリー人ベニョフスキーという人が1771年に脱出に成功して阿波と奄美に立ち寄り、カムチャッカや千島へのロシアの進出ぶりを報せてくれたのである。実に一世紀以上も何も知らなかったのである。

これに驚いて書かれたのが、工藤兵助の「赤蝦夷風説記」や林子平の「海国兵談」である。

これを受けて田沼意次は蝦夷地開発に取り組み、場合によっては交易もという構えであった。ところが、政権を受け継いだ松平定信は、とんでもない後ろ向きの政治家であった。

蝦夷地も下手に農業開発などして住み易くしたらロシアに狙われるだけとかいって、開発するのをやめたものの、最上徳内らを千島へ調査派遣したりはした。

このころ、難破してロシアで助けられ、エカテリーナ2世とも謁見したという伊勢の大黒屋光太夫を連れて、ラクスマンという船長が、1792年に根室に来た。漂流民を送り届け、丁重に通商を提案したのと、江戸湾に来てほしくないので、長崎でなら入港許可を出すといったが、長い交渉に疲れて、そのまま帰国してしまった。

このあとの幕府の政策は混迷を極めた。1798年には「大日本恵登呂府」の碑を択捉島で近藤重蔵に建てさせた。翌年には函館から根室までの太平洋側を占める東蝦夷を松前藩から取り上げ、直轄領とした。また、伊能忠敬は蝦夷地を測量して地図を作った。

ところが、1801年は、新規の外国貿易は行わないという方針を決めた。ラクスマンに与えられた入港証を持ったレザノフが1804年に長崎に現れたが、「やむを得ぬ事情で付き合っている四国以外とは交易を行うことを論外というのが祖法だ」と勇ましく返答した。

1806年には薪水給与令(文化の撫恤令)を出したかと思えば、1807年にはロシア船打ち払い令を出した。また、松前藩を福島県に移し、蝦夷地全土の直轄領化を出した。1809年には間宮林蔵が樺太で間宮海峡を発見した。

また、国後島を舞台に1811年にはゴローニン、翌年には逆に高田屋嘉がそれぞれ捕らえられる事件があった。ところが、ナポレオン戦争でロシアがそれどころではなくなったので、1821年には松前氏の蝦夷地復帰を認め、それから色々とあり明治の初年にサハリンとカムチャッカはロシアにくれてやって、資源のない千島だけで満足せざるをえなかったのである。

なにより悔やまれるのは、天下統一の後、早い時期に蝦夷地の開発に本腰を入れなかったことである。稲作や日本的な生活スタイルにこだわる限りは蝦夷地は住みにくい土地である。

そこで、もし鎖国などせずに大陸や西洋、あるいは北米の寒冷地をもっと日本人が旅行でもしていたら、寒冷地での生活や食料生産の方法を学び、アメリカ人の指導で北海道開拓をしたようなことが300年近く前倒しで蝦夷地でできたはずだし、さらに樺太などにも進めたはずである。返す返す、鎖国という愚策が悔やまれる。

ところが、著者の中村恵子さんは、大きな歴史の中の大失敗からは目を背けて、鎖国まで褒めているのである。

中村さんが幕府や松前藩の末端の役人などが、局地的に頑張ったことを評価されていることは間違いではないが、それは大失敗のあとの小さな頑張りに過ぎないのである。まして、そのことで幕府や松前藩、なかんずく幕府の鎖国や北方政策を称賛するのはいかがなものかと思う。

同じ時代に清国はいち早く手を打ち、康熙帝がネルチンスク条約で外興安嶺の向こうにロシア人を追い返したのである。

康煕帝は南方での三藩の乱を鎮めると、1685年にロシアが建設していたアルバシンの城塞を攻撃し、3年間の戦闘ののち、康煕帝はピョートル大帝に親書を送り国境協定を提案。1689年、ネルチンスク条約に調印した。

康煕帝はイエズス会の宣教師を使い、近代的な条約を結んだのである。外興安嶺(スタノヴォイ山脈)とアルグン川(黒竜江上流)を結ぶ線を国境とし、ロシアはアルバジン城を放棄し、ネルチンスクにおいて通商貿易を行うことが決められた。極めて深刻に有利な内容だったので、ロシアはオホーツク海で日本が鎖国で眠っている間にオホーツク海の沿岸の大半を手中にしたのである。

清国はアヘン戦争までは素晴らしい政治をし、経済は大発展、人口は3倍、災害も封じ込めた。対して日本は人口停滞、餓死だらけだった。

たまたま、この春に中村さんと懇談する機会があったが、そういう世界史的な動きを説明させていただいて、それなりにご理解頂いたが、それでも鎖国は素晴らしい政策だという点については、意見をその場では変えてもらえなかった。

幕末の条約交渉でも、幕府の外国奉行だった岩瀬忠震(伊達政宗の男系子孫)が、国際法も勉強せずに交渉に臨み、ハリスに教えを請いながら交渉するというお粗末な状況だったが、それを批判せずに、時折鋭い質問をしたというだけで、岩瀬は立派だったと褒める輩がいる。

鋭いと言っても、治外法権や関税自主権についても質問してないことを考えると、何も鋭いわけでないが、付け焼き刃にしては・・・と言うだけだ。

日本人は、現場での小さな頑張りに気を取られて、大きな図式での失敗を許してしまうからダメなのだ。

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Sun, 24 Sep 2023 22:00:54 +0000 Sun, 24 Sep 2023 22:00:54 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925234556.html https://agora-web.jp/archives/230925002415.html https://agora-web.jp/archives/230923154836.html https://agora-web.jp/archives/230911224654.html https://agora-web.jp/archives/230909210627.html
https://agora-web.jp/archives/230923005208.html 遊び道具としてならAIもおもしろく使えるが…… https://agora-web.jp/archives/230923005208.html こんにちは。

あと2~3日で発売される最新刊の拙著『生成AIは電気羊の夢を見るか?』の結論は、人間の命とか資産とかの重要なものを扱うには、ときどき陥る幻覚症状(hallucination)が恐くて生成AIは使えないが、遊び道具としてはいろいろ応用範囲が広そうだということでした。

生成AIの幻覚症状については、少なくとも現在の技術水準ではどうすれば根絶できるかと考えるのは非現実的で、どうすればAIに幻覚症状を起こさず、気持ちよく働いてもらえるかを工夫するしかないというコンセンサスができつつあります。

そこで今日は、仕事上の相棒としてはもちろんのこと、遊び仲間としてもけっこう厄介な存在になりそうなAIとの付き合い方について、いろいろ考えてみたいと思います。

brackish_nz/iStock

「楽をして高い知的能力を要求される仕事ができる」は幻想

まず、幻覚症状を起こさず機嫌よくAIに働いてもらうための6つのアドバイスをご覧ください。


AIは「どう答えたらいいかわからないけど、できるだけ指示を出してくれた人が喜ぶような答えを出したい」と思ったとき、つごうのいいウソをつく傾向があるそうです。

ですから、「自分ではとうてい思いつかないようなすばらしいアイデアを考え出してほしい」という質問をすると、ウソの答えが返ってくる危険が大きくなります。自分で選択肢を指定するわけですから、自分の想像力の範囲内の答えしか返ってこないことがわかります。

この第1項目でもう、自分ひとりではできなかったことがAIを使えばできるというのは、運良くそうなることはあったとしても、基本的には幻想にすぎないと納得していただけるでしょう。

次は、楽をして成果をあげられるという幻想です。これも、データはできるかぎり自分で探し集めたものをAIに投入しましょうということで、あっさり否定されてしまいます。

実際、データ収集をAIに任せたら、返ってきた答えについていちいちほんとうに存在するデータから導き出した答えなのか、架空のデータから都合良くひねり出した答えなのか調べなければならないので、かえって仕事量が増えてしまうのではないでしょうか。

3番目は、生成AIならプログラム言語を使わず日常話しているとおりのことばで指示を出しても答えてくれるという、まさに画期的な特徴の限界についてです。たしかに、生成AIは数式をそのまま問題として出したときだけではなく、いわゆる文章題にも答えてくれます

でも、「ある値段のものをいくつ買って、次に別の値段のものを別の量買って、さらに違う値段のものをやはり違う量を買ったら、合計いくらの買いものをしたことになるか」といった文章で訊くと、単純な計算を間違えることが多いのだそうです。

だから、品物ごとに値段と数量を書き出して、それぞれ掛け合わせて1品当たりの小計額を確認してから、全部合計するといくらというふうに、表計算プログラム的なひな型をつくってやる必要があるということです。

4番目は、漠然とした相談を持ちかけると、AIがありもしない会社の営業マンになってセールストークで答えてくることもあるからご用心ということです。

「ペットショップを経営しているけど、お買い上げいただいたペットをお客様の自宅に届ける配送能力はない。どうしたらいいか?」と聞いたら、「どんな生きものでも安全に客先までお届けする弊社にお任せを」という答えが返ってきたという例が紹介されていました。

もちろん、現実にそういう会社が存在するわけではなく、AIがストックしていたデータの中からさまざまな運送会社の宣伝文句をつなぎ合わせて答えただけです。

5番目も重要で、まったく実現性がないような答えを延々といくつも並べられたら、その中から実際にやってみる価値のある答えを探すのに時間がかかるでしょう。

6番目は、私にもちょっと意外な項目でしたが、そうとうな電力を使うので生成AIは発熱する傾向があり、あまり暑いところで仕事をさせると間違いが増えるのだそうです。

使う場所の室温まで考えてやらなければならないとなると、AIは助手としてもあまり使いやすい相手ではなさそうです。

生成AIの幻覚症状を考えるとき、やはりいちばん重要なのは「AIは指示を出した人間が喜びそうな答えを出したがる」という特徴でしょう。

停止中の車に激突することが多い自動運転システム

最近では「完全自律走行の実現まであと何年」といった威勢のいい表現を訊くことが少なくなりましたが、たとえばテスラ車のオートパイロットのような補助的な自動運転システムでさえ非常に事故が多いのは、この問題がからんでいるからではないでしょうか。

次の図表は、2019年から今年の8月までにテスラ車が関わった衝突事故と、その結果出た犠牲者数の概要です。


お膝元のアメリカでもテスラ車は高額なので、それほど多くの台数が走っているわけではありません。その中で、オートパイロットを使って走行中だったテスラ車がこれほど多くの衝突事故を起こしているのですから、事態はかなり深刻です。

中でも問題なのが、事故などで路肩に停車中の車とその前後に停めてあるパトカーや救急車にオートパイロット走行をしていたテスラが激突したという事故が多いことです。

テキサス州モンゴメリー郡で起きた、警察官5人と最初に事故を起こして停車していた車の運転者、計6人に重軽傷を負わせた事故の例を、写真と文章の組み合わせでご紹介しましょう。



オートパイロットシステムでは、走行している車両の位置や速度は位置測定アプリで確認し、静止している建物や自動車はカメラで確認することになっています。

静止しているものまで位置測定アプリを使うと、処理しなければならない情報量が多くなりすぎて収拾が付かないからという理由での便宜上の振りわけでしょう。

ところが、とくに夜道では静止している車がフラッシュライトを点滅させていても、カメラ自体がかなりのスピードで走っているクルマの中にあるので解像度があまり良くならないので、ネオンサインを点滅させている建物と区別が付かないことがあるそうです。

もし建物と判断すると、建物が路上にはみ出しているわけはありませんから、事故現場と知らずに通り抜けようとしてしまいます

その背景として、自動運転アプリを動かしているAIには「クルマに乗っている人はとにかくクルマが動いている状態が好きだ」という固定観念があるのではないでしょうか。だから交通量が少ないので速度を落として路肩に寄せても安全なところでも通り抜けようとします。

建物のネオンが点滅しているのではなく、緊急車両のライトが点滅しているとわかって慌てて手動運転に切り替えてハンドルを切ったときにはすでに遅く、追突していたということになります。

というわけで、幻覚症状が払拭できないうちは命や資産に関わる重要な決定をAIに委ねてはいけないと思っていたのですが、最近もうひとつ判断の即時性が要求される仕事もAIに任せてはいけないと考えるようになりました。

トヨタ全国工場の一斉休止もAIがらみ?

今年の8月末に、日本全国のトヨタ工場が一斉に休止に追いこまれる事態が起きました。まったくの憶測に過ぎませんが、私はこれも部品や資機材の発注をAIに任せたからなのではないかと思っています。

トヨタのAI導入はかなり早く、あまりにも製品の均質性が高いのでなかなか不良品のサンプルが手に入らず滞っていた検品システムを、AIの活用で少ない不良品サンプルを全社全工場で有効に共有することに成功したことから始まっています。

性能にはまったく問題はないけれども、どうも塗料が均等に塗られてないように見えるので製品として市場には出せないといった判断は、ベテラン社員の経験に任せるほかなかったのを、まずAIで粗選りしてそれからベテラン社員が確認するかたちで省力化できたわけです。

検品工程はあまり時間的に切迫していないので、それほど問題も生じなかっただろうと思います。しかし、ご自慢の「かんばん方式」でぎりぎり必要な量の部品や資機材を最短時間で発注し、調達するシステムで、AIが幻覚症状に陥ったら危ない綱渡りになりそうです。

次の記事の抜き書きでは、IT関連部門の発注をクラウドで一括処理するようにしたとなっています。


しかし、現代自動車産業では、EV(電気自動車)だけではなくエンジン(内燃機関)車もIT技術の塊のようになっています。

トヨタの国内全工場での稼働停止が、そのためだったかどうかはわかりませんが、AIによって運行しているクラウドに発注を一括管理させるシステムには、つねにそういう危険がつきまとうのではないでしょうか。

というわけで、人命や資産に関わる仕事だけではなく、時間の切迫した仕事もAIに任せてはいけないのではないかと思うようになりました。

そこで、人命にも資産にも時間の切迫した仕事にも縁のないお遊び企画を探していると、以前「古今東西の偉人がスニーカーを履いていたら」シリーズでご紹介したMidjourneyという描画アプリで、世界各国の絵に描いたような美人を描くという企画に出くわしました

これなら深刻な問題はなさそうに見えたけど・・・・・・

全部で49ヵ国の空想上の美人を描き分けるというなんともお手軽な思い付きですが、全体を動画で紹介している中で、表紙とも言えるサムネイルに使っているのは、やはりフランス美人でした。


フランスばかりでなく、ヨーロッパ各国の美人はけっこう微妙なニュアンスまで気を遣って描き分けています


左下のオランダ美人の場合、どこかでちょっとインドネシアの方の血が入っているのかなと思わせる顔立ちです。

また、昨今改めてヨーロッパに入るのか否かが問題とされ始めたロシア美人も、いかにも現代風にえらが張って意志の強そうな顔になっています。

驚いたのは、裏表紙とも言える2枚目の静止画像に採用されたのはナイジェリア美人で、しかも自信作だけあって、非常に魅力のある黒人らしい黒人の顔になっていたことです。


もうひとつの驚きは、現在欧米では非常に敵視されることの多い、北アフリカ・中東イスラム圏諸国の美女たちがとても好意的に描かれている中で、トルコの美女だけはちょっと時代錯誤と思えるほど古風に描かれていたことです。


私が知っているトルコ女性は、アメリカの大学院で猛勉強していた人たちも、多国籍企業で活躍していた人たちも、ヒジャブを被っているところなど想像もできないほど欧米化していたのですが、このへんには最近の移民をめぐる緊張が影を落としているのかもしれません。

それにしても、つい最近まで女性は夫か保護者が同乗していないと自動車を運転することさえ禁じられるほど抑圧されていたサウジアラビア女性が、アラビアンナイトの美女が現代に抜け出てきたかと思えるほどきれいに描かれています。

イスラム圏がどう動こうと石油大国だけは手放したくない」というアメリカの思惑まで感じてしまうのは、うがちすぎでしょうか。

アングロサクソン圏に美人はいない?

残念な意味で驚いたのは、イギリスを母国とし、先住民を絶滅寸前まで追い込んで植民者として大成功してしまったアングロサクソン諸国の美女たちが「へえ、これが絵にかいたような美人?」と首をかしげるような絵になっていることです。


ご覧のとおり、オーストラリア美人とアメリカ美人は目元がわからないほど濃い色のサングラスをかけていて、美人と言えるかどうかの判別を拒否したいでたちになっています。

ちなみに、49ヵ国の中でほかにサングラス美人が出現するのはアラブ首長国連邦だけで、この国もなかなか異様な国ですが、最低限目元の表情が見える薄い色のサングラスをかけています

また、カナダとニュージーランドの美人も、美人というよりは親しみやすい顔になっています。その理由は2つ考えられます。

ひとつは、世界中どこの国でも男どもは身の程知らずにも「自分の国には美人がいない」という不満を持っていて、コンピューター技術最先端産業もアングロサクソン系の男社会だということです。

もうひとつは、先住民を押しのけて白人主導の国にしてしまったことに後ろめたいものを感じているけど、さすがにマイノリティの美女を「我が国を代表する美女です」と紹介するほど偽善的にはなれないので、あまり華のない「白人美女」で落ち着いたということです。

そのへんの事情は、南アメリカ各国の美女と比較するとはっきり出ています。


おなじ南アメリカ大陸にあっても、政治的、経済的に大国と呼ばれる国ほど「白人度」が高いという描き方にはやや抵抗を感じます

ですが、そうとうインディオの血が濃そうなペルーの美女を見ていると、少なくとも少数民族の処遇に関するかぎり、アングロサクソンが征服した北アメリカやオセアニアよりずっとマシだったとは言えそうです。

東南アジア美女までは同じ現代世界に生きているが

南アジアから東南アジアまで来ると、着ている服などにはかなり異国情緒が出てきます。


ですが、まなざしや口元には同じ現代世界で生きている女性たちだという感覚があります。

ところが、東アジアに来ると描写が一変します。とにかく現代女性という感じがしないのです。


中国美人は、現代人には見えないにしても清朝末期の混乱した時代に生きていれば革命運動の闘士になっていたかもしれないという意志の強さを感じます。

韓国美人は、いちばん現代に近い時代に生きていただろうという感じで、微笑みかけているのか、泣き出しそうなのをこらえているのか、とにかく感情の起伏は感じさせてくれます

ところが、日本美人は大正時代までならこういう髷を結っていた人もいたかもしれないという中途半端な長さの髪を不自然に結って、顔は凍り付いたように無表情な微笑です。

どうして東アジアだけ、これほど時代錯誤的な描写がまかり通るのか、不思議です。あえて言えば、欧米人一般が共有している東アジアに関する先入観を1国を代表する美人の中に凝縮すると、こういう顔になるのかなということでしょうか。

そこで思いついたことがあります。Midjourneyに限らず、生成AIには世間一般で共有している固定観念、ステレオタイプをさらに強調し、増幅して刷り込む効果があるのではないかということです。

さらにこの考えを押し進めると、AIが幻覚症状を起こさないようになだめすかしながらお伺いを立てているうちに、AIを驚かせないような質問しかできないように調教されていく人間たちという構図が浮かび上がってきます。

オープンAIの創業CEO、サム・アルトマンはとうていビル・ゲイツやジョージ・ソロスのような筋金入りの巨悪ではありません。AIの幻覚症状は意図的につくり出した「疾患」ではなく、偶然噴出してしまったものでしょう。

しかし、巨悪の親玉たちは、この生成AIの幻覚症状も巧みに利用して、人類全体を従順な奴隷に飼い馴らす道具にしようとしているのではないでしょうか。

【関連記事】

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生成AIは電気羊の夢を見るか?


編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2023年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。

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Sun, 24 Sep 2023 21:50:06 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:50:06 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html
https://agora-web.jp/archives/230924090745.html アゼルバイジャンはアルメニア全土を奪うまで止まらない https://agora-web.jp/archives/230924090745.html

scaliger/iStock

ナゴルノ・カラバフでまたも一方的な軍事行動

19日、アゼルバイジャン軍が突如、アルツァフ共和国(ナゴルノ・カラバフのアルメニア人自治政府)への侵略行動を開始した。結局、数日と経たずに停戦が成立したが、日本メディアの反応は青天の霹靂といった感じである。

ただ、この数年にわたるアゼルバイジャン側の挑発行為を見てきた身からすると、遅すぎたとも思えるくらいだ。

9ヶ月におよぶナゴルノ・カラバフの封鎖…しびれを切らす

まず、アゼルバイジャンが今回の暴挙に至った理由だが、一言でまとめるとトルコ陣営がしびれを切らしたのだ。

今回の作戦の前段階として、アゼルバイジャンはカラバフ地域とアルメニア本土をつなぐラチン回廊を9ヶ月にわたり封鎖してきた。封鎖を正当化するため、アルメニア側の環境破壊に抗議する環境活動家と称した集団を配置したのである。

抗議団体のX(旧Twitter)より

環境破壊に抗議するというのに、国旗がやたらと目立つ不思議な集団であった。武器弾薬など軍需物資だけでなく、日用品の流入まで制限したことで人道危機が発生し、国連も封鎖の撤回を求めていた。

封鎖と並行して、ナゴルノ・カラバフに駐留するアゼルバイジャン軍は、砲撃や銃撃による挑発を定期的に行ってきた。今年4月には、アゼルバイジャン軍がアルメニア領内に発砲し、死者が出るという事件も起きている。こうして何とかアルメニア軍を戦場に引きずり出そうと画策したが、上手くいかなかった。

だから、アルメニア側の地雷により犠牲者が出たという、戦争を始めるにはあまりに拍子抜けな口実を持ち出さざるを得なかったのである。

腐敗したアゼルバイジャンはトルコの”走狗” 臓器ビジネスも?

アゼルバイジャンの行動を抑止できない要因として、ロシアの無力がある。今回も、ロシアの平和維持部隊は事態の推移をただ傍観しているだけだった。2020年の第二次ナゴルノ・カラバフ戦争の際も、プーチンの対応が後手後手に回ったことが激化につながった。テレビなどで語られる、ウクライナ侵攻でロシアが手一杯なことから力の空白が生まれたという説は誤りだ。ロシアは3年前からずっと無力なのだから。

しかし、そもそもアゼルバイジャン大統領イルハム・アリエフは2003年から政権の座にあるにもかかわらず、なぜいきなりナゴルノ・カラバフ”奪還”に執念を燃やすようになったのか。近年、いきなりアルメニア側が弱体化したということもない。

アゼルバイジャンがその好戦性を高めた原因は、後ろ盾であるトルコの膨張主義にある。アリエフ同様の長期政権であるエルドアン政権は経済成長が好調なうちは内外に良い顔をしてきたが、経済成長が頭打ちになり、強権的姿勢への批判が噴出すると暴政に転じた。トルコの指導者としては異例の少数民族クルド人との和解の取り組みも一方的に打ち切り、2015年後半にはクルド勢力との間で内戦状態に陥った。翌年、クルド勢力との内戦に一旦の終わりが見えると、国民の不満を外にそらすかのように各地へ介入を始める。

シリアへの越境攻撃を手始めに、イラク領内での本格的な軍事行動、東地中海でのガス田開発強行、リビアへの介入…この流れの中にナゴルノ・カラバフへの介入もある。

そして、アゼルバイジャンはトルコ系国家ということもあり、ナゴルノ・カラバフの奪還には”トルコ人による領土回復”という物語も成立する。エルドアンの与党、公正発展党(AKP)は、トルコ人至上主義政党、民族主義行動党(MHP)と連立を組んでおり、トルコ系民族の征服譚は彼らを満足させるのに十分なネタとなる。

アゼルバイジャンは事実上の独裁国家であり、その指導者をたぶらかすことなどトルコには朝飯前のことだ。

アゼルバイジャンの大統領アリエフは親も大統領の二世政治家である。そして、その一家は、国民が貧困に喘ぐなかで、多くの企業を手中に収め、隠し財産の規模は計り知れない。アリエフが考えることは自らとその家族による支配が1日でも長く続くことと、自らの腐敗が白日の下に晒されないことだけである。

長年の領土問題を一挙に解決する大統領という虚像は、国民を欺くうえでこの上ない。国を準戦時体制に置くことで、様々な規制も正当化される。それで、エルドアンの膨張主義に便乗しているのである。

国連総会の演説でエルドアンが「ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンの領土であり、それ以外の選択肢はない」と述べると、アリエフは礼を言いにエルドアンを訪問した。

 

その様はまるで、オスマン帝国時代における地方のエミールによるスルタンへの謁見だ。

アリエフはまた、一国の元首にあるまじき幼稚な行動が目立つ人物でもある。CSTOの会合ではアルメニア首相パシニャンを煽り、口論に発展。プーチンが両者を諫める一幕もあった。前回の戦争終了後もガッツポーズで勝利宣言し、今回も軍服に身を包み同様のジェスチャーを用いアルメニア側を挑発した。

https://twitter.com/TheocharousH/status/1704360598560022653

こうした軽薄さ、軽率さも安易に戦争という非常手段をとる要因になっているとみられる。

さらに、アゼルバイジャン反体制派のブロガーは、アリエフ一家がアゼルバイジャン軍の兵士の臓器を闇市場に流していると告発する。直近では開戦前の今月1日、アルメニア側との小競り合いで負傷した兵士が病院に搬送され、使える臓器を全て抜き取られ遺族の元に返されたということである。

真相はともかくとして、アゼルバイジャンは臓器売買大国として有名だ。アゼルバイジャンメディアでさえ、国内の臓器売買が増えていると報じるほどである。兵士が死ぬほどアリエフらが潤う構造が存在するという疑惑は濃厚だ。

アルメニア人も、アゼルバイジャンがトルコの走狗に過ぎないことを承知している。筆者は、2020年の第二次戦争勃発前にアルメニア並びにナゴルノ・カラバフを訪れた。アルメニア人からは反トルコ発言は聞かれたが、アゼルバイジャンに言及することはあまりなかった。

アルメニア本土とナゴルノ・カラバフをつなぐチェックポイントには、アゼルバイジャンではなく「トルコ製品持ち込み禁止」を示すステッカーが張られていた。

「トルコ製品持ち込み禁止」を示すステッカー
筆者撮影(2018年)

戦争は今後も続く

一部で抵抗する動きがあるものの、アルメニア側はアルツァフ(ナゴルノ・カラバフ)自衛軍の武装解除で停戦を受け入れた。ただ、プーチン然り独裁者が血を欲することに限りはない。今後の展開はすでに見えている。

停戦がこのまま成立した場合、アゼルバイジャンは丸腰になったナゴルノ・カラバフ各地に軍部隊を展開し、アルメニア人の脱出を促す。そして、ナゴルノ・カラバフ全土に”秩序を回復”した後、アルメニア本土へ侵攻を開始するのだ。

もう一つは、一部の武装解除に抵抗する自衛軍部隊を口実に戦闘を再開するシナリオだ。これも最終的な結果は同じである。

実際、アリエフはこれまで度々、「西アゼルバイジャン」なる珍妙な造語を口にしてきた。これは、アルメニア領全土を指している。アルメニアの首都エレバンは「歴史的にアゼルバイジャンの領土」とも放言した。

パシニャンは21日、「停戦はアゼルバイジャンによる軍事行動の終わりを意味しない」と述べた。ナゴルノ・カラバフ問題で時間を稼ぎ、アゼルバイジャンやその主人トルコが手を出せない安全保障環境の構築を目指す。今月11日からは、これまででは考えられないアメリカ軍との合同軍事演習が実施された。プーチンが醜態をさらし続ける限り、ロシア離れは加速するだろう。

もしくは、全く別の場所で戦争がはじまり、アルメニアが窮地を救われる可能性もある。

アゼルバイジャンは最近、戦争勃発が囁かれるほどイランとの緊張が高まっている。イランには2つの「アゼルバイジャン州」があり、アゼルバイジャンの領土的野心には敏感だ。アルメニアの友邦で、インドを加え「新3極」を形成する。イランもトルコ同様の経済的苦境に加え、”へジャブデモ”が続いている。こちらの独裁者にも戦争を欲する事情がある。

独裁国家同士の衝突で助かる民主主義国家があるとすれば、何とも皮肉なことだ。

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Sun, 24 Sep 2023 21:45:41 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:45:41 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html https://agora-web.jp/archives/230923005208.html
https://agora-web.jp/archives/230923012921.html 江戸の粋を気軽に楽しめる屋形船で暑さを忘れてみてはいかが? https://agora-web.jp/archives/230923012921.html 出口里佐です。

本日は江戸情緒あふれる屋形船で味わった、グルメのご紹介です。

訪れたのは、先週初めですが、ベルトラに予約をしたのは8月。とても人気で8月中は無理、9月の予約は取れたものの、台風が来たらどうしようとやや不安でしたが、当日はお天気に恵まれてラッキーでした。

屋形船は、船着場まで自力で行くのが普通と思っていましたが、たまたまネットで見つけたこのツアーは、東京駅丸の内南口のはとバス乗り場が集合、解散場所で、便利でした。

集合時刻は17時20分。予約時にクレジットカードで決済しているので、あとは10分前に発表されるバス停ナンバーを営業所で確認してバス停に向かい、そこでバウチャーをガイドさんに提示、指定席の番号を教えてもらって着席です。幸運なことに、私と友人は最前列で、目の前の景色も楽しむことが出来ました。

集合場所の東京駅丸の内南口、はとバス乗り場。

東京に住んでいると、はとバスは乗る機会は無く、初めての経験。バスが銀座を過ぎ、だんだんと日が暮れて来て、ライトアップされた永代橋を通り過ぎる頃、ふと見た窓の外に隅田川がキラキラと見えてくると、もう少しであそこを船で通るんだ!と期待が膨らみます。思わず、スマホでパチリ。

はとバスから見えたスカイツリー。17時30分頃。

真後ろの席からは賑やかな中国語も聞こえて来ました。

今回の屋形船の食事は、飲み物一本付きで、瓶ビールまたはペットボトルのお茶が選べました。ガイドさんがバスの中で、それぞれの人数を挙手で確認、船着場に到着すると、各自で船の入り口で飲み物をピックアップします。

門前仲町の乗船場入り口看板

また靴を脱いで乗船するので、スタッフの方が靴を入れるビニール袋を渡してくれます。ビニール袋にいれた靴は、掘りごたつ式テーブルの足元にキープ。

席は指定席でした。友人と眺めをそれぞれ楽しめる様に、時間が半分たったら、席を交換しました。

冷房が効いているので、窓は閉めていました。なので、外の景色を写真に撮ろうとすると、ガラスに映り込んで、今ひとつ。写真を撮る時だけ少し窓を開けても良いですよと、案内があったので、途中の景色は、ささっと短時間で撮りました。

隅田川を下って、お台場まで行き、少し停泊して、また戻って来るのが屋形船のルート。お台場ではデッキに登り、写真を思う存分に撮る時間があり、そこが折り返し地点です。

屋形船の指定席に着席すると、既に、お刺身、ローストビーフ、漬物など、冷たいお料理は目の前に並んでいます。飲み物をグラスに注いで、屋形船の女将さんの音頭で全員で乾杯!早速お料理を食べ始めます。

最初は冷たいお料理のお刺身とローストビーフ、枝豆、漬物

ローストビーフに添えられたジュレは、フォンドボーです、と聞こえた⁈気がします。この屋形船の女将さんの話し方が、明るくて、とても歯切れが良く、江戸っ子イメージそのものでした。淡谷のり子に似てるって、言われませんか?と帰る時に他のお客さんが聞いていました。

冷たいお料理を食べていると、揚げたての天ぷらが次々と運ばれて来ました。お刺身は長い時間出しておかないので早めに食べてくださいと案内があり、優先して食べますが、しかし揚げたての天ぷらも食べたいという誘惑…。結局、交互に食べました。

きす、穴子、エビなど、揚げたての天ぷら、最高でした。特にイカは大きいのに、柔らかで食べやすかったのは、包丁を丁寧に細かくいれているからでしょうね、と友人と話していました。野菜はズッキーニがありました。

揚げたての天ぷら。右がとても柔らかで食べやすかったイカ。

ズッキーニ

天ぷらを食べていると、船の窓越しにライトアップされた橋や、高層マンション、スカイツリーや、東京タワーも見えて来ました。

映り込みがあるけど、橋はライトアップされて綺麗。

天ぷらを食べ終わったあたりで、2つのグループに分かれて、デッキに案内されました。デッキには用意されたスリッパで上がります。お台場の真ん中なので、近くにレインボーブリッジ、反対側にきらびやかな、ホテルや商業施設が見えます。クリスマスツリーの様なかたちの、キラキラしたツリーも見えました。やっと落ち着いて、写真を撮ることが出来ました!

デッキからのレインボーブリッジ

デッキからのフジテレビ、ホテルなど。お台場の真ん中にいるのが分かります。

帰りは、はとバスのガイドさんの、晴海埠頭や晴海フラッグの説明を聞きつつ、窓からの景色を見ながら、〆のご飯とデザートの時間です。ご飯茶碗に少なめのご飯と、温かいアサリのすまし汁が運ばれてきました。この屋形船の、名物だそうです。

最初にご飯をそのまま食べて、すまし汁も飲んでみて、その後、ご飯にすまし汁をかけて、お茶漬けのようにして食べてみてください、ということでしたので、その通りに。アサリの出汁が効いて、美味しかったです。

デザートは、メロンと大きなブドウ。

この屋形船は、北斎という名前がついていて、お料理の下に敷かれていた、ランチョンマット的な紙には、北斎の絵。そのほか、船内の色々な場所に北斎の絵をアレンジしたものが展示されていて、江戸情緒を感じます。

お料理の下に敷かれていたシート

乗船人員132名までで、国内最大級だそう。掘りごたつ式なので、疲れません。トイレは4カ所で、女子トイレはベビーベッド付き。

私は、ベルトラというオプショナルツアーのサイトから予約(12,800円税込)したので、東京駅丸の内南口からはとバスで乗船場まで行きましたが、屋形船深川富士見のサイトから予約する場合(11,000円税込から)は乗船場までは直接アクセスが必要です。

最後に女将さんの音頭で、ヨーっと、三三七拍子で皆んなで、手拍子をしたのですが、その後のご挨拶のなかで、「お客さんは、どこからいらっしゃいましたか?」と皆さんに聞いていました。国内は、遠いところでは沖縄という声が、海外は中国とイスラエルから、私は、自由が丘からと近くで少し申し訳ない気持ちでした。目黒区からですと言う方々もいらしたので、はとバスでも私達のように、東京の人々も参加していたようです。

3時間ちょっとの旅ですが、近場でこんなに満足できる場所はなかなかありません。はとバスのガイドさんは、桜の時期の屋形船も絶景が楽しめますよとおっしゃっていたので、また参加してみたようと思います。

以前、屋形船に乗ったのは、会社勤めしていた頃で、上司や気を遣う部署の同僚と一緒で、苦手なカラオケがあったり、あまり楽しめなかった記憶があります。

以前は貸切だけで、気軽に参加できる乗合プランが無かった気がします。今回は、美味しいものが好きな友人と2人で参加でしたので、とてもリラックスして景色もお料理も味わうことができました。乗合プランは、1名からでも参加できるそうです。

ぜひ、気の合うかたと参加してみてください。接待の場合も、すこし目先が変わっていて、海外からの方も喜ばれるかもしれませんね。

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Sun, 24 Sep 2023 21:40:16 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:40:16 +0000 https://agora-web.jp/archives/230915210953.html https://agora-web.jp/archives/230916074513.html https://agora-web.jp/archives/230914063159.html https://agora-web.jp/archives/230912082918.html https://agora-web.jp/archives/230910111626.html
https://agora-web.jp/archives/230924142025.html 日中の「処理水対立」に関する朝日記事に賛同する https://agora-web.jp/archives/230924142025.html

masterSergeant/iStock

23日付け朝日デジタルに「日中、勝者なき「外交戦」 処理水対立の先に、日本に求められること」という北京駐在斎藤徳彦記者のコラムが載っている。

日中、勝者なき「外交戦」 処理水対立の先に、日本に求められること

この問題について僕が感じていることを二つ挙げると、

1.中国の強い反発には「官製」成分以上に「草の根」成分が多く含まれている印象がある。

事態を科学的に理解しているエリート層の間でも、予定していた訪日を取りやめる動きがかなりある。「こんなムードの中で日本に行けば、感情的になっている周囲や世間から後ろ指を指される」のを嫌がってのことだ。電凸動画だって、世間が無関心ならPVは稼げない。お上が煽ったから世論に火が点いたのか、世論のガス圧の高まりを見てお上が迎合しているのかは、鶏と卵みたいな話で、どちらとも確言できない気がする。

2.もう一つは、問題解決のために欠けているのは、双方のトップリーダーのコミットメントとリーダーシップだということだ。

この問題をめぐり、日本の外交側は「中国が科学的な対話に応じようとしない」と批判してきた。中国側にも言い分がある。「韓国のように、福島で日本の案内通りに視察をして終わり、というわけにはいかない。『科学的』を簡単に使いすぎていないか」(中国外交筋)

対話にせよ現地視察にせよ、中国で担当するのは原子力安全を司る役所であり役人だろうが、彼らは原子力安全の常識と反発する国民感情の板挟みになることが避けられない。「なんでこんな損な役回りをしないといけない訳?まっぴらごめんだわ」ってなもんだ。

嫌がる彼らを舞台にあげるには、トップの「行け」「やれ」の指示が必要だ。習近平にそう指示させるには、中国の面子が立つように相応のお膳立てをする必要がある。対話にせよ視察にせよ、「既にIAEAベースの場が用意してある」では済まない。

「中国にそこまでしてやる必要はない」という意見もあるだろうが、外交的観点だけでなく、ただでさえ不振の続く漁業者が困っている問題を解決するために汗をかくことも政治の役割だ。この記者も同じ考えではないか。


編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2023年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。

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Sun, 24 Sep 2023 21:35:24 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:35:24 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html
https://agora-web.jp/archives/230924005436.html 台湾が「防災の日」に「国家」を冠する意味 https://agora-web.jp/archives/230924005436.html 高雄で迎えた9月21日の朝、突如スマホがけたたましく鳴り、警戒音と共に女性が中国語で何かを繰り返し喋っている。「中国軍の状況が異常」との現地紙報道もあり一瞬身構えたが、どうやら何かの演習と判り胸をなで下ろす。

調べると9月21日は台湾の「国家防災の日」、9時21分に「強震警報システム」の警報を鳴らすとある。日本の「防災の日」も9月1日だから、9月は日本でも台湾でも「防災の月」ということになる。

防災訓練を視察する蔡英文総統 総統府HPより

99年9月21日午前1時47分に起きた南投県集集鎮を震源地とするマグニチュード7.3の大地震では、2,500人に上る犠牲者が出た。総統府は翌年、「防災の知識や意識を生活に取り入れる」目的で9月21日を「国家防災の日」とした。

蔡英文総統はこの日、朝から国立新竹特別支援学校を訪れて「民国112年度 国家防災の日-各級学校と幼稚園の地震避難訓練」を視察、警報が鳴ると生徒に安全対策を指導した。

次に新竹市内で行われた防災イベントに出席した総統は、「国家レベルの災害医療救護隊」の訓練や救援活動、民間団体の緊急対応チームによる訓練などを視察、各県市や国際救援隊のチームそれぞれのブースを訪れて、隊員らを労った。

今年の訓練では、海外19ヵ国との「国際協力と訓練枠組み」を初めて取り入れた。国内の救助能力の検証だけでなく、国家間の災害救援に備えて、台本なしで状況に対応する能力を強化する新しい「国土安全保障演習評価プログラム」だ。

加えて、「ギフテッド」のオードリー・タンがデジタル大臣を務める、IT先進国・電子立国の台湾らしく、ドローンを使ってリアルタイムでライブ画像を送信し、3Dモデリングを作成するなどの最新技術を駆使した訓練も行われた。

新竹から台南に移動した総統は、中華民国軍、内政部空中勤務総隊(ヘリコプター隊)、内政部消防署、各地方自治体のレスキュー隊、そして民間防災団体が一体となって救助訓練を行う「大規模震災消防救災動員演練」を視察した。

日本の「防災の日」9月1日も関東大震災が起きた日だ。ちょうど百年前のその日昼時、マグニチュード7.9の大地震が南関東を揺らした。10万5千人に上る死者・行方不明者が出た。だが、日台の「防災の日」制定のタイミングはかなり違っている。

台湾の「国家防災の日」制定は大地震の翌年だったが、日本の「防災の日」は、大震災から37年経った60年6月に制定された。東京消防庁「消防雑学事典」の「防災の日と二百十日」は、その辺りの経緯をこう書いている。

<要旨>

暦の上で9月1日は「二百十日」、ちょうど台風シーズンを迎える時期で、59年9月26日の「伊勢湾台風」では、全半壊・流失家屋約15万4千戸、浸水家屋約36万4千戸、死者・行方不明5.1千人、負傷者3万9千人という戦後最大の被害を出した。これが契機となり、翌60年に地震や風水害等に対する心構えを育成するため「防災の日」が創設された。

雑学事典らしく豆知識も載っている。(以下、太字は筆者)

「防災」とはどんな言葉の意味を持っているのでしょうか。広辞苑には、「災害を防止すること」と簡記されていますが、災害対策基本法では、「災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、及び災害の復旧を図ることをいう」(第二条第二号)と定義しています。

私事にわたるが筆者も昨年4月から1年間、輪番で149戸が入居するマンションの「副理事長」に就き、くじ引きで「防火防災責任者」を当てた。「責任者」になるには講習を丸2日受け、テスト30問に合格して「修了証」をもらう必要がある。

入居する数百人のために是が非でもテストに合格せねばと、約200人と共に大教室風の会場で講習に臨む。が、マイクの音響が悪い上、マスクの講師は早口まくし立て、耳の遠い筆者は何を言っているのかさっぱりだ。

しばらく我慢したが、堪らず手を挙げ「もう少しはっきり・ゆっくり話して下さい」とお願いすること再度、そうこうしているうち午前の講義が終わる。午後もこの調子では敵わんとばかり、教壇の講師にこう詰め寄った。

そちらは毎日のことかも知れないが、こちらは一生に一度。地区の防火防災責任者の使命を全うするために来ている。明日はテストがあるのでしょう? 座談ではなくて大教室なのだから、お願いしたようにはっきり・ゆっくり話してもらいたい。

するとほぼ同輩らしき講師は、「実は私も今日が初めてなんです。午後の講師は別の方です」と平謝りの体。「テストは全員必ず受かるので安心して下さい」と付け加えるではないか。不審に思いながらも、以後その講師の授業はないまま、二日目の午後を迎えた。

テキストを示しては「ここ大事ですよ」と講師が頻りに言う。「ここがテストに出る」の符丁と気付き慌てて下線を引く。そして全員が合格した。無事に「責任者」の任期は過ぎたが、斯くも安直な「修了証」で良いのだろうか。

閑話休題。この台湾大地震は後にさまざま日本と関係した。日本政府は地震発生直後から警察、消防、海上保安庁に応援要員の派遣要請(但し、機微な自衛隊を除く)、正午には各員羽田空港に集合待機し、その日の午後と夕方台湾に最初の派遣隊が一番乗りした。

被災現場に到着すると、オレンジ色の制服を着た救助隊は、靴を履いた警察犬とハイテク機器を使い、南投県忠寮鎮などの倒壊した建物を一軒一軒回り、生存者の捜索を行った。総勢は世界最多の145名に及んだ。

台湾赤十字社のサイトによると、日本赤十字社に寄せられた義援金は約12億2千万元(今のレートで約56億円)に上り、各国赤十字社の合計16 億元の約8割、赤十字以外の寄付金を含めた総額でも、日本の寄付は約6割を占めたという。

これには情に篤い台湾から過分なお返しがあった。

台中日本人学校はこの大地震で校舎が甚大な被害を受け、近隣の幼稚園を借りて授業をする事態に陥った。10月7日に同校を訪れた李登輝総統は、校長が土地探しに悩んでいることを知り、翌朝には大雅区の候補地が示され、斯くて新校舎は再建された(拙稿「ここにも日台の絆」)。

東日本大震災でも、200億円を超える義援金などの絶大な支援を台湾から頂戴したことは記憶に新しい。この21年3月11日、蔡総統は「十年が経ちましたが、その間日台一緒に様々な困難を乗り越え、その絆はますます強まっていると思います」とツイートした。

「強震警報システム」の警報からあちこち話が飛んだが、結論として、台湾の「国家防災の日」の訓練内容を知るにつけ、日本の「防災の日」の訓練とは異なる「国防」の要素がそこに取り入れられていると知れる。だから「国家」を冠しているのかも知れぬ。

日台が共に「防災の日」を制定し、それが同じ9月なのは偶然でない。一義的には9月に大地震が起きたことだが、その時期に発生する台風の通り道にある上、プレートの衝突で地震が多いという自然要件と、隣国が独裁国家であるという人工要件が共通するからだ。

災害対策基本法が謳うとおり「防災」の要諦は「災害を未然に防止」することだ。「国防」に譬えれば、攻撃を「未然に防止」する「抑止力」-自らの軍事力と同盟関係(日米韓やクアッド)-の強化に加え、「いざ」に備える国民の「心構え」が肝心ということ。

台湾の武力統一を口にして憚らない、海峡120余kmを挟んだ独裁国家から引っ越せない台湾は、自然災害のみならず、不法な人工災害への備えも疎かにできない。道理で「警報」の声にも切迫感があった。日本の置かれた状況も、実は大差がない。

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Sun, 24 Sep 2023 21:30:33 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:30:33 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html
https://agora-web.jp/archives/230924140401.html ライドシェアは危険!?ウソを垂れ流すタクシー利権とマスコミ https://agora-web.jp/archives/230924140401.html NPO法人万年野党が運営する情報検証研究所のYouTubeチャンネル「情報検証研究所【政策カフェ】」。

【目次】(2023年9月22日)

  • ライドシェアは危険!? いや、そんなことないぞ!! ウソを垂れ流すタクシー利権とマスコミ
  • 何でもアリな自民党 矢田わか子氏が首相補佐官に
  • 円安・ガソリン価格 etc.

【出演】
岸 博幸 慶應義塾大学教授
原 英史 (株)政策工房代表取締役

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Sun, 24 Sep 2023 21:25:00 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:25:00 +0000 https://agora-web.jp/archives/230924141502.html https://agora-web.jp/archives/230923235239.html https://agora-web.jp/archives/230923080914.html https://agora-web.jp/archives/230923003327.html https://agora-web.jp/archives/230922125455.html
https://agora-web.jp/archives/230923080216.html ジャニーズ事件で警察・検察を叩かぬメディアや識者ら https://agora-web.jp/archives/230923080216.html 司法の怠慢を問わない内ゲバ論争

ジャニー喜多川元社長による性加害事件を巡り、ネット、ワイドショーばかりでなく、街のうわさ話でも連日、大論争が続いています。広告スポンサー企業の社長、財界人まで巻き込み、ピント外れの意見、叩きやすいところを叩く類の主張もあふれ、とどまるところを知りません。

ジャニーズ騒動で最も欠けているのが4、50年近くにわたって広く知られ、数百人の未成年の被害者がおり、告発本も複数出版され、04年には最高裁が被害者に対する賠償金の支払いを認める判決を下したのに、動きがなかったことに対する批判です。

警察、検察は捜査に乗りださなかった。今年7月に施行された改正刑法でやっと、未成年男子を含め、性加害に対する処罰が厳しくなりました。早く措置しておけば、被害をもっと少なくすることができた。司法の対応が遅すぎるのです。そのことに対する政府側の見解も聞かれない。

ジャニーズ事件に多くの論点、視点があり、それぞれ掘り下げなければならない問題です。不思議に思うのは、司法の怠慢を徹底的に叩く主張が希薄すぎるということです。叩きやすいところを叩く、感情的、感覚的に分かりやすいところだけ叩くという、低レベルのお馴染みの流れです。

「性加害者喜多川元社長が死去(21年、87歳)しており、犯罪を立証しても不起訴になるだけ」、「性犯罪は被害者の申告が必要なのに、ほとんどがジャニーズ事務所の最高権力者に背けず、泣き寝入りをせざるを得なかった」、「犯罪は50年も前から続き、多くが時効になっている」。だから事件化できず、関係者はうろうろしているだけです。

さらに「日本の青少年保護法はゆるゆるで、ごく最近まで被害者が男性なので深刻に受け取られていなかった」、「テレビ局はジャニーズ・タレントで視聴率を稼げた。親会社の新聞も見て見ぬふりを続けた」、「企業もCMに彼らを多用し続けた」。ほかにもいろいろあるでしょう。

利害関係が複雑に絡み、多様な角度から論じなければならないのは、事実としても、司法の怠慢をつく声をあまり聞かない。松野官房長官も「性加害はあってはならないこと」と記者会見で発言するなど、何を今さらという感じでした。

「ジャニーズ・タレントも被害者であり、彼らの活躍の場を奪うのは酷だ」(経団連会長)。そういう面もあるでしょう。反面、「彼らを起用し続けることは、国際的に非難のもとになる。日本企業は断固として毅然たる態度を示さなければならない」(経済同友会会長)。

「そういう経済界の企業がジャニーズをCMに使ってきたではないか。われわれは知らなかった。われわれも被害者だと、まず言わねば」(テレビのコメンテーター、読売新聞編集委員)。とにかく論点が拡散しすぎる。

何十年もふたをされていた問題が放置できなくなったのは、英BBC放送の特集番組とされ、「さすがに英国のジャーナリズムだ」と。そんなことはありません。「BBCの人気司会者が450人もの子どもに性的虐待をしていた疑いがあり、ロンドン警視庁が動いた」という国です。だからジャニーズ問題への感度が鋭かったのでしょう。

遅くともこの時点で、日本の当局は動かなければいけなかった。欧州ではなんども、カトリック教会の神父が児童、神学生への性的虐待が大問題になっています。セクハラばかりでなく、男女を含めて性的虐待を真剣に考えることは日本の警察、検察、児童福祉関係者に必要でした。CM企業、メディア関係者、識者らの発言のレベルが低すぎます。

法律は時代に合わなくなれば、改正するのが当然です。4、50年前はともかく、10、20年前にでも、性的虐待、性加害に対する法制を厳しくしておくべきでした。故人になっていない喜多川社長、経営幹部を逮捕、起訴できたでしょう。「当時の法制では、ジャニーズ問題を取り締まれなかった」と司法当局は弁解せず、「もっと早く法改正をすべきでした」というべきなのです。

「本人の被害申告」にいつても、だれかが言い出せば、次々に名乗りを上げだすでしょう。今回がそうでしょう。ジャニーズタレントが一人、勇気をもって言い出せば、同調する人がでてきます。今や「被害者の会」ができているではありませんか。旧法の規定でも、時効になっていない被害者も現在、おられることでしょう。司法当局は動くべきです。

新聞社が社説あたりで、そういう主張をしているのでしょうか。朝日新聞社説は「未成年への未曾有の人権侵害が間近で起きていたのに、結果的に見過してきたメディアの動きはまだ鈍い」(9日)、「ジャニーズ事務所が隠蔽体質を強めて被害を拡大し続けたのは、メディアが沈黙し、適切な批判をしなかったからだ、と調査報告書で指摘された。深く反省したい」(8月31日)と、そこまでは言います。

その朝日新聞は、週刊朝日(6月に休刊)は表紙の写真にジャニーズ・タレントと多用してきました。今年になって、人物を表紙に使った18号中、なんとジャニーズは14号分も数えるとか。ジャニーズを表紙に使うと売り上げが増える。記事の内容ではなく、表紙が転売市場でカネになる。

朝日新聞社

休刊の理由は出版不況によるとされています。いや、出版不況ばかりでなく、今回の事件を予感し、休刊してしまったような気もします。今頃、間に合ってよかったとほっとしているかもしれない。ともかく、自らもジャニーズを多用した理由を明らかにすべきです。

最後に、「メディアの責任」の問題も複雑でしょう。現場の制作担当者レベルに「ジャニーズの起用にケジメをつけよう」と決断した人物がいたとしても、そうしたら恐らく左遷されるに違いない。

ジャニーズのように、長年にわたり、巨額の利益を得ることができたプロジェクトの扱いは経営トップが決断し、組織としての決定にしないと動けないのです。そういう意味では、この問題はトップに上がっていたに違いなく、影響が大きすぎるとして、トップが黙認していたとしか考えられない。だからこそ、司法当局、政府がもっと早く手を打っておかなければならなかった問題なのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2023年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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Sun, 24 Sep 2023 21:20:13 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:20:13 +0000 https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230923014807.html https://agora-web.jp/archives/230923004920.html https://agora-web.jp/archives/230922204404.html https://agora-web.jp/archives/230920091718.html
https://agora-web.jp/archives/230923235239.html 130万円の壁崩壊!但し3年目に何かが起こる・・・? https://agora-web.jp/archives/230923235239.html 厚生労働省の新たな方針を解説します。

【目次】

  • 年収の壁とは(0:00
  • 誰も「130万円」の壁をこえてはならぬ(1:14
  • 年収130万円超えても2年連続まで扶養OK について(4:48
  • 3年目の要注意点(6:49
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Sun, 24 Sep 2023 21:10:35 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:10:35 +0000 https://agora-web.jp/archives/230924141502.html https://agora-web.jp/archives/230924140401.html https://agora-web.jp/archives/230923080914.html https://agora-web.jp/archives/230923003327.html https://agora-web.jp/archives/230922125455.html
https://agora-web.jp/archives/230923014807.html ピンチを乗り切る「脳内BGMで情熱大陸」という凄技 https://agora-web.jp/archives/230923014807.html 人生のピンチに遭遇した時、私は2つのメンタルコントロールで乗り切ることにしています。

1つは、もうこれ以上悪くなる事は無いと自分を鼓舞することです。

ピンチで精神的に追い込まれるのは、底が見えない恐怖があることが要因の1つだからです。

例えどん底にいたとしても、ベクトルが上向きであると思えれば、後は良くなっていくしかないと勇気づけられます。

そして、もう1つの方法は、目の前にあるピンチは神様に試されていると考えること。

大切な成長の機会を与えられていると前向きにとらえるようにするのです。自分を客観視する方法です。

最近、ピンチを乗り切る別の凄技を友人に教えてもらいました。

それは、「脳内BGM」として情熱大陸のテーマを流すという方法です。

思い通りに行かなくて、仕事やプライベートに行き詰まったら、情熱大陸のテーマ曲を脳内でBGMとして流す。そして主人公になった気分で「情熱大陸だったら格好の撮影ポイント」などと考える。

自分をドキュメンタリーの主人公と思い込むことで、番組の展開上ありがちなピンチから脱出するV字回復の自分がイメージでき、気分がむしろ上がってくるというのです。

ピンチに陥った時、やってはいけないのは悲観的になることです。

そして、自分を追い込まないためには、自分と自分を客観視する自分という2つの視点を持つことが役に立ちます。

主人公を演じている自分を離れたところから見ている。そんな感覚を持つことで、ピンチで冷静に対応できるようになるのです。

「脳内BGM」は確かに良い方法です。でも、これからの自分の人生にとってベストなのは、もうそれを試すようなピンチがやって来ないことです。

情熱大陸 毎日放送より


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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Sun, 24 Sep 2023 21:00:06 +0000 Sun, 24 Sep 2023 21:00:06 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html
https://agora-web.jp/archives/230923014720.html 仕事の近代化、経営者と顧客に温度差も:「口先商売」への社会構造の変化 https://agora-web.jp/archives/230923014720.html 日本にお住いの方は当たり前かもしれませんが、たまに来る私には新鮮なこともあります。

池袋のこぎれいな洋食レストランで席に座ったら自分のスマホでQRコードを読み取って注文してくれ、とあります。バイトの店員は水だけ持ってくるだけ。注文の細かい設定をこなし、確定ボタンを押してしばらくすると注文したものが運ばれます。支払いはテーブルのお会計の紙を店の出口のバーコードリーダーに読み込ませ、現金投入機に入れておしまい。

maroke/iStock

カナダでもこのような店に行ったことはあり、このような傾向は世界で強まるのだろうと思いますが、何か違うのです。無味乾燥、これが一番しっくりきます。

同じ池袋のある超人気洋食店。開店とともに行かないと待たされるその店の良さは活気です。厨房の声が聞こえ、元気のよい店員が忙しそうに店を動き回り、会計も客が支払うお金を用意してくるから素早く瞬時に終わります。大きな声で「ありがとうございました」と言われれば「おいしかったね」と大満足なのです。

昨夜、初めて来たある地方都市で夜、一人で寿司屋に入ったところ、店主が気さくな人でいろいろな話をしてくれました。「これ、おいしいですねぇ」といえば「それはね…」とうんちくや由来の話もしてくれます。すっかりいい気分になってちょっと飲み過ぎで散財したけれど「余は満足じゃ」で気持ちよく帰りました。

寿司屋のオヤジは営業マンなんです。カウンターの向こうでいろいろ囁くわけです。「今日のこれは最高にうまいよ」なんて言われると「いりません」とは言えなくなるのです。若い人には「うぜえ度」100%です。

会社がIT化を進める理由は2つ。1つは人材が圧倒的に不足していること、もう一つはコスト削減です。外食産業では店主や店員の「接待」を受けられる「高級店」と機械対応の「一般店」の完全二極化が今後、より明白に進むのだろうと思います。

例えば私はコンビニやスーパーなどでは店員は技術の進化に伴い店員がいなくなっても何ら支障はありません。ユニクロで買い物をするのに商品のことで店員をつかまえることはあっても会計は瞬時で精算できるあの完全自動化の仕組みは素晴らしいと思います。

日経には「『AI失業』米国で現実に 1~8月4000人、テックや通信」とあり、世界中、様々な分野でテクノロジーに雇用が淘汰されつつあります。アメリカではテック業界の人材削減は1-2年前から断続的に行われており、大手は大規模なリストラを継続的に行っています。若い人が職探しで一番多いテック系業界では先方がお断り状態なのです。飲食店、建設業、運輸業、教員、看護介護士のように人材不足の業種に対してIT企業のように雇用を減らすところもあり、その共通点は職を探す者の門戸がより狭くなっているということでしょう。いわゆるミスマッチです。

我々が若い頃はバイトで3Kは当たり前でした。私の初バイトは飛び込みの訪問セールスで2日目でノルマ達成できず、クビ。あとは警備員とかレストランでバイトをしましたが、それがごく普通だったと思います。ところが今は雇われる方の取捨選択が鮮明になっているし、雇う方も気を遣わねばならない法律やコンプライアンス、社会道徳の縛りが増え、「面倒くさい」時代になったのです。更に「雇用主は被雇用者の子守り役」になっているところもあり「もう、やりきれない」、これが実情でしょう。

アメリカで自動車大手3社のストライキが行われていますが、経営側は内心「早く全面ロボット化したいよな」と思っていることでしょう。これは経営者と従業員の温度差ですが、冒頭に示したケースのように経営者と顧客の温度差も否定できないのです。

労働を通じて社会を支えるという発想と社会バランスが欠如し、大きな問題になっているのが中国と韓国です。両国の若年層の失業率が高いのは若年層が高度な教育を受けた結果、汗をかく仕事をプライドが許さなくなっているのです。つまり仕事はある、だけどそんな仕事はしたくないのです。その上、学卒より院卒と更に高みに向かったら最後、仕事なんてありません。かつてはちやほやされた院卒は今じゃ、頭でっかちで使いずらいだけです。

どれだけAIが進もうが、職はあるので失業しないと言われます。かつての産業革命でもむしろ職は増えたのです。しかし、いま、直面している問題はその切り口ではなく、働く本質であり、「楽して稼げること」で「口先商売」に喜々としている社会構造の変化に私は大きな懸念を感じているのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月24日の記事より転載させていただきました。

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Sun, 24 Sep 2023 03:00:16 +0000 Sun, 24 Sep 2023 03:00:16 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230923074547.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html
https://agora-web.jp/archives/230923014742.html イスラエルとサウジ両国、関係改善へ https://agora-web.jp/archives/230923014742.html 当方は2017年11月26日、「サウジアラビアとイスラエルが急接近」という見出しの記事をこのコラム欄で書いた。あれからほぼ6年が経過したが、両国には本格的な関係改善の動きが始まっている、という外電が流れてきた。

サウジのムハンマド皇太子(2016年) Wikipediaより

サウジの実質的統治者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は20日、米放送局FOXニュースとのインタビューの中で、「わが国とイスラエルは関係正常化への道を進んでいる。両国は日に日に近づいている」と述べた。そして、イスラエルとの合意が実現すれば、「冷戦終結以来、最大の歴史的合意だ」と表現している。

2017年11月段階ではサウジのイスラエル接近の背後にはイランの脅威が大きかった。サウジといえば、イスラム教スンニ派の盟主を自認し、イランはイスラム教シーア派の代表格だ。両国間で「どちらが本当のイスラム教か」といった争いを1300年間、中東・アラブ諸国間で繰り広げてきたライバル関係だ。

イランはシリア内戦では守勢だったアサド政権をロシアと共に支え、反体制派勢力やイスラム過激テロ組織「イスラム国」(IS)を駆逐し、奪われた領土の奪還に成功。イエメンではイスラム教シーア派系反政府武装組織「フーシ派」を支援し、親サウジ政権の打倒を図る一方、モザイク国家と呼ばれ、キリスト教マロン派、スンニ派、シーア派3宗派が共存してきたレバノンでは、イランの軍事支援を受けたシーア派武装組織ヒズボラが躍進してきた。イラクではシーア派主導政府に大きな影響力を行使してきたことは周知の事実だ。

一方、サウジはイランが中東の覇権を奪い、ペルシャ湾から紅海までその勢力圏に入れるのではないか、といった不安が強かった。サウジのムハンマド皇太子は米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューの中でイランへの融和政策の危険性を警告し、イランの精神的指導者ハメネイ師を「中東の新しいヒトラー」と酷評した。

そのサウジは当時、イスラエルに急接近していった。両国の“共通の敵”イランの存在があったからだ。イスラエル軍のガディ・エイゼンコット参謀総長は当時、サウジの通信社Elaphとのインタビューに応じ、「イスラエルはサウジと機密情報を交換する用意がある。両国は多くの共通利益がある」と述べていたほどだ。

しかし、サウジとイスラエル両国の関係改善が遅々として進まない中、サウジは中国の仲介を受けて宿敵イランとの関係正常化に乗り出してきた。両国は今年3月、両国関係の正常化で合意した。一方、中国がサウジとイラン両国の関係正常化の仲介役を演じるなど、中東地域で影響力を拡大してきたことに警戒する米国側はここにきてそのサウジとイスラエルの関係改善の仲介に力を入れ出してきた、というわけだ。

米国はサウジとイスラエル両国の接近について協議が行われていることを認めている。米メディアによると、米国はサウジにイスラエルを承認し、その見返りに米国の安全保障を受け、民間核計画の立ち上げを支援する一方、イスラエルにはパレスチナ人問題の解決を強く要求しているという。

イスラエルのネタニヤフ首相は20日、バイデン米大統領との会談で、「サウジとの歴史的平和は手の届くところにある」と語り、「そのような和平は、まず第一に、アラブ・イスラエル紛争の終結をもたらし、イスラエルとパレスチナ人の間の真の平和に大きく貢献すると信じている」と述べている。

中東でアラブ・イスラム教国に取り囲まれているイスラエルは過去、エジプト(1979年)とヨルダン(1994年)との外交関係しかなかったが、トランプ政権に入って2020年9月15日、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレン、そして同年10月23日、スーダンとの外交関係を樹立。同年12月に入ると、モロッコと国交正常化に合意するなど、アラブ・イスラム諸国との関係を急速に深めていった。サウジとの関係正常化はイスラエルにとって残された最大の外交目標となった。

イスラエルとサウジの間には多くの未解決の問題がある。最大のハードルはやはりパレスチナ問題だ。ムハンマド皇太子はテレビインタビューで、「合意はイスラエルとパレスチナ人の対応に大きく左右される」と強調することを忘れていない。サウジアはパレスチナに対する最大の援助国だ。

ところで、サウジ側の要求であるパレスチナ問題の解決にはイスラエル側の譲歩が不可欠となる。しかし、「史上最も保守的なイスラエル政権」と呼ばれるネタニヤフ現政権にとってそれは容易ではない。ネタニヤフ首相はサウジとの合意を実現するために政権内の右派宗教政党に譲歩を強制できるか否かは不確かだ(「『オスロ合意』30年と関係者の証言」2023年9月13日参考)。

ネタニヤフ首相がサウジとの関係正常化を願うならば、内閣改造を実施し、過激な宗教右派政党に代わって野党との新しい連合に乗り出す道も考えられる。ただし、司法改革法案で国内では大規模な抗議デモが行われている時だけに、ネタニヤフ首相にはそのような政治決断を下す余力があるかは疑わしい。

サウジは現在、イランとも関係正常化を目指しているが、イランの核武装問題が控えている。スンニ派の盟主を自認するサウジはシーア派の代表イランの核武装化は絶対に容認できない。ムハンマド皇太子はインタビューの中で、「イランの核武装は悪い一歩。もしテヘランが核爆弾を手に入れたら、サウジも同じことをしなければならなくなり、地域全体での核軍拡競争をもたらすだろう」と警告を発している。

サウジは現在、イランとの関係正常化だけではなく、イスラエルとの関係樹立を模索している。サウジの外交がここにきて活発化してきた背景には、ムハンマド皇太子を取り巻く政治環境が整ってきたことが挙げられる。

同皇太子はこれまで反体制派ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害問題(2018年10月)で関与を疑われ、西側社会ではペルソナ・ノン・グラータ(招かれざる客)であり、国際外交の世界ではアウトサイダーだった(「『ハッジ』のボイコットを叫ぶ声」2019年8月9日参考)。

しかし、バイデン米政権がトルコのイスタンブールのサウジ総領事部内で起きたカショギ氏殺害事件を重視、人権蹂躙事件として関係者の制裁を実施したが、ムハンマド皇太子をその制裁リストから外した。この結果、同皇太子は外交的孤立を脱出し、国際政治の舞台で積極的に打って出るチャンスが出てきたわけだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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Sun, 24 Sep 2023 02:55:41 +0000 Sun, 24 Sep 2023 02:55:41 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html
https://agora-web.jp/archives/230923235915.html マクドナルドのCMが炎上するポリコレの極まった世界で https://agora-web.jp/archives/230923235915.html こんにちは、音喜多駿(日本維新の会 参議院議員 / 東京都選出)です。

今日は朝イチ~昼過ぎまで古畑まさのり区議とともに、新宿区内を流し遊説しながら町会長や支援者の皆さまに細かくご挨拶。

あいにくの天候となった土曜日の午前だけあって、在宅率が高く、様々なお話を伺うことができました。

実は私、早稲田大学が好きすぎて、卒業後の20代の一時期に西早稲田(一丁目)に3年ほど住んでいた時期がありまして、その時の物件に立ち寄って大家さんにもご挨拶。

当時大学生だった大家さんのご息女からOB訪問を受けたりしていたのですが、そのご息女が赤ちゃんを抱いて在宅していらっしゃって、3世代の皆さまにご挨拶できて感無量でした^^

そりゃあれから10年以上経っているのだから、時代は流れますよね…!

「みんなで応援します!」と熱い激励をいただけてありがたい限り。今日も手持ちの名刺がなくなるほど多くの方からお声がけをいただきました。

地道にコツコツと新宿区・千代田区を歩いて参ります。

明日は党務で出張ですが、25日(月)は街宣をやりますので、お近くの方はぜひお立ち寄りください!

さて、インターネッツ王国ではマクドナルドのCMが大きな話題になっております。米国では「炎上」状態と聞いてびっくりです。

「炎上」した理由は、多様な人種やLGBTなどの属性を持つ方々が登場せず、「正しい家族像」を押し付けているように見えるから、だそうです。

いわゆるポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)問題というやつですね…。

価値観が多様化し、現実社会が分断されるあまりに、広告などの世界では過剰な「配慮」や「統合」を押し付けるという矛盾。

それに疲れた方々は逆にこのマクドナルドのCMを絶賛しているとも聞きます。

「特別じゃない、しあわせな時間。」

という言葉とともに、ありふれたごく普通の家族の一面が描かれることが「普通を押し付けるな!」という反発を生み出してしまう世の中は、やはり窮屈で居心地の悪いものだと私は思います。

多様な社会とは、誰もが自由で快適に生きられる社会ではなく、誰もがちょっとずつ不自由や不愉快を我慢する社会

誰かが考える「普通」が描かれるCMがあってもいい。私はとても良いCMだと思ったし、まんまと帰りにマクドナルドを購入して帰りました。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2023年9月日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。

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Sun, 24 Sep 2023 02:50:14 +0000 Sun, 24 Sep 2023 02:50:14 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230925065611.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html
https://agora-web.jp/archives/230924001007.html 新卒採用で年収710万円提示:もはや時計の針は戻らない? https://agora-web.jp/archives/230924001007.html GMOインターネットグループの採用方法が話題になっています。新卒採用で最初の2年間「年収710万」を提示したものです。

「新卒年収710万円」の衝撃──GMO副社長が語る真意 基準は「総合商社」 ITmedia ビジネスオンライン

日本企業は人財(人材)を買いたたけた今までが異常だったということでしょうか。

新卒採用から給料の底上げ競争が始まるのでしょうか。

AIといった先端技術の人財(人材)確保にはお金に糸目を着けなくなってきているのかもしれません。

年収710万円で海外企業に追いつけるのでしょうか。

一時的な高給より鉄壁の雇用保障のほうがNPV(純現在価値)がまだ高いという指摘も。

日本企業もようやく実力主義に近づいていきます。

人材(人財)が有り余っているとされていた氷河期世代からはこの風景はどのように見えているのでしょうか。

それよりも日本全体としては新卒採用よりも現場を支える人材の確保のほうが急務かもしれません。

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Sun, 24 Sep 2023 02:50:03 +0000 Sun, 24 Sep 2023 02:50:03 +0000 https://agora-web.jp/archives/230926005030.html https://agora-web.jp/archives/230925143958.html https://agora-web.jp/archives/230924233301.html https://agora-web.jp/archives/230922202804.html https://agora-web.jp/archives/230922211424.html
https://agora-web.jp/archives/230923004920.html 都内駅前で無許可フルーツ販売車に突撃取材した結果 https://agora-web.jp/archives/230923004920.html 黒坂岳央です。

「首都圏の駅前で無許可でフルーツを販売しているトラックと販売者の正体は?」というテーマでテレビで解説させてもらった。

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※番組はTVerで視聴が可能。

昨今、都内各所で果物を無許可で路上販売する車の目撃情報がSNSを中心に広がっている。不審な点がいくつもあり、中には「売られているフルーツは盗品なのでは?」という意見も出ている。実際に移動販売車へ突撃して、売られているフルーツの試食や購入をした上で調査したが、結果として噂通り怪しげな点が複数確認された。

盗品の桃が売られている可能性

最大の不審な点は、販売されているフルーツの盗品の可能性についてである。だが最初にお断りしておく。こちらは何の物的証拠も出せないのでまったく断定はできない。あくまで「可能性」の域を出ない。だが、何の根拠もなく疑っているわけでもない。下記に疑わしい理由を取り上げたい。

番組収録があった8月は桃の最盛期で、スーパーなどでは1玉あたり200-400円前後、百貨店や通販での高級品となれば1玉数千円になるものもある。桃は極めてデリケートなフルーツであり、桃から出るエチレンガスが多く柔らかく熟すのが早い。販売する側、栽培する側も取り扱う上では大変気を使う果物なのだ。

だが移動販売車で売られていたのは7玉300円、1玉約43円という異常とも言える低価格である。筆者の経営する会社でも桃の取り扱いをしている。農家や市場から仕入れをしているので分かるのだが、販売して利益を出すことは考えるとこの価格はあまりに現実的ではない。さらに移動販売車は軽トラの準備やガソリン代、販売者の人件費などもかかってくる。販売者に仕入れルートを確認すると、仕入れて小売販売をしているということだったので仕入れ価格はさらに安いということになる。これで持続可能な商売が成り立つのだろうか?

考えられる可能性として、異常に安い価格はあくまで客寄せで、しっかり利益が出る他の商品の販売に繋げて利益を出すという仮説である。たとえば安い桃で客寄せをして、ぶどうやメロンなどで利益を出すというイメージである。だが、数件移動販売車に突撃したがそのような販売形態は見られなかった。

また、こちらはあまり考えたくはない仮説だが、盗品で原価がゼロなので何円でも売ってしまえるというものである。フルーツの大量窃盗が社会問題になっている昨今、どうしてもこちらの可能性が隠顕してしまう。だが証拠はないので断定はできない。フルーツは工業製品と違って簡単にトラッキングができないためだ。

気をつけたいのは農家の人の中にはきちんと許可を取得した上で、まっとうな品質の販売をしているケースもあるという点だ。自分が知るケースでは昔から許可を得て販売していたのに、無許可販売で盗品の疑いが広がったことによって「盗品なんでしょう?」と言われて困っているという話である。都内の移動販売車のすべてが盗品を売っているわけではない点にはくれぐれも気をつけたい。

販売者の不審な点

移動販売車複数に突撃してわかったことは、フルーツについて何も知識がない者が販売しているという事実である。販売者の不審な点が複数確認された。

桃やぶどうの品種や生産地、保存方法など通常生産者やフルーツに詳しい人間なら絶対に答えられないわけがない基本的な質問にも答えに窮する。いや、アルバイトなどの売り子だとしても、当然購入者から受けるであろう質問なので想定される質問への答えを準備して然るべきだろう。何を聞いても分からない、知らない、または回答を出す場合もウソやデタラメが返ってくる。「この桃は福島県産のあかつきか?」と聞いたら「そうだ」と即答するも、箱には山梨県産と書いてある上、ひと目見てあかつきではなかった。

また、管理方法もずさんである。フルーツの箱が積み上げられているが、これはフェイクでただ形式的に積み上げているのだとすぐに分かった。桃の大きさと箱のサイズが不釣り合いな点がおかしい。圧力が加わると痛みやすい桃について理解をしているものなら、箱の中で転がったり積み重ねて圧力がかかってしまうリスクのあるずさんな管理をするとは考えにくいからだ。

そして試食を提供されるも、試食で出された桃と販売される桃はまったくの別物だった。試食用の桃はジューシーで果汁したたるおいしい桃で、見た目にも美しくもしかしたらスーパーなどで調達したものかもしれない。だが、販売されて渡された桃は核割れを起こしており、カットすると中で種の周りの腐敗が始まっている様子が確認できた。農家が核割れを起こした桃を販売するだろうか?

さらに販売車に貼り付けられたフルーツの紹介画像もおかしい。桃やぶどうの紹介がなされているが、他社のホームページからそのまま印刷してきたものを貼っている(画像の中に他社名が印字されている)。品種も見た目も全く異なる。加えて、車に貼られた注意書きが「中国語の漢字」が使われていて、写真の販売者は日本人ではなかった(アジア圏の強い訛りの日本語)。

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筆者撮影

移動販売車の多くは大久保や赤坂で外国人が往来する場所を選んで無許可で販売されており(無許可販売であることは確認済)、買っていくのは日本人ではなく多くは外国人だ。欧米系だけでなく、中国、韓国、東南アジアからの訪日客と思しき人達が次々に移動販売車に吸い込まれていき、中には販売員にチップを支払ってお礼を伝える人もいた。

メディアで無許可移動販売について情報を出しても、訪日外国人はそのことについて知る由もない。移動販売車によっては、訪日外国人をターゲットに積極販売しているように思えた。

移動販売車で売りさばくワケ

2020年11月にたけしのTVタックルという番組に出演した際は、盗品のフルーツをフリマアプリで販売している可能性があるのでは?ということを解説した。過去記事「令和の闇市!? 窃盗フルーツ販売のフリマアプリに規制を」ではそのことについて書いた。これはあくまで仮説に過ぎないが、もしも盗んだフルーツを販売する側に立って考えるなら「移動販売車」という非効率に思える手段を選択する力学はどこにあるのか?それはトラッキングの難しさにあるのではないだろうか?

フリマアプリで盗品が出品されているのは、フルーツに限った話でない。実際、店舗で盗まれたブランド品がフリマアプリに出品されているのを見つけて通報された事件も報告されている。だが、フリマアプリは多くの証拠を残すことになる。入金口座、登録者・発送住所、そして極めつけはIPアドレスである。盗品の写真を出せばその写真も動かぬ証拠である。

インターネットの取引はダークウェブやノーログVPNなどを駆使するなどをしなければ、リアルでの商取引より遥かに多くの足跡が残るものなのだ(そして上記の匿名性を高める活動すらも完全ではない)。

しかし、移動販売車ならどうだろうか? 追跡してわかったことは、滞在時間は極めて短いということである。1時間前後で次々と場所を変えてしまう。目撃情報を得て急行してももはや間に合わないということは何度もあった。販売者も入れ替わる。これでは痕跡は残らない。フルーツを購入した際にレシートか領収書を頼んだが、拒否された。事業者の届けをした上で納税はされているのだろうか?

以上のことからフルーツの駅前移動販売車には数々の不審な点が確認された。すべては仮説の域を出ず、証拠もない。だが論理的に合点がいかない点を積み重ねていくと、どれだけ目を背けようとも解は自ずと導き出されるだろう。

 

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Sat, 23 Sep 2023 22:00:17 +0000 Sat, 23 Sep 2023 22:00:17 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230923074547.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230923080216.html https://agora-web.jp/archives/230923014807.html
https://agora-web.jp/archives/230923154836.html 秀吉がキリシタンを禁止した本当の理由と26聖人の受難 https://agora-web.jp/archives/230923154836.html 「どうする家康」のような大河ドラマでは、朝鮮遠征を批判的に描かないことは許されないから、秀吉は必ず酷く描かれる。NHKは日本政府の検閲は受けてないが、韓国政府の検閲は実質的に受けているのも同然だ。

もうひとつ歯切れが悪いのが、キリシタン禁止である。ここのあたりも、腫れ物にさわるように避けて描かれる。

そこで、秀吉とキリスト教、さらには、そもそも、どうして日本であれだけキリシタンが増えたかなどについて、「令和太閤記 寧々の戦国日記」(ワニブックス)から関係の箇所の短縮版を提供したい。寧々が語り手である。

時代の風にあっていたキリスト教だが一人の宣教師の傲慢が禍に

わたくしたちが生きていた時代は、世界史でいえば大航海時代でございます。はるかヨーロッパから南蛮人たちがアジアへやって来て、珍しい文物を持ち込み、新しい世界についての知識を教えてくれました。しかし、彼らは西洋との交流だけでなく、東アジアの国同士の貿易も独り占めしてしまいそうでした。

キリシタン禁教令は、イエズス会の初代準管区長に任命された、ガスパール・コエリョという人の軽率な行いが禍したものです。アレッサンドロ・ヴァリニャーノさまは、ヨーロッパの習慣にとらわれずに、日本文化に自分たちを適応させるという方法で布教に成功されたのです。

ところが、コエリョはキリシタン大名を支援するため、フィリピンからの艦隊派遣を求めたり、日本全土を改宗させたら日本人を先兵として中国に攻め入るなどと夢想していたそうです。

そして、フスタ船を建造して大砲を積み込み、平戸から出航し、博多にいる秀吉に見せたのです。高山右近や小西行長は心配して、その船を秀吉に献上するようコエリョに勧めましたが、彼は応じませんでした。

この頃、さまざまな人がキリシタンの振る舞いについて、誹謗中傷も含んだ苦言を秀吉に持ち込んでいたところに、コエリョが威圧的な態度を秀吉との会食で見せたために、秀吉が怒って禁教令をだしたのです。

コエリョは布教活動を停止し、マニラのスペイン人に援助を要請しましたが、高山右近のような日本国内のキリシタン大名が秀吉に服従しているので手も出せず、天正18年(1590年)に失意の内に平戸で死んだのは自業自得でございました。

ときどき、秀吉がキリシタンを禁止したのは、放っておくとポルトガルやスペインの植民地にされかねなかったからだ、という人がいますが、それは大げさです。

当時のポルトガルは、ゴアだとかマラッカといった要衝を占領して拠点にしていました。明国ではマカオに居留は認められておりましたが、明の領土のままでした。広い領土を治めるといったノウハウも力も、ポルトガルにはありませんでした。明、朝鮮、日本といった国を治めるなど無理なことでした。

狙っていたのは、キリシタン大名を援助して、布教や貿易を進めようという程度だったのでございます。大村氏は、南蛮船の寄港を増やすために長崎周辺を教会に寄付していましたが、それも秀吉によって返還させられました。

どうしてキリスト教が流行ったかと云うことですが、私たちの時代は、武士も庶民も、古い道徳や秩序にとらわれない自由を手に入れた時代でございました。そういう世相の中では、毒にも薬にもならない古い信仰より、現世利益の教えで京都の町衆たちに力を伸ばした法華宗、蓮如上人の改革で農民たちの気持ちをとらえた一向宗、そして、一神教の論理が清新だったキリスト教などが、時代的な気分に合っていたのです。

しかし、イエス様の教えは魅力的とはいえ、南蛮人たちがそれを梃子に利益を得ようとしているということを、秀吉などは敏感に感じ取りましたし、日本人を外国に奴隷として連れて行くという不愉快な噂も聞こえてまいりました。

そして、そういう不信感が、コエリョという愚か者の浅はかな行いを機に、キリシタン禁止令というかたちになったのです。しかし、それほど厳しいものではなく、本格的な弾圧はオランダが日本にやって来て、カトリックを德川家康さまに誹謗中傷してからです。

船長の法螺で厳しくなったキリシタン禁制

天正15年(1587年)に秀吉がバテレン追放令を出しましたが、その内容は布教を禁止したとは言え、信仰し続けるのは黙認しておりますし、実際、神社や寺を壊したりしなければ、キリシタン大名ですら厳しいお咎めはありませんでした。

狩野内膳画南蛮屏風
Wikipediaより

南蛮船はあいかわらず来ましたが、いっときの長崎のように教会に土地を寄進したり、日本人をおおっぴらに奴隷にすることができなくなっただけです。

天正20年(1592年)には、スペインのマニラの総督に入貢を要求しましたが、関係が緊張したわけではありません。翌年にはフランシスコ会宣教師ペドロ・バプチスタが来日し、京に修道院の建設が許可され、敵対的なことをしなければ布教してもお咎めはありませんでした。

ところが、天正14年(1596年)7月にマニラを出航したサン=フェリペ号が、メキシコを目指したものの台風に遭って土佐に流れ着きました。領主の長宗我部元親さまは、積み荷を没収したものの船長が抗議するので、判断を秀吉に求めたのです。

秀吉は増田長盛を土佐に派遣し、日本を侵略するつもりがあるのでないかと尋問したところ、デ・オランディアという水先案内人が長盛に世界地図を示し、「スペイン国王は宣教師を世界中に派遣し、布教とともに征服をしてきた。まず、その土地の民を教化し、そののちに信徒を内応させ兵力をもって呑み込むのだ」とお粗末な法螺を豪語をしたのです。

しかし秀吉も、マニラでのスペインの軍事力には限界があって、日本を攻めるなど無理だということを知っていたので、これにひどく驚いたというほどではなかったのですが、こんなことを言われたら、そのままにしておけません。

このために、キリシタン禁制が確認され、京にいた宣教師たちは慶長元年(1597年)12月に長崎で処刑されてしまいました(26聖人)。ただし、船の修理は認められ、無事にマニラに帰りましたが、これを機にフランシスコ会の活動は難しくなりました。

大坂と京都でフランシスコ会員7名と信徒14名、イエズス会関係者3名の合計24名が捕縛されました。24名は、京都・堀川通り一条戻り橋で左の耳たぶを切り落とされて、市中引き回し。長崎で処刑せよということになって、道中でつき添っていたペトロ助四郎と、フランシスコ会員の世話をしていた伊勢の大工フランシスコ吉も捕縛されました。

26人のうち、日本人は20名、スペイン人が4名、メキシコ人、ポルトガル人がそれぞれ1名でありました。

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Sat, 23 Sep 2023 21:55:31 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:55:31 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925234556.html https://agora-web.jp/archives/230925002415.html https://agora-web.jp/archives/230924094656.html https://agora-web.jp/archives/230909210627.html https://agora-web.jp/archives/230907002053.html
https://agora-web.jp/archives/230921213721.html 海外視察が好きな社長は会社を潰す?(横須賀 輝尚) https://agora-web.jp/archives/230921213721.html

Kobus Louw/iStock

社長の危ない「虚栄心」と「自己承認欲求」

X(旧Twitter)やFacebookなど、社長が自ら情報発信することも決して珍しいことではなくなりました。事業の成長を見せれば、社員も顧客も安心しますし、メディアにも取り上げてもらいやすくなります。しかしSNSでの投稿に「いいね」が集まると、純粋な情報発信は変化してしまうものです。

「社長のSNSを見れば、その会社の脆弱性が見えてくる」と経営コンサルタントの横須賀輝尚氏は解説します。今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。

出張が多い社長、本当に仕事してる?

出張ばかりしている経営者っていますよね。SNSとかで「今日は沖縄にいます!」とか「仕事でシンガポールまで来ました!」みたいな投稿、よく見ると思います。もちろん、これも「事業にとって必要な出張」であれば、大きな問題はありません。

しかし、まあ説明するまでもないと思うのですが、単に遊びたいだけの場合は経費の無駄遣いですからちょっと危険な気配です。

特に気をつけたいのが「視察」って言葉。

国内だけにとどまらず、結構海外企業の視察ツアーなんかも世の中にはあって、「今後の事業のために視察が必要だ」と国内外駆け巡っている経営者もいるわけです。本当にそういう目的ならば良いのですが、「視察」というワードを大義名分にして遊びまくっているのであれば、これはちょっと大丈夫? という感じです。

私自身、これまで国内を始めとして、東南アジアやインド、アメリカなど企業視察は幾度となく行っています。海外企業から学ぶことは本当に多く、勉強になることばかり。でも、やっぱり特に海外視察はお金がかかるもの。だから、出張の多い経営者がお金を使っていることは事実です。

視察が無駄になっていないか見極めるポイントは、その視察から何か新しい事業や商品が生まれたか。あるいは、取引先が新規に見つかったなどの経営にきちんと貢献した視察であったかどうかです。

結果を出していれば、視察も立派な「投資」。ただの遊びであれば、それは「浪費」なので、このあたりを俯瞰して眺めてみましょう。

特に、SNSで虚栄心を満たしたいがために出張を続ける経営者には要注意です。

セミナー講師、目立ちたがり屋の社長には要注意

虚栄心という言葉が出ました。

経営者も創業の頃は、「家族を食わせるんだ」とか「世の中を変えるんだ」とか、理念にも燃え、経営を軌道に乗せるため必死です。他人の評価なんか関係ない。ところが、経営が上手くいき、結果が出てくると周りから自然に評価されるようになります。

露骨に言えば、「成功者」としてチヤホヤされるようになるわけですね。チヤホヤされたことのない経営者が、チヤホヤされるようになるとどうなるかというと、調子に乗り始めます。非モテ男子・非モテ女子がモテ始めるようなものです。そこで上手いタイミングでやってきたりするのが、マスコミ取材やセミナー講師の依頼です。

メディアに乗ると、周りの評価がガラッと変わるんです。称賛の雨あられ。これが気持ちよくないはずがありません。そしてセミナー講師。多くの経営者や起業家が、「先生、先生」って慕ってくるんです。これも気持ちよくないはずがありません。

これに気を良くした経営者は、もっと目立ちたくなります。マスコミ関係者とのつながりを増やしていったり、プレスリリースを頻繁に出すようになったり。もちろん、PR自体はいいことなのですが、それが売上に直結しているのかどうかが肝要です。

そしてセミナー講師。一度やってしまうと辞められないっていうくらい、慣れてない経営者は気持ちがいい。セミナー講師の仕事が終われば、講師を囲んでの懇親会。またそこで称賛の嵐。

家ではついでもらえないお酒も、ここでは率先して「先生、先生」とついでもらえます。まるで依存症のようです。となれば、今度はセミナー講師の仕事を率先して受けようとします。講師派遣サイトに登録してみたり、あるいはスーツを新調してみたり。こうなってくると、本業よりも楽しくて仕方がありません。

だってみんなチヤホヤしてくれるんですから。本業そっちのけで、セミナー講師業に手を出す経営者は、自分の虚栄心を制御できていません。そうなれば、講師業だけでなくほかのお金の使い方も気になってしまいますね。

なお、あくまで本業である事業をベースに、時々依頼を受ける程度であれば、大きな問題はないといえます。それから、私のようなコンサルタントなどセミナー講師を主たる事業にしている人は、セミナー開催数が多いからといって、危険なシグナルというわけではないのは、一応伝えておきますね。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年9月21日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

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Sat, 23 Sep 2023 21:50:20 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:50:20 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230923074547.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html
https://agora-web.jp/archives/230922141357.html 「大学ファンド」をめぐって https://agora-web.jp/archives/230922141357.html

jaimax/iStock

政府が創設した10兆円規模の「大学ファンド」で、世界トップレベルに肩を並べる研究大学を育てようとの目論見だが、果たして前途は有望なのだろうか・・?

以前「大学が抱える諸問題を考える」を書いた時にも言及したが、種々の評価項目で世界に低迷する日本の大学を考えるとき、何とかして大学を「元気」にする方策が必要だが、それはおそらく「業績評価」や予算で締め上げる「北風政策」ではなく、もっと大胆に自由なお金と時間を与える「太陽政策」ではないかと論じた。

今回の10兆円ファンドは、その「太陽政策」になるのだろうか。結論を先に言うと、現状得られる情報から考える限り、その見込みは、低い。

今回「国際卓越研究大」候補第1号に選ばれたのは、東北大学である。無論、候補には挙げられていた。日本で一流大学と目されるのは、国立なら旧帝大系と東京科学大(東京工大+東京医科歯科大)など、私学なら早慶あたりと、衆目が一致するので、国内で三番目に作られた旧帝大である東北大が選ばれるのに何の不思議もない。ただし、なぜ1校だけなのかは問題である。

これは「選択と集中」の行き過ぎではないだろうか? たった1校にだけ巨額資金を提供するという仕組みで、日本の数ある大学を活性化できるとは、とても思えない。1校だけでも、育てば良いのか?いくら新自由主義全盛の日本社会でも、それはないでしょ、と筆者は思う。

そうでなくても、今は大学でも企業なみの「選択と集中」が進んでいる。上記「一流大学」ならまだマシな方で、地方国立大学などは、現在すでに種々の「切り捨て」対象となる可能性に怯えている。統合化で少しでも図体を大きくすることで「切り捨て」対象から免れようとする動きも活発化している。単科大学が減りつつあるのは、その現れだ。

また、巨額資金というが、初年度は最大100億円程度だそうだ。原資10兆円の1/1000、つまり0.1%に過ぎない。何だかケチ臭い気もするが、今の金利を考えれば、こんなものか?

一方、100億円もらった方も大変だろう。何しろ、年3%の成長を求めるとあるので、100億円もらったのなら毎年3億円ずつ利益を出さないといけない計算になるから。これは、普通の商売をやっている会社にとっても、大変だろう。100億円投資するから、次の年から毎年3億円の利益を出せって言われたら・・。

ましてや、相手は商売など苦手な大学である。そもそも、大学は高等「教育機関」である。普段は講義・実験・実習その他の教育活動が主で、研究活動はその傍らで行う。大学人口の大半が学生であることから、これは当たり前の話。大学の付属研究所や研究大学なら少し違うけれども、学生を預かって研究活動を通じて実力を養わせる点では、一種の教育活動である。当然、国立研究機関や企業の研究所みたいに、研究=仕事とは行かない。

現に、どこの大学でも、学部生には4年の最後に卒業論文を書かせ、大学院の修士課程なら2年で修論、博士は3年で博論を書く。またそれらを発表させ、審査して卒業・修了させる。そのために当然ながら、教員は学生の研究進捗状況を逐次チェックし、必要な助言や指導を行う。学生の「面倒見」というのは、主にこの仕事である。

少なくとも工学部では多くの場合、教員の日常はこの活動によって占められる。筆者も現役時代、各学年3〜4名、合計10数名の学生の面倒を見るのに追われた。ちょっと目を離すとグラグラ落ちてくる皿回しをやっているような気分だった。

さらに教員は大抵、それらの論文の下書きをチェックし書き直させたり修正し、発表練習にも何度も付き合って、失敗や「粗相」のないように気を配る。原則として修論や博論は大学図書館に保存して、誰でも閲覧できるので、いい加減な審査などすると後で恥をかくからである(例のSTAP細胞事件でも、論文の杜撰な審査状況が問題になった)。

一部の大学では学部生の卒論を課さないと聞くし、学生の面倒を全然見ない先生もいるらしいが、筆者のいた工学部では、教員は例外なく学生の面倒見に忙殺されていた。特に忙しいのは1〜3月で、この時期は各種の入試やセンター試験があり学年末試験の出題・採点等もあり、とにかく多忙を極める。

多くの世の中の人たちは、大学の先生など相当にヒマなんだろうとお思いかもしれないが、実情は全然違う。多くの大学教員は、睡眠時間を削って仕事をこなし、その合間に研究論文を書くような生活をしている。定年後の今から振り返ると、ゾッとするような生活である(ついでに書くが、週2〜3回もTV出演する「教授」センセイ方って、どんな生活をしているのだろうか?普通なら、講義や研究室運営や種々の委員会・会議等で忙殺されているはずなのに)。

筆者が教員として経験したのは主に地方国立大学の生活だが、旧帝大の東北大学でも、大きな差はないはずだ。地方大より学生当りの教員数が多い分、授業持ちコマ数が少なく、その分研究に割ける時間が多い点は恵まれていると思うけれど。と言うのは、筆者は学部は京大、大学院は東工大で過ごし、1年間だが東大工学部で内地留学した経験から、工学系なら旧帝大での生活もよく知っているからである。

このような生活サイクルを繰り返している大学で、100億円くれるから毎年3億円儲けてくれと言われて、一体どうするんだろう・・?と言うのが、筆者の素朴な疑問である。

まず、学部レベルでは、どんな学部でも「稼ぐ」のは無理、大学院でも修士課程では困難だと思う。博士課程の研究の中に、有望なものがあれば良いが、大学での研究は基礎分野が多いので、すぐに「稼ぐ」のは難しいケースが多いだろう。

無論、旧帝大系ならば付属研究所も数多くあり、「稼ぎ」の源にも見込みがあるかも知れない。実際、今回選ばれた東北大では、次世代放射光施設や災害科学国際研究所を作り、産学連携でイノベーションを生み出す「サイエンスパーク構想」を掲げてきた。これらが選出理由の大きな部分を占めることは疑えないが、一方、これらですぐ「稼ぐ」ことは可能なのかどうか、疑問もある。

「稼ぎ」で最初に考えつくのは「特許」である。かつては、大学所有の特許で得たライセンス料が3億円以上あったケースがある。名古屋大学の赤崎教授が得た青色発光ダイオード(LED)の特許で年間4億円以上を稼いだのがそれだ。ただし、これは2003年頃の話で、特許が期限切れになれば、その収入は絶える。実際、このレベルの大ヒットは稀で、その後はこれに匹敵する特許は出ていない。

逆に言えば、ノーベル賞を貰った赤崎教授に並ぶような成果を挙げなければ、特許で年間3億円も稼ぐのは難しいわけだ。ファンドから100億円貰ったからと言って、すぐにノーベル賞級の業績を挙げるのは難しかろう。

次に考えられるのは大学発ベンチャーだ。実際、その数だけは増えている。経産省の調査によると、2022年10月時点での大学発ベンチャー数は3782社もあり、企業数及び増加数ともに過去最高を記録したそうだ。

売上高では1000万円以上5000万円以下が30.1%で最多、次が1億円以上10億円未満が19%ある一方、売上高0円も18.4%ある。営業利益となると更に厳しく、0円が24%もあるし、0円以下つまり赤字企業が32%ある。黒字企業は44%で、1億円以上は1%(2社)しかない。やはり年間3億の利益を上げるのは至難の業と言える。それに、大学発ベンチャーの稼ぎが全部大学に行くはずもない。

こうして見ると、すぐに年3%の成長などを要求すること自体が無理だと分かる。ならば、毎年の100億円は利息分なのだから、くれてやっても良い、すぐの見返りは求めない、と割り切ってはどうだろうか?情けは人のためならず、とも言う。じっくり育てる根気が必要だ。ついでながら、100億円1校ではなく、1億円100校に配る方が、多くの大学人は助かると思う。1億円を各研究室に配ると微々たる金額にしかならないが、それでも有難く思う研究室は相当数あるはずだ。

もう一つ気になるのは、ガバナンス(組織統治)の強化が強調されていること。学外者らで作られる経営意思決定機関を設置し、全学を号令一下、何でも言うことを聞かせる体制を作るという意味のようだ。

これは、学内の人間にとっては、相当に鬱陶しい状況になりそうだ。自由に研究したいのに、上から「あれをやれ、これをやれ」と指図されるのか?このガバナンス強化と「学問の自由」は、どのように両立するのだろうか?筆者は残念ながら、これに関する説得的な説明を聞いたことがない。戦前・戦中の大学みたいにならなければ良いのであるが。

現在の大学が抱えている問題は、研究資金の不足もあるが、何と言っても教員の多忙すぎる生活自体にあると筆者は考えている。この業界でも「人手不足」が目立ち、教員が何でもかんでもやらなければいけない仕組みに陥っているし、研究者の非正規化も進んでいる。特に基礎科学分野では、30〜50代でも非正規の研究者が多く、これではじっくりと腰を据えた研究などできはしない。常に現状の「評価」に追われ、次の働き先を探しながらの落ち着かない生活になるからだ。

任期付きの不安定な立場でポストを渡り歩くような生活では、優秀な人材が腐ってしまう危険度が高い。上手く渡って行ける人もいるだろうが、その精神的ストレスは大きく、うつ病罹患率が高いという話も頷ける。

話をまとめると、地盤沈下を続ける日本の大学の活力を上げるには、今回の大学ファンドのような「選択と集中」ではなく、多くの大学に自由に使える潤沢な資金を与えることが必要だ。そして教員の身分を正規雇用にして安定させ、安心して教育研究に専念できる環境作りをすることだ。

今の日本の大学は、働き過ぎてヘトヘトに疲れ果てた人に例えるのが適切だと思う。大学組織も大学人も多くは疲弊している。この状態の人を鞭打って働かせようとしても功は少ない。与えるべきは十分な栄養と休養だ。大学には自由と資金を。これが特効薬になるために「十分」かどうかは不明だが、少なくとも「必要」な条件ではある。

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Sat, 23 Sep 2023 21:40:51 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:40:51 +0000 https://agora-web.jp/archives/230920084855.html https://agora-web.jp/archives/230918081557.html https://agora-web.jp/archives/230915083307.html https://agora-web.jp/archives/230908074753.html https://agora-web.jp/archives/230902214817.html
https://agora-web.jp/archives/230922011101.html 台湾で沖縄を考える(後編) https://agora-web.jp/archives/230922011101.html (前回:台湾で沖縄を考える(前編)

ここで別の「沖縄の状況」に目を転じたい。昨年4月9日の「読売」は「【基礎からわかる】国の沖縄振興策は?」との記事で、72年5月の復帰から22年度までの沖縄振興予算が合計13.8兆円に上ると報じた。玉城県政下の22年度当初予算では2684億円と10年ぶりに3000億円を下回ったものの、この50年間の年間平均は約2760億円だ。

エルドリッジ氏も「国から沖縄に、3000億円にも及ぶ振興費が支払われていることに、激甚な反対意見を出す人は多くない」と書き、それは県外の人々の中に「米軍基地の集中」「沖縄戦での多大な犠牲」「遅れた本土復帰」といった「意識を抱いている人々が多い」からこそとし、本人も海兵隊次長に就く09年までは「沖縄がかわいそう」「もっと沖縄の声を聞くべきだ」という認識だったことを明かしている。

政府は令和4年5月の「沖縄振興基本方針」で、「沖縄振興の意義」として「戦後四半世紀余り我が国の施政権の外にあったこと」「広大な海域に多数の離島が散在し他の都道府県から遠隔にあること」「我が国における米軍専用施設・区域が集中していること」など「様々な特殊事情を有している」ことを挙げている。この種の補償に異議を唱える国民は居まい。

データは少々古いが2010年度の都道府県別の歳入・歳出ランキングを見ると、ほぼ同じ人口140万人前後の沖縄県と愛媛県が31位と32位に並ぶが、歳入の内訳がかなり異なっている。

(単位:百万円)

歳入 歳出
順位 都道府県 総額 地方税 地方交付金等 国庫支出金 地方債 総額 10万人当り
31 沖縄県 647,317 101,296 220,865 177,016 76,733 632,157 46,469
32 愛媛県 630,190 132,132 191,365 87,258 101,339 618,357 44,038

国庫支出金は国から使途を指定されるが、地方間の格差是正を目的とする地方交付金は使途の制約がない。上表の沖縄振興予算は近年では少ない2298億円だが、沖縄は「阻害」も「ないがしろ」にもされていないと判る。沖縄に比べて国の支援が少ない愛媛が、税収や地方債でそれを補い、県民一人当りの歳出額を捻出している様子も垣間見える。

Eggsy/iStock

基地の町横須賀で生まれ育った筆者は19年2月、本欄に寄せた一本目の拙稿で、沖縄県が普天間の辺野古移転に関する「県民の意思を的確に反映させることを目的として」実施する県民投票について、こう書いた。

「県民の意思を的確に反映させる」といったところで、この投票で沖縄県県民の意思がどのように示されようと、それが国政に反映されることはない。なぜなら、日本国内の米軍基地の存在は日米安保条約という国と国との約束に基づくものだからだ。

あれから4年半、「台湾有事は日本の有事」が現実となる可能性が高まるに連れ、安保条約の重要性も増した。一朝事あれば、安保条約と一体不可分の「行政協定」の下に第七艦隊の艦船修理を一手に担う米海軍横須賀基地が、真っ先にミサイルの標的になるだろう。とはいえ、国ごとよそへ引っ越せない以上、この状況を地政学上の運命として受け入れねばなるまい。

安保改正の前年(59年)に書かれた「安全保障条約論」の「はしがき」で、西村は「まだ一度も発動されたことはない」安保条約は、「完全にその使命を果たしている」「それにもかかわらず改訂しようとするのは、・・日本人はきちんとすることが好きな国民」だからと述べている(大好きな台湾だが、筆者も日本人、時間にルーズな点などには馴染めない)。

西村は第6章「安保条約と沖縄はどういう関係にあるか」で、「ふたつを除いて、安保条約の交渉中沖縄は問題とされなかった」と書いている。「そのひとつ」は、日本国に沖縄が入らないことが規定されている以下のサ条約第三条を巡る交渉。

第三条

日本国は、北緯二十九度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)孀婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

沖縄を米国の信託統治下に置くことには、日米英間でせめぎ合いがあった。米英は日本に沖縄を放棄させた上で、米国が信託統治する方針だった。が、吉田首相はダレスに「米国の軍事上、沖縄を必要とする事情を日本として理解するが、その必要には日本として如何様にも応ずる所存であるから、沖縄を日本の領土として残してもらいたい」と熱心に説いた。

結果、サ条約第三条は沖縄に対する日本の主権の放棄を要求しなかった(台湾、朝鮮、北方領土は放棄)。斯くて、沖縄の主権は日本に残り、沖縄の人々は日本人であり続けた。米代表ダレスと英代表ヤンガーは51年9月5日、「琉球と小笠原の諸島について、条約はこれらの諸島を日本の主権から分離しない」(ヤンガー)と公式に声明した。

沖縄が俎上に乗った「もうひとつ」は、安保条約が、戦争と戦力を放棄している日本とそうでない米国との「特異な形式と性格を有する」条約なので、日本の安全を維持する協力関係を日米間に設定する議論。この結果、米国が安保義務を発動する武力攻撃の加えられた地域を、日本に限定せずに日本に駐留する「米軍が防衛する区域」とした。

ここに「極東条項」が登場する。西村は、「沖縄を防衛区域に入れること」に対する日本側の「有力な反対論」は、米国が極東における国際の平和と安全のために行う軍事行動に「日本が巻き込まれる危険が増大する」というものだと指摘する。70年経っても玉城氏は「米軍基地が集中し、平和が脅かされ」ていると演説した。

岸元首相は「岸信介証言録」では、極東の範囲は「常識的に考えればいいんだ」「その時の問題の起こり方いかんによる」と語ったが、実際には次のようにかなり丁寧は国会答弁をしている。

新条約の条約区域は「日本国の施政の下にある領域」と、明確に定められております。他方、新条約には「極東における国際の平和及び安全」ということもある次第であります。ところで、その「極東」でありますが、一般的な用語としては、別に地理学上正確に画定されたものではありません。しかし、日米両国が条約で言っております通り、共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということであります。この意味で、実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域ということになるわけであります。こういう区域としては、大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれるということであります。

最後の文節の「中華民国の支配下にある地域」は、日中国交正常化2ヶ月後の72年11月の衆議院予算委員会での田中首相答弁により、「台湾地域」と読み替えられた。従って、安倍元首相のいう「台湾有事は日本の有事」における在日米軍の防衛範囲には、台湾が明確に含まれている。

福島処理水の放出で、中国は日本産水産物を全面禁輸した。筆者はこの事態を「風評を1億2千万国民に背負わせたくれた中国に礼をいう」と書いた。この決意を沖縄に擬えれば、「台湾有事は日本の有事」という地政学上の厄災を1億2千万国民が背負い、一丸領土を守り抜くとの強い意思を表明することになる。

岸田政権もこの1年、防衛三文書を決定し、防衛費倍増に着手し、日米韓の同盟関係を整え、「シン・喧嘩太郎」は台湾で「抑止の重要性」を強調した。老バイデンも「台湾を守る」と何度も失言?した。これらのことこそ、敵を怯ませる「抑止」という「防衛外交」だ。

「沖縄県民は、知事の言動に惑わされることなく、国を信じよ」が、昨日も今日も普段と変わらない台湾で考えた「沖縄」の結論である。

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Sat, 23 Sep 2023 21:30:57 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:30:57 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html
https://agora-web.jp/archives/230922205401.html 「非戦」という名の平和主義が間違いである理由とは? https://agora-web.jp/archives/230922205401.html

jon chica parada/iStock

「非戦」を唱える意識高い系の人々

東京新聞による西谷修東京外国語大名誉教授のインタビューが、ちょっとした話題になっている。

「どんな戦争も正当化させてはいけない」 哲学者西谷修氏が語る戦争論とは

「どんな戦争も正当化させてはいけない」 哲学者西谷修氏が語る戦争論とは:東京新聞 TOKYO Web
ロシアによるウクライナ侵攻は終結への道筋が見えない。被爆地で開かれた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では核の抑止力を容認し、日本...

彼曰く、

戦争は当事国によって必ず正当化される。第2次世界大戦後の国連体制で戦争は原則禁止とされたが、世界の秩序を守るためとして『自衛のための戦争』は例外とされた。あらゆる戦争は自衛の名の下に起こってきた。どんな戦争も正当化させてはいけない。戦争をとにかく止める『非戦』が現代に生きる人間の基本姿勢でなくてはいけない。

らしい。

つまり、とにかく双方ともに矛を納めて、一刻も早く戦争を終わらせ、話し合いで解決しろと大上段に、偉そうに言ってるのだ。

ここで彼は最初にウクライナに侵攻したロシアの目的やプーチンの歴史認識を傍に置いて、とにかく戦争をやめろと日和見な発言をしている。

歴史学者でもなければ国際政治の専門家でもなく、哲学者という立場だと、哲学しないで「戦争をやめろ」という発言だけしてれば通用するのだろうか?およそ学者サマの発言として説得力に欠ける発言ではないだろうか?

ともあれ、高名な学者サマの発言として、一つの考え方として受け止めるとして、この日和見な意識高い系の発言は、日本国内の多くの自称リベラルに見られる言説をなぞっていると言える。

ロシアのウクライナ侵攻直後、社民党の福島みずほ党首は、立憲民主党と共産党と行った街頭演説で、厳しくロシア批判を繰り返した。その発言の中にあって、ロシアの侵攻を非難しながら日本が戦争に参加しない為にも憲法9条を改正してはならないと、どうしてそこが結びつくのかよく分からない主張を繰り返した。

本来であれば、憲法9条がそれほど戦争抑止の効果があるなら、プーチンに今すぐ戦争をやめて憲法9条を制定しろと主張すればいいものを、何故か、日本の憲法9条を改正するなという論調にすり替わっている。

ウクライナへの侵略をやめよ~福島党首がロシア軍の即時撤退を訴え~

ウクライナへの侵略をやめよ~福島党首がロシア軍の即時撤退を訴え~ - 社民党 SDP Japan
(社会新報2022年3月9日号1面より)    ロシアのウクライナ侵略を糾弾する緊急アピール行動が2月27日、東京・新宿駅前で行なわれた。「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が主催した。  立憲

また、昨年5月に『日曜討論』に出演した際、日本共産党の小池晃氏は、

徹底した対話で東南アジアを平和と協力の地域につくりかえてきたASEAN(東南アジア諸国連合)の経験を紹介し、「地域のすべての国を包摂するような集団的安全保障の枠組みをつくっていくことが、ヨーロッパの教訓を生かす道だ」と主張しました。

と、自らのサイトで取り上げている。

戦争を未然に防ぐ外交努力こそ必要 軍事費GDP比2%“暮らし押しつぶす”

戦争を未然に防ぐ外交努力こそ必要 軍事費GDP比2%“暮らし押しつぶす” | 小池晃 日本共産党参議院議員
日本共産党参議院議員 小池晃の公式サイトです。

また、

プーチン・ロシア大統領のような核先制使用をためらわない核大国の指導者が出てきたもとで核抑止力論は無力になっていると述べ、核なき世界をめざすために日本政府は核兵器禁止条約に参加する決断をすべきだと主張しました。

2015年の安保法制後は、敵国が先制攻撃の動きがあれば敵基地攻撃が容認され、相手国からしてみれば先制攻撃を仕掛けられたと取られるから、日本は攻撃されるまで何もするなという意味合いの発言を行っている。

そして、プーチンのように核攻撃も辞さずという指導者が出た以上、日本は核兵器禁止条約に参加すべきだと言うのだ。つまり、仮に核による攻撃を受けても、日本は核兵器に反対して撃たれておけ、と言ってるのである。

以後、

  • 世界がウクライナを支援する意味とは?
  • 「非戦」と言う名のまやかし

続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。

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Sat, 23 Sep 2023 21:25:59 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:25:59 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230925065611.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html https://agora-web.jp/archives/230923235915.html https://agora-web.jp/archives/230922204320.html
https://agora-web.jp/archives/230923003903.html 一般労働者の雇用保護:集団・大量解雇と総合指数 https://agora-web.jp/archives/230923003903.html

sesame/iStock

1. 集団解雇についての雇用保護指標

前回までは、一般労働者の個別解雇(Individual dismissals)についての雇用保護指標をご紹介しました。

日本は個別解雇については先進国の中で比較的雇用保護が緩い方になるようです。

今回は集団解雇(Collective dismissals)と、総合指標についてご紹介したいと思います。参照するのは、OECD Employment Protection 2020です。

また、雇用保護指標の構造については、2013年の改定時に日本の労働政策研究・研修機構でも紹介されていますので、日本語表記などはこのサイトの表記を一部利用しています(参考URL: 経済協力開発機構の雇用保護指標2013について:OECD)。

集団解雇に関する冒頭部分を下記の通り引用いたします(Google翻訳で翻訳後、抜粋・編集)。

需要の持続的な減少や必要な技術革新などにより経済的困難が続くと、企業は比較的短期間に大量の労働者を解雇するなど、労働力の再構築を行う可能性があります。 このような状況では、特定の規制が適用されるのが一般的です。

新しいOECDデータは、個別解雇の雇用保護指標と同様に計算される集団解雇の雇用保護指標を示しています。 集団解雇は通常経済的理由で発生し、集団解雇規制の包括的な評価の重要性がさらに高まっています。

世界的な金融経済危機を受けて、「ゾンビ企業」、つまり財務上の義務を果たすことが困難な企業の数が増加しています。 さらに、名目賃金の下向き硬直性、低インフレ、名目賃金の伸びの弱さを背景に、労働力ではなく賃金の調整が困難な企業の余地は縮小しています。 デジタル化とグローバル化の傾向により、より多くの企業が従業員を再編する可能性もあります。

実際には個別解雇の規制が集団解雇に対する最低限度の役割を果たすことが多いため、個別解雇の規制が厳しい場合には、集団解雇の規制も厳しくなる傾向があります。 国を問わず、集団解雇に対する追加の制限(集団解雇と個別解雇の規制の違い)は、個別解雇の規制の厳格さとはあまり関係がありません。 したがって、集団解雇がどの程度特定の規制の対象となるかは、個別の解雇規制の自然な結果というよりも、政府や国の選択によるものと考えられます。

集団解雇の極端な形態は大量解雇であり、OECDでは1か月に少なくとも120人の労働者を一時解雇することと定義しています。 この定義により、一連の個別解雇に適用される特定の規制の基準は、一連の個別解雇専用の法律を制定しているすべての OECD 諸国で確実に満たされます。 測定された規制の度合いは、一般に、大量解雇の場合と、特定の規制の閾値を超える解雇数を伴う小規模解雇の場合と同じです。 したがって、個別の解雇と比較して特定の規制の基準値が高く、追加の規制がより広範であるほど、集団解雇の規制の厳しさを示す指標と集団解雇の規制の厳しさの指標との差は大きくなります。

OECDの最新の指標では、集団解雇も個別解雇と同様に評価されているようです。

比較的少人数の場合と、大量解雇の場合での指標が公開されています。

2.集団解雇に対する雇用保護

まず集団解雇についての雇用保護指標を見てみましょう。

図1 雇用保護指標 一般労働者 集団解雇 2019年
OECD統計データより

図1が雇用保護指標のうち一般労働者の集団解雇(Collective dismissals)についての比較です。集団解雇は、1カ月に数名程度の規模と定義されているようです。

日本は2.04で、OECD平均値(2.44)を下回り、フランス(3.25)、イタリア(3.19)、ドイツ(2.61)、韓国(2.33)、イギリス(2.31)を下回ります。

雇用保護でイギリスを下回るのは珍しいですね。

日本では集団解雇に対する規制がかなり緩いという事になりそうです。

また、OECDのサイト中では、個別解雇の場合との比較もされていますが、個別解雇の指数と集団解雇の指数には強い関係があるようです。

3. 大量解雇に対する雇用保護

OECDでは、集団解雇だけでなく大量解雇(Mass dismissals)についても指数が公開されています。

大量解雇は、1カ月に120人以上の規模と定義されています。

図2 雇用保護指標 一般労働者 大量解雇 2019年
OECD統計データより

図2が大量解雇に対する雇用保護指標となります。

集団解雇とそれほど傾向は変わりません。

ドイツがやや厳しくなる方向に、韓国がやや緩くなる方向に相対的な順位が変わっている程度ですね。

やはり、主要先進国では、フランス、イタリア、ドイツが厳しく、日本、カナダ、アメリカが緩いという評価になるようです。

4. 総合的な雇用保護指標

最後に、個別解雇と集団解雇の指数を合算した雇用保護指標の総合指数について比較してみましょう。

図3 雇用保護指標 一般労働者 2019年
OECD統計データより

図3が雇用保護指標の総合指数となります。

個別解雇と集団解雇で重みづけした数値を合算しているとの事です。

一般労働者への雇用保護の総合評価となります。

最も厳しいのはチェコで3.03、最も緩いのはアメリカで1.31となります。

OECDの平均値は2.31です

イタリア(2.86)、フランス(2.68)はかなり雇用保護が厳しい国、韓国(2.37)、ドイツ(2.33)は平均的~やや厳しい国と言えそうです。

日本は2.08で平均値を大きく下回りますので、雇用保護が緩い国の部類に入りそうです。

日本より緩いのはイギリス(1.90)、カナダ(1.68)、アメリカ(1.31)などですね。

5. 雇用保護の特徴

今回は雇用保護について、集団・大量解雇の指数と、総合指数をご紹介しました。

日本は集団・大量解雇の場合も、個別解雇との総合で見ても相対的に雇用保護の弱い国と言えそうです。

日本より緩い国は、イギリス、アメリカ、カナダです。

一方欧州各国の主要国フランス、ドイツ、イタリアは雇用保護が厳しい国となります。

欧米として一括りにされがちですが、ずいぶんと傾向が異なるのが興味深いですね。

日本はアメリカやカナダ寄りで、先進国の中では雇用保護が弱いという事に意外と感じた方も多いのではないでしょうか。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2023年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。

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Sat, 23 Sep 2023 21:20:58 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:20:58 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html
https://agora-web.jp/archives/230922203440.html 国連のあり方など https://agora-web.jp/archives/230922203440.html 石破茂です。

昨日は「ウクライナ戦争」の即時停戦を求める有識者の集会が議員会館で開かれ、日ごろから敬愛する伊勢崎賢治・東京外大名誉教授からのお声がけもあり、参加して参りました。田原総一朗氏、東郷和彦・元外務省条約局長、和田春樹・東大名誉教授など錚々たる顔ぶれで、多くの示唆を受けました。「今日のウクライナは明日の台湾、台湾有事は日本有事」という相当に短絡的な議論の危うさを改めて感じたことでした。

台湾有事は日米安保条約第6条の「極東有事」ではあっても直ちに第5条の日本有事になるものではありませんが、朝鮮半島有事は朝鮮国連軍地位協定によってそのまま日本有事となる可能性のあるものです。勇ましい話ばかりではなく、精緻な議論が今こそ求められます。

23日土曜日午前9時半からは、BSテレ東の討論番組に出演する予定もあり、この数日、ウクライナ戦争を巡っての国際社会の在り方について学ぶ時間が多くなっています。

ここ20年あまり、講演等でいつも申し上げていることですが、第二次世界大戦の戦勝国が当時の国際秩序を維持する目的で創設した「United Nations」(対枢軸国戦勝国連合機構)を、あたかも世界政府であるかのごとき響きを持つ「国際連合」と敢えて訳したところから、日本人の国連幻想は始まっています。

ニューヨークにある国連本部 Wikipediaより

国連憲章第53条と第107条に定められた「敵国条項」により、安保理の決議がなくとも武力行使の対象となる「旧敵国」には日本、ドイツ、イタリア、フィンランド、ブルガリア、ハンガリー等が挙げられるのですが、日本とドイツ以外は途中で枢軸国を脱退して連合国側につき、日独に宣戦布告をしているため「敵国」には該当しないとされ、旧ドイツはヒトラーの自決により成立したデーニッツ政権を連合国側が国家として認めなかったために法的には国家として消滅しており、現在のドイツとは国家としての連続性がなく、結局枢軸国国家として現在まで連続しているのは日本だけである、とする見方もあります(故・色摩力夫・元駐チリ大使)。

敵国条項は国連総会において死文化が確認され、次期の憲章改正で削除されることになっていますが、それまでは条文として有効であり、ロシアが北方領土占拠の根拠としているように、いつこれが援用されるかわからない状況にあります。

国連は本来、安保理決議により、侵略国に対し、侵略行為を排除するために国連軍を組織して戦うことを本質とする組織ですが、日本はこの国連軍に参加し、武力を行使することを正式には可能としていません。「旧敵国」であり、国連の武力行使にも参加しない国が、「唯一の被爆国」「国連加盟国中最多の安保理非常任理事国選出国」であるからと言って常任理事国入りを目指すことには、かなりの無理があるように思います。

国連憲章第51条に定められた集団的自衛権は、拒否権を持つ常任理事国から侵略を受けた国は実質何の救済も受けられないことに憤慨したラテンアメリカの諸国の提案により、安保理決議が出るまでの間、互いに助け合うことを権利として認めたものです。日本人の多くが誤解しているような、「大国とともに世界のどこにでも行って武力を行使する権利」ではありません。

集団的自衛権行使の要件は「急迫不正の武力攻撃の発生」「被侵略国からの救援要請」「国連安保理への報告」「国連安保理が必要な措置を執るまでの間」「必要性と均衡性」の五つであり、同盟関係の存在は必ずしも必要とはされていません。ですから、理論的にはウクライナ救援のために集団的自衛権を行使する可能性はNATOにもあったわけです。にもかかわらず、かなり早い段階でアメリカはこれを否定しました。それがロシアの誤算を招いたとの説もあります。

ウクライナ侵略の停戦の方法については、国連総会における「平和のための結集決議」(ESS)を活用すべき、との論考もあり、この点議論を深めたいと考えています。

今年の夏はとうとうつくつく法師の鳴き声を一度も聞かないままに過ぎ去ろうとしています。「暮れてなお命の限り蝉しぐれ」は故・中曽根康弘大勲位の名句ですが、10日余りの短い成虫期間のうちに種族保存の目的を果たさねばならない蝉のオスは、命の限り求愛活動として鳴き続けるのだそうです。蝉たちの今後は一体どうなるのか、鳴かなかったのが私の周りだけだったのならよいのですが、とても心配になります。

来週は9月も最終週となりますが、一年の四分の三が過ぎようとしていることに、たまらなく焦燥感を覚えます。

皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。

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Sat, 23 Sep 2023 21:10:38 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:10:38 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html
https://agora-web.jp/archives/230923080914.html 会社員衝撃!リモートワークに逆風。在宅勤務、手取り給与減少。残業代見直しへ https://agora-web.jp/archives/230923080914.html 厚生労働省が検討している、在宅手当の見直しについて解説します。

【目次】

  • 宅勤務の手取り減少(残業代の計算)(0:00
  • ナゼこうなった?(2:59
  • いくら残業代が減るのか?(4:44
  • 出社組と在宅組との比較(社会保険・税金)(6:22
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Sat, 23 Sep 2023 21:10:10 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:10:10 +0000 https://agora-web.jp/archives/230924141502.html https://agora-web.jp/archives/230924140401.html https://agora-web.jp/archives/230923235239.html https://agora-web.jp/archives/230923003327.html https://agora-web.jp/archives/230922125455.html
https://agora-web.jp/archives/230922204404.html 人生でやりたいことは、早くやっておいた方が良い https://agora-web.jp/archives/230922204404.html 食べるのが好きなグルメ仲間たちとよく話すネタに、食べる順番があります。

miya227/iStock

好きな食べ物があったら、最後まで取っておくのか、それとも最初に食べてしまうのか、という話です。

私は最後まで取っておくタイプです。

例えば、折り詰めのお寿司があったら、イカ、ゆで海老、ヒラメといったあまり好きではないものから食べる。小肌、マグロ、ホタテのような好みのネタは後回しにするのです。

食事はそれでも良いかもしれませんが、人生においては、そのようなやり方は後悔につながると思います。

なぜなら予期せぬタイミングで人生が唐突に終わってしまったり、健康を害してやりたいことができなくなることは珍しくないからです。

人生とは自分が計画したように思い通りにはいかないのが当たり前なのです。

今週、社会人になって最初に勤務した銀行の同期入社の同僚が、心筋梗塞でこの世を去ったという悲しい知らせが届きました。同じ時期にアメリカに留学したこともある、語学堪能なとても優秀な男でした。

突然の出来事は本人にとって、不本意だったのではないか。本人の無念さを想像すると、早すぎるお別れに心が痛みます。

人生の終わりには至らなくても、同世代の知り合いには病気になってしまい、生活習慣が変わって、やりたいことができなくなってしまった人たちもいます。

食事は美味しいものを最後まで取っておいても良いが、人生のやりたいことは早くやっておいた方が良い。

だから、今日が人生最後の日だったら、どうやって1日を過ごすのか?そんな風に考えながら、後悔しない毎日を過ごそう。

改めてそう心に誓いました。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2023年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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Sat, 23 Sep 2023 21:00:03 +0000 Sat, 23 Sep 2023 21:00:03 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html
https://agora-web.jp/archives/230923003327.html 【動画こども版】バブルって何? https://agora-web.jp/archives/230923003327.html アゴラチャンネルで動画こども版、「バブルって何?」を公開しました。

難しい話題を、LOVOT(らぼっと)の『てんてん』と一緒に池田信夫が易しく解説します。

☆★☆★
You Tube「アゴラチャンネル」のチャンネル登録をお願いします。またSuper Thanksでチャンネル応援よろしくお願いします!!

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Sat, 23 Sep 2023 03:00:26 +0000 Sat, 23 Sep 2023 03:00:26 +0000 https://agora-web.jp/archives/230924141502.html https://agora-web.jp/archives/230924140401.html https://agora-web.jp/archives/230923235239.html https://agora-web.jp/archives/230923080914.html https://agora-web.jp/archives/230922125455.html
https://agora-web.jp/archives/230922204320.html 沖縄県知事の国連演説:真逆に爆走中という残念な政府と玉城氏のバトル https://agora-web.jp/archives/230922204320.html 日本で「ウーバーする?」がいよいよ実現する気配となってきました。引き金はタクシーがつかまらないこと。運転手の高齢化と減少はタクシー会社にとって切実かもしれませんが、顧客の方がもっと困るのです。過疎地帯では白タクは既にOKになっている中、ライドシェアはその解釈を拡大するだけ。世界一難関なロンドンのタクシー免許の試験をクリアするよりナビの方が正しく、早く着くので運転手はその指示に従えばよいだけ。ただ、日本はへんな事件が多いのでそれだけが心配です。

では今週のつぶやきをお送りします。

中銀ウィーク、結局どこも据え置き

日本、アメリカ、英国の政策決定会合は全て「据え置き」となりました。英国の事前予想は更なる利上げでしたのでやや意外感。アメリカのインフレと利上げの連関性に個人的には疑問がついているのですが、パウエル氏はもう一回ぐらい利上げをしたいという含みを残しました。そして注目の日本は植田日銀総裁が現状維持としました。三つの中銀に共通しているのは「上げたいけれど、ここは我慢」でしょう。

インフレが止まらない英国が利上げを踏みとどまったのは国内経済への悪影響が懸念されるからです。アメリカは過去の利上げ局面をグラフで見ると一目でわかるのですが、金利上昇局面では急激な引き上げを行い、やり過ぎて経済とのバランスを壊し、長期下落させるパタンが続きます。パウエル氏はこのFRBの歴史的悪癖に気がついていないのか、いまだに「インフレの根を絶やす」と頑なですが、経済の芽も刈り取りつつあるように見えます。

では植田総裁はどうでしょうか?やり取りが典型的な学者スタンスで論理的表現であり語彙を巧みに駆使した歪曲表現ではありません。グリーンスパン氏がFRB議長だった時は氏の発言が芸術的ともいえる表現力で解釈が難解、記者はクイズのように悩まされました。今回、植田氏は「政策修正時期の決め打ちは到底できない」と述べています。これは超平易な表現で「金利はいつかは正常化させるけれどその具体的タイミングと手順はまだ述べられない」です。物価上昇の安定性が分析できないというのが真意ですが、たぶん真意は「前回、YCCの変動幅を広げたばかりだからその影響がデータで見え始める次回まで待ちなよ」ではないかとみています。

世界が軋む、不協和音の向かうところ

ポーランドとウクライナの関係が急速に冷えています。このブログでもこの件は既に指摘していますが、国連会議でポーランド首相が「わが国はウクライナにこれ以上武器を供与しない。ポーランドの武器の近代化を進めるからだ」と述べ、その後、同国大統領が火消しに躍起でした。ポーランドのウクライナからの穀物輸入禁止が既に発表されており、年明けには難民受け入れも停止する予定。この想定外の展開にアメリカは武器輸出に対して今まで以上に慎重にならざるを得ず、ゼレンスキー氏の訪米クレクレ外交は大逆流の感があります。

カナダではシーク派のリーダーがBC州で殺害された件でカナダ政府はインドの諜報部隊による殺人と断定、これに対してインドが猛反発し、カナダ人へのビザ発給を止めてしまいました。トルドー首相の外交は下手で以前、習近平氏から公衆の面前で強烈にクレームされたり、その昔はG7会談後、余計な一言がトランプ氏を激怒させ、それ以降、両氏の間柄は修正できなくなった事件もありました。トルドー氏の鈍感さもあるのですが、世界中で外交が軋んでおり、センシティブになっていると言ってよいでしょう。多分、カナダの情報筋は正しく、シーク派のリーダーは政治的に抹殺されたとみていますが、カナダ側が正面切って述べたことでインドの顔に泥を塗り、両国間の関係が短期間で極めて悪化する事態になりました。

大戦後78年も平和な社会が続きましたが、世界各地で広がる些細なもめごとは着実に増えてきています。両大戦は陣営化した戦いですが、今でも陣営化はするけれど個々の国の言い分がそれに勝り、自分が何かに巻き込まれたら徹底して対抗する傾向が強まっています。一言で言えば「バラバラになる世界」でしょう。結局、人類は「仲良しこよし」で国際会議で笑顔で握手をし、コミュニケーションを取っているように見せますが、利害に関しては妥協が出来ず、メンツが邪魔して落としどころが見いだせないそんな外交が各地で展開されています。ずいぶん水臭く、そしてきな臭くなったものです。

沖縄県知事の国連演説

岸田首相がニューヨークの国連で演説している頃、沖縄の玉城知事はスイス ジュネーブの国連人権理事会で米軍普天間基地の辺野古移転について日本政府の批判演説を行い、極めて憂慮すべき事態となっています。先日の中国訪問に続き「また玉木氏か!」と思う人も多いでしょう。また9月4日には辺野古工事の知事による工事拒否判断を巡り最高裁判決があり、沖縄が敗訴しています。この敗訴で沖縄の抵抗勢力にとって残された選択肢が限られ、ほぼ詰んだ形になっています。その背景の中での国連演説とは何だったのでしょうか?

人権理事会での発言は数が多く、案件ごとに取り出さないと分からないほどです。理事会の判断も時として政治的で曲解していることもあります。過去の慰安婦像関係の判断などはその典型でしょう。よって今回の玉城氏の発言が直接的になにか引き金を引くとは思いませんが、日本政府と沖縄が一枚岩でないことを改めて世界に示した形になります。沖縄は地元の2つのメディアが情報支配しており、その2つが相反ではなく、似ている点で韓国よりたちが悪いのです。沖縄にも主要紙は当然ありますが「売れない、読まない、信じない」世界です。

日本政府の沖縄へのスタンスは金銭的配慮を含む各種支援を返還後、強く推し進めてきていますが、いまだに政府批判が止まらないのは金の問題ではなく恨みであり、それが脈々と引き継がれていく点にあります。バンクーバーでも日系人が戦時中キャンプに収容されたことに対して日本、カナダ両政府に激しいクレームを行い、今でも一部の日系人の日本政府に対する恨みは消えません。「根に持つ」この気持ちを変える為にはリーダーの指導力によるところが大きいのですが、沖縄については少なくとも今は真逆に爆走中という実に残念な政府同士のバトルであります。一般人にはどこ吹く風、なのでしょうけれどね。

玉城デニー沖縄県知事 NHKより

後記
今、日本におり、地獄の分刻みスケジュールをこなしている最中です。これが一週間ほど続くのですが、問題は気温よりも湿気で汗だくになり、カラダの調子が崩れそうなことでしょうか?正直、外には出たくないけどタオルを一日3枚使いながら耐え忍ぶ日々です。それにしても外国人増えましたね。日本も国際化してきていますが外国人と日本人の接点は相変わらず少ないなぁという気がします。白人は独立独歩で動けるけれどアジアから中東系はグループ化しやすく、埼玉、川口あたりのトルコ人やクルド人とのトラブルのようなケースは今後激増する気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月23日の記事より転載させていただきました。

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Sat, 23 Sep 2023 03:00:16 +0000 Sat, 23 Sep 2023 03:00:16 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230925065611.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html
https://agora-web.jp/archives/230922202804.html フランス警察がいじめ容疑で中学生を逮捕:日本もまねするべき? https://agora-web.jp/archives/230922202804.html フランス在住の中学生がトランスジェンダーの高校生を脅迫した罪で地元警察に逮捕されました。 容疑者となった中学生は授業中に教室で手錠をはめられたとされています。

フランスでは法改正により、いじめが犯罪となっており、場合によっては加害者が懲役、禁錮、罰金などの刑に処せられるそうです。

フランス政府関係者は中学生逮捕が「いじめっ子に非常に強いメッセージを送ることが目的」だったとしており、警察の対応を支持しています。

フランスのいじめへの対応は日本国内でも支持を集めているようです。

日本におけるいじめの厳罰化を求める声も。

日本は他国と比較して、いじめが犯罪であるという認識が薄いようです。

しかし、いじめの厳罰化により、モンスターペアレンツがさらに問題を起こすことは回避されなければなりません。

実際、無理難題を要求する保護者のせいで教育現場が疲弊しています。些細なことで訴訟や逮捕要求が増えれば、さらに負担が増します。

ネット上ではいじめの厳罰化は人気があるようですが、稚拙な導入には慎重になる必要があります。

Boarding1Now/iStock

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Sat, 23 Sep 2023 03:00:02 +0000 Sat, 23 Sep 2023 03:00:02 +0000 https://agora-web.jp/archives/230926005030.html https://agora-web.jp/archives/230925143958.html https://agora-web.jp/archives/230924233301.html https://agora-web.jp/archives/230924001007.html https://agora-web.jp/archives/230922211424.html
https://agora-web.jp/archives/230922204342.html ウクライナ戦争と欧米の「選挙戦」 https://agora-web.jp/archives/230922204342.html 「選挙」は民主主義の政治体制を支える大きな柱だが、同時に、政治家の言動を狂わす要因ともなるものだ。選挙で当選しなければ、その日からその政治家は“タダの人”となる欧米諸国の選挙では猶更だろう。そのため、政治家は選挙に勝利するためにあらゆる手段を駆使しようとするからだ。

バイデン米大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領(2023年9月22日、ウクライナ大統領府公式サイトから)

そんな感慨を改めて持ったのはポーランドのモラウィエツキ首相の「ウクライナへは今後武器を供与せず、自国の国力の近代化に投資していきたい」という20日の発言を聞いたからだ。ポーランドは、ロシアがウクライナに軍侵攻をして以来、これまで一貫してウクライナを支援してきた。ウクライナからの避難民を100万人以上受け入れる一方、重火器を積極的にキーウに提供してきた国だ。そのポーランドの首相が突然、「もはや武器をウクライナに供与しない」というのだ。ポーランド政府に何が生じたのか。

理由は明らかだ。ポーランドは目下、選挙戦が展開中だからだ。ポーランドで10月15日、議会選挙(上・下院)が実施される。選挙の焦点は、2期8年間政権を運営してきた保守系与党「法と正義(PiS)」が政権を維持するか、それとも中道リベラル派の最大野党「市民プラットフォーム」(PO)主導の新政権が生まれるかだ。選挙では、下院(セイム)の460議席、上院(セナト)100議席がそれぞれ選出される。複数の世論調査では、両党は拮抗している。もはや政権交代の可能性も排除できない。

与党「法と正義」(PiS)としては党の有力支持基盤の農民層を固める必要がある。具体的に説明する。ウクライナからの穀物が大量に国内に流入すれば、国内の農家たちが安価なウクライナ産穀物に対抗できないから苦しくなる。そこでポーランド政府はウクライナ産穀物の輸入を禁止する政策を取った。すると、キーウのゼレンスキー大統領は怒りを発し、「わが国の国家収入の60%を占める穀物輸出を禁止することは自由貿易の立場からいっても受け入れられない」と反発、ポーランド政府が政策を撤回しないので、世界貿易機関(WTO)にポーランドを提訴したばかりだ。

そのような中、モラウィエツキ首相の「今後ウクライナに武器を供与せず、国内の戦力の近代化に努力したい」という発言が飛び出したわけだ。ただ、ポーランド首相の発言を余り深刻に受け止めるべきではないだろう。実際、ポーランドのドゥダ大統領は翌日の21日、モラウィエツキ首相の発言について、「自国のために購入している新しい兵器は送らないという趣旨だろう」と述べ、今後もウクライナへの支援を続けていく姿勢を改めて強調している。

ポーランドではロシア軍の侵略を受けるウクライナを支援することでは与野党の間には大きな相違はない。問題が生じたのは、ロシアがウクライナ産穀物の黒海経由での輸出にストップをかけて以来、ウクライナ産の穀物がポーランドに輸送され、そこで取引される事態が生じたからだ。ポーランド政府は農民たちの苦情を無視できないので、同じ事情にあるスロバキア、ハンガリーと共にウクライナ産穀物の輸入禁止という処置を取ったわけだ。あれも、これも、全て「選挙」がなす業だ。

ゼレンスキー大統領は目下、ニューヨークの国連総会に参加中にポーランド政府の突然の変心を聞いても余り驚いていない。来年大統領選挙を控えるゼレンスキー氏はポーランド政府の事情を理解しているからだろう。そのうえ、ポーランドは歴史的にみても反ロシァア傾向が強い国だ。国防上からもウクライナを捨てることは絶対にないことを知っているからだ。

興味深いことは、ポーランド首相の発言は本来、ロシア側を喜ばすが、余り浮かれた反応はモスクワからは聞かれない。クレムリンの指導者も「選挙だからだ」と知っているからだ。ちなみに、ロシアでも来年大統領選挙が実施されるが、選挙戦はショーに過ぎず、プーチン大統領の勝利は既に決まっている。モスクワの指導者は「選挙」を控えているからといってその政策を大きく変えることはない。

ウクライナ戦争は長期戦に入った。消耗戦でもあり、関係国にも戦争疲れが見え出してきた。それだけに、来年選挙を控えている欧米諸国の政治家たちは、国民のウクライナ戦争への支援疲れを見落としてはならないだろう。最大のウクライナ支援国・米国でも来年11月、大統領選が実施される。バイデン大統領は再選出馬を決定している。共和党候補者に勝利するためにはウクライナ戦争への対応でポイントを稼ごうとするだろう。同時に、ウクライナへの全面的支援に対して批判の声が出てきていることもあって、バイデン大統領はキーウ政府の武器要求に対してブレーキがかかってしまう。また、欧州連合(EU)加盟国では欧州議会選が実施される。その最大の争点は難民・移民の殺到問題と共にウクライナ戦争とその支援問題だ、といった具合だ。

繰り返すが、選挙を控えている国では、政治家の中で想定外の政策や発言が飛び出してくる可能性は排除できない。ポーランド首相だけではない。ロシアのプーチン大統領は欧米諸国の選挙戦を良く知っているから、さまざまな情報戦を展開し、ウクライナ支援疲れの欧米諸国の国民に囁きかけてくるだろう。「選挙」はウクライナ戦争の今後の動向にも大きな影響を与える要因となっている


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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Sat, 23 Sep 2023 02:55:41 +0000 Sat, 23 Sep 2023 02:55:41 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html
https://agora-web.jp/archives/230922211424.html 迷惑系YouTuberの「私人逮捕」は違法な「私刑」 https://agora-web.jp/archives/230922211424.html 個人が勝手に他人を拘束する私人逮捕の動画が、ツイッター(X)やYouTubeで出回っています。

こういう迷惑系YouTuberの目的は、動画を炎上させてアクセスを稼ぐこと。

やってる当人は警察の代わりに逮捕したつもりかもしれないが、こういう私刑(リンチ)は、法治国家では許されません。

私人逮捕は、通常は許されません。個人が他人の身体を拘束するのは犯罪ですが、今のところツイッターもYouTubeも、アカウント停止などの処置をとっていません。

警察は動き始め、ジョニー・ソマリと名乗る男は逮捕されました。

転売屋がねらわれているようですが、個人が転売するのは違法ではありません。チケット不正転売禁止法が、私刑の温床になっています。こういう悪法は廃止すべきです。

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Fri, 22 Sep 2023 22:17:25 +0000 Fri, 22 Sep 2023 22:17:25 +0000 https://agora-web.jp/archives/230926005030.html https://agora-web.jp/archives/230925143958.html https://agora-web.jp/archives/230924233301.html https://agora-web.jp/archives/230924001007.html https://agora-web.jp/archives/230922202804.html
https://agora-web.jp/archives/230922005933.html 1万円と500円のシャインマスカットの違いって何? https://agora-web.jp/archives/230922005933.html 黒坂岳央です。

シャインマスカットが大幅に価格が下落している。少し前まではどこでも2000〜3000円前後の価格が多かったが、ここへ来てなんと1房500円台で売られているものも出ている。

激安シャインマスカット登場のメディア報道に対し「価格が手頃になるのはありがたいこと」「食べやすいフルーツが広がれば喜ぶ人も増えるのでは?」といったコメントが目立つが、実は決して手放しで喜べる話ではないと思っている。

今では1万円と500円のシャインマスカットが見られるようになった。この価格差は何か?そして大幅に値段が下がってしまうことの問題点は?これらを取り上げたい。

ぶどうブドウ葡萄

TATSUSHI TAKADA/iStock

なぜ価格が急落したのか?

元々はかなり高値がつけられていたシャインマスカットが、急激に価格が落ちている理由は何か?それは複合的な原因が存在する。

1つ目は生産量が大幅に増加したことである。農林水産省の発表では、栽培面積は2010年は256ヘクタールで、10年後の2020年で2280ヘクタールへと9倍に拡大している。東京都中央卸売市場における「シャインマスカット」の産地別年間取扱実績によると、元々の産地は長野県や山梨県、岡山県、山形県などの主要なブドウ生産地だったが、現在では人気が広がって全国区へと広がっている。

もう1つは輸出の減少である。シャインマスカットは元々、日本が開発したブランドぶどうだったが、韓国や中国に流出してしまった経緯がある(過去記事次は和牛が標的。中国・韓国に「盗まれ放題」はもう許されないを参照されたい)これにより、中国や韓国のぶどうとも競争が起こっていることに加えて、日中関係の悪化で特に香港への輸出量が減ってしまい、ダブついたことによって価格下落の原因となっている。

500円と1万円の違いは?

シャインマスカットは500円と1万円のものがある。「同じぶどうなのだから違いなんて大してないのでしょう?」と思われるかもしれない。だが、両者は同じぶどうのマスカットカテゴリと思えないほどの違いがある。一言で言えば品質の違いだが、その差は普段は果物を食べない人であっても一口で別次元の違いが分かるほどである。

500円のシャインマスカットについて、以下はあくまで「高級品と比較した場合のあくまで全体的傾向」での話であることをお断りしておく。中には500円と思えないような高品質のものもある。まず、色はくすんでいるものがあり、粒は不揃いで全体的に小ぶりの傾向である。味も酸味が強かったりで品質は安定しておらず、家庭用の消費には良いが、このぶどうを食べて「人気のシャインマスカットといってもこんなものか。単なる種無しぶどうで普通の味ではないか」と判断してしまうとこのぶどうのポテンシャルを見誤ってしまうだろう。

翻って高級品は宝石のように美しい色だ。収穫現場でもカラーチャートを用いて適切な時期の判断をしており、美しい色は見た目だけではなく品質にも反映されている。香りは貯蔵温度でも異なり、マスカット香はリナロール、ネロール、ゲラニオールなどが成分であり「紅茶のような香り」と評されるものもある。食感もパリッと弾ける感触を楽しむことができ、酸味と甘味のブレンドが正しく絶妙な味だ。形も大ぶりで美しい。筆者は始めて食べた時はあまりにも衝撃的で「こんなにおいしいぶどうが世の中にあるのか!?」と驚いてしまったことを覚えている。

低価格と高級品の違いはワインでたとえるとわかりやすいかもしれない。500円のデイリーワインと、数万円のそれなりのワインとでは同じ容量でも品質には別次元の違いがある。数万円のワインを「高い!」と評する人もいるし、「この年代このぶどう畑で収穫されたものとしては、大変お買い得だ!」と考えるワイン通もいるのに似ている。高級ワインを日常的に消費する人は少なく、盛り上げたいイベントや贈り物で活用されるシーンが多い。シャインマスカットもそれと似たような感覚ではないかと思っている。

安いぶどうに喜ぶ消費者、泣く農家

シャインマスカットの価格が大幅に下落すれば、消費者は喜ぶだろう。手が出しにくかったぶどうが手頃になれば、全体的な消費量も増えて果物離れに歯止めがかかるのではと考える人もいる。

だが、長期的に見てこのトレンドは決して手放しで喜べるものではないと考える。理由の1つ目はブランド価値の毀損である。果物の開発にはとてつもない手間と時間とコストがかかっている。ITのイノベーションと違って、優秀な人がいれば生み出せるというものではなく、気が遠くなるほどの試行錯誤の末に優れた新品種は出るものなのだ。せっかく収益性に優れた品種ができても、あっという間に値崩れしてしまうトレンドが確立すれば開発側、生産側のインセンティブが低下する懸念がある。

もう1つはシャインマスカットが築いてきた「そこそこ高いけど味は抜群」という信頼が崩れてしまうリスクがある。上述した500円と1万円は同じぶどう、同じシャインマスカットと名前がついていてもまったく別のフルーツといっていいほどの違いがある。

スマホでたとえるとAndroidのハイエンドモデルと、激安モデルのような違いだ。Androidスマホはの品質は玉石混交であり、ハイエンドモデルは一部iPhoneを超えるようなスペックのものもあるが、一方で激安モデルは使っていて処理速度が遅かったり、カメラの解像度が低かったりと値段なりの品質だと感じられることもある。同じスマホ、同じAndroidOSというカテゴライズの中でも品質は大きく違う。シャインマスカットの問題点は、スマホと違ってスペック表もなければ製造番号もつけられていないことである。フルーツに詳しいわけではない一般消費者は見分けることは難しい。

安いシャインマスカットが広がりすぎると、「シャインマスカットはおいしいと話題だけど、実際は大したことはない」というイメージが浸透してしまいかねないだろう。過剰といえるレベルの値崩れが起きることは、開発、生産、消費者全体にネガティブな影響を与えてしまうと考えている。シャインマスカットに「安物ブランド」のようなイメージが広がってしまうことは、喜べないのである。

 

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Fri, 22 Sep 2023 22:00:30 +0000 Fri, 22 Sep 2023 22:00:30 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230923074547.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html https://agora-web.jp/archives/230923005208.html https://agora-web.jp/archives/230923014720.html
https://agora-web.jp/archives/230920085540.html なぜ、二世社長は会社を潰してしまうのか?(横須賀 輝尚) https://agora-web.jp/archives/230920085540.html

RichVintage/iStock

社長の後継者が足りない!!

「2025年事業承継問題」がここ数年、経済的脅威として叫ばれています。これは、2025年までに70歳を超える中小企業の経営者が245万人となり、その過半数の127万人が後継者が決まっていないという問題です。全国の中小企業は「跡継ぎ問題」で頭を悩ませています。

しかしながら、ただ跡継ぎが決まれば会社は安泰かといえば、そうではありません。

「二代目、三代目社長は倒産の危険性を孕んでいる」と経営コンサルタントの横須賀輝尚氏は解説します。今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。

なぜ、二世は会社を潰してしまうのか?

社長の息子や娘が事業を引き継ぐ。こういうことは多々あります。近年では、家具屋さんとかアウトドア企業とか、いろんな意味で世の中の話題になっていますが、「身内が会社を継ぐと傾きやすい」とよく言われます。

理由は様々。もちろん、親の代を継いで立派にやっている社長もいるので、ここでは「二代目のジンクス的な話」になります。いくつかパターンを紹介しましょう。まずは二代目が先代のやり方を大きく変えようとするパターン。

二代目って、変えたがるんですよね。どうしても「親のおかげで社長になったボンボン」的な見られ方をしますから、自分の力を見せたい。そういう衝動があるわけです。新しいことを始めると、古参の社員はそれを嫌がる。そして「二代目はわかっていない」と崩壊の道筋をたどります。

こんなパターンもあります。

地方都市で老舗企業を経営している社長。子どもは都会の大学に行き、そのまま都会で就職。ところが、突然社長が事故により急死。跡継ぎとして都会で働いている子どもを呼び寄せ、社長に。

こうした急な事業承継は、知識も理念も経験も承継することができず、八方塞がり。こういうパターンの二代目就任もなかなか苦しいものです。

そのほか、例えば二代目に就任したときにはすでに経営が成り立っているので、財務なども既存の社員に任せっきりで実態を把握しないとか、あるいは子どもに社長を譲ったものの、いつまで経っても親である社長が会長や相談役などの肩書で会社に君臨し続けるなんてのも雲行きが怪しい。

たまに仕事が好き過ぎて引退しない社長もいますけど、この場合は、社長の座を譲った子どもがいつまで経っても社長を任せられる実力が身に付かなくて、離れられないって場合もあります。

だから先代に何かあったら急に崩れるというパターンも。まあ、単に子どもと離れたくないって場合もありますけどね。

ところで、身内以外の承継には「社内出世」の社長と、「プロ経営者」の場合があります。前者は社内で成り上がったいわば「サラリーマン社長」。

後者は、経営のためだけに呼び寄せられた「経営者のプロ」です。

プロ経営者の例としては、スターバックスコーヒージャパン株式会社の代表取締役を務めた岩田松雄氏などが有名です。岩田氏は経営が厳しかったスターバックスコーヒージャパンを、ANAとの提携や「VIA」(スティックコーヒー)の開発などで業績を向上させました。

こういう「プロ経営者」は義理人情で仕事をせず、報酬の対価として経営をします。結果が出なければ解任なので、プロ経営者が社長を務める会社は、潰れにくいといえるかもしれません。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年9月20日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

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Fri, 22 Sep 2023 21:50:37 +0000 Fri, 22 Sep 2023 21:50:37 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074430.html https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230923074547.html https://agora-web.jp/archives/230924115400.html https://agora-web.jp/archives/230924115312.html
https://agora-web.jp/archives/230922005736.html XBB対応ワクチンはコロナ変異株「エリス」「ピロラ」にも有効か? https://agora-web.jp/archives/230922005736.html

Lubo Ivanko/iStock

9月20日から6ヶ月以上の乳幼児を含めて、初回接種を完了したすべての年齢層を対象にコロナワクチンの7回目接種が始まった。

流行株がBA.5からXBBに変異したことから、接種するワクチンは、これまでのオミクロン対応2価ワクチンから、XBB.1.5の遺伝情報をもとに作成したXBB対応ワクチンへ変更された。新聞報道によれば、愛知県岡崎市の集団接種会場へは、初日に340人が訪れ、10月15日までの予約枠は半数ほどが埋まっているようである。

図1に示すように、5月8日から6回目ワクチンの接種を開始したにもかかわらず、コロナの感染者数は激増している。XBBに対してはオミクロン対応2価ワクチンでは感染予防効果が得られないことは明らかである。

図1 6回目ワクチンの接種回数と新規感染者数

実際、モデルナオミクロン対応2価ワクチンで得られる中和抗体価は、武漢株に対しては、9,961倍、BA.4/BA.5変異株に対しては3,355倍あるのにXBB.1.5変異株に対しては298倍に過ぎない(図2)。政府が、流行株に対応したワクチンへの変更を意図したことは理解できる。

図2 モデルナオミクロン対応2価ワクチンによる各種変異株に対する中和抗体価

それでは、流行株に対応したワクチンを選択すれば、期待通りの効果は得られるだろうか。オミクロンやXBB対応コロナワクチンの承認は中和抗体価でもって判断されたが、ワクチンの効果は抗体価のみでなく細胞性免疫など複合的なものである。

図3は第8波における感染者数とワクチン接種回数を示す。第8波の主流株はBA.5であったが、この時期、BA.5の遺伝情報をもとに作成したオミクロン対応ワクチンを接種したにもかかわらず、感染は拡大した。流行株に対応したワクチンを選択すれば、感染がコントロールできるとも言い切れない。

図3 第8波における感染者数とワクチンの接種回数

最近発表された基礎研究によると、ワクチンを3回以上追加接種すると、オミクロン株に対する免疫能が特異的に抑制され、かえって、感染しやすくなるようである。

Immune boosting by B.1.1.529 (Omicron) depends on previous SARS-CoV-2 exposure

米国でも、日本に遅れて9月11日に、XBB対応ワクチンの使用が承認された。しかし、米国ではすでに、XBB.1.5の流行株に占める割合は3.1%にまで減少し、主流はEG.5(エリス)となっている。さらに、新たにBA.2 から派生したBA.2.86(ピロラ)も出現した。

日本でも、9月15日の発表では、エリスが流行株の40%を占め、ピロラも検出されている。XBB対応ワクチンも、既に型落ちワクチンになってしまった。感染症の専門家は、テレビのインタビューに答えて、エリスはXBBから派生した変異株なので、XBB対応ワクチンの効果が期待できるというが、どのようなデータに基づいた見解なのだろうか。

9月12日に開催された米国CDCのAdvisory Committee on Immunization Practices(ACIP)で、ファイザーとモデルナからXBB対応ワクチンのエリス、ピオラに対する中和抗体価が発表された。ファイザーの発表はマウスによる動物実験のデータのみなので、ここではモデルナの発表を紹介する。モデルナからも、感染予防効果や重症化予防効果など、ヒトに対する有効性を検討した結果は報告されていない。

図2には、50gのモデルナXBB対応ワクチン接種29日後の各変異株に対する中和抗体価を示す。ワクチン接種後、XBB.1.5、XBB.1.16に対する中和抗体価は2,711倍、3,694倍に増加した。エリス、ピロラに対する中和抗体価もXBBと比較して劣るものの1,042倍、1,077倍に増加した。感染症の専門家が、エリスはXBBから派生した変異株なのでXBB対応ワクチンでも効果が期待できると主張するのはこのデータに基づいたものと思われる。

しかし、第8波においては、3,000倍以上の中和抗体価が得られたオミクロン対応ワクチンをもってしてもBA.5の感染拡大が見られたことを考えると、XBB対応ワクチンがエリスに効果があることを示すには、ヒトを対象にした臨床データの発表があるまで待つ必要があるであろう。

図4には、わが国におけるワクチン接種とコロナ流行との関係を示す。これまでは、非流行期に追加接種を開始すると、決まって2ヶ月後に流行のピークが見られ、それから2ヶ月ほどかけて収束に向かった。一方、昨年の夏以降、多くの国ではワクチンの追加接種は行われておらず、コロナの流行も見られていない。

図4 ワクチン接種の開始時期とコロナの流行

今回は、5月8日から6回目接種が始まったが、いまだにピークは見えてこない。これまでは、非流行期にワクチンの接種が開始されており、今回のようにコロナの流行期に追加接種が開始されるのは初めてで、今後どのような経過をたどるのか予想できない。

7回目ワクチン接種の判断は、個人に任されているが、ワクチンの有効性以上に副反応の情報が重要である。副反応についても、十分な情報が公開されているとは言い難い。メデイアはワクチンのメリットだけでなく、デメリットに関しても公正な情報を伝えるべきである。

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Fri, 22 Sep 2023 21:40:32 +0000 Fri, 22 Sep 2023 21:40:32 +0000 https://agora-web.jp/archives/230916062039.html https://agora-web.jp/archives/230905053000.html https://agora-web.jp/archives/230904215059.html https://agora-web.jp/archives/230902214817.html https://agora-web.jp/archives/230901074227.html
https://agora-web.jp/archives/230922010704.html 台湾で沖縄を考える(前編) https://agora-web.jp/archives/230922010704.html 9月半ばからの台湾行に本を4冊持ってきた。ロバート・E・エルドリッジの「誰が沖縄を殺すのか-県民こそが“かわいそう”な奇妙な構造-」(PHP新書)と「尖閣問題の起源-沖縄返還とアメリカの中立政策-」(名古屋大学出版会)、西村熊雄の「サンフランシスコ平和条約・日米安保条約」(中公文庫)、そして加地伸行の「『史記』再説 -司馬遷の世界-」(中公文庫)だ。

「台湾有事」がいつ現実になるか知れない中、それと密接に関わる「尖閣」と「沖縄」、51年9月8日の調印で日本を独立させた「サ平和条約」及びそれと不可分な「安保条約」、そして古代中国史などを台湾で考えようとそれらを選んだ。本欄への初投稿が沖縄の県民投票に関する19年2月の募集への応募だったこともある。

09年から在沖縄米軍海兵隊外交政策部次長を務めていたエルドリッジ氏は、キャンプ・シュワブ前で抗議活動をしていた某氏が基地内に進入したことを示す画像を提供したことで、15年に職を解かれた。90年に来日して30余年、神戸大学の法学博士号を持つ日本通で、極めて流暢な日本語で書いた著作もあるほどだ。

seungyeon kim/iStock

折しも18日、ジュネーブで開催中の国連人権理事会で玉城デニー沖縄県知事が英語で90秒ほど演説した。「NHK News web」が邦訳全文を載せているので以下に引いてみる。(太字は筆者、以下同様)

ありがとうございます、議長。ハイサイグスーヨー、私は、日本国沖縄県の知事玉城デニーです。米軍基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている沖縄の状況を世界中から関心を持って見てください。日本全体の国土面積の0.6%しかない沖縄には、在日米軍基地のおよそ7割が集中しています。さらに、日本政府は、貴重な海域を埋め立てて、新基地建設を強行しています。県民投票という民主主義の手続きにより明確に埋立反対という民意が示されたにもかかわらずです。軍事力の増強は日本の周辺地域の緊張を高めることが懸念されるため、沖縄県民の平和を希求する思いとは全く相容れません。私たちは、2016年国連総会で採択された『平和への権利』を私たちの地域において具体化するよう、関係政府による外交努力の強化を要請します。今日はこのような説明の場が頂けたことを感謝しております。ニフェーデービタン。ありがとうございました。

一読この演説には、巧妙な「民意」の対象のすり替えがある。19年2月の県民投票について沖縄県のHPは、「投票率は52.48%となり、投票総数の71.7%、43万4,273人の圧倒的多数の方が辺野古埋立てに反対の意思を示されました。辺野古埋立てに絞った民意が初めて明確に示された」としているからだ。が、演説を聞く者の多くは、全体のトーンから「平和を脅かす米軍基地」に反対する「民意」と錯誤する。

これを報じる他紙はどこも書いていないが、「産経」は19日、15年に翁長知事が同じ場での演説で辺野古移設反対を訴えたいばかりに、「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている」と述べたことに触れている。16日の「主張」(社説)でも「産経」は、「玉城氏が人権理へ 国益を害する言動やめよ」と釘を刺した。保守紙「産経」の気骨だ。

エルドリッジ氏の「誰が沖縄を殺すのか」も、その第一章「沖縄人民の民族自決? -沖縄独立論という虚妄」の冒頭で、翁長氏が15年の演説で使った「自己決定権」=「right to self-determination」なる英語は「民族自決権を明確にイメージさせる言葉である」と述べている。以下に沖縄県のサイトから翁長演説の邦訳全文を引用してみる。

翁長知事の国連での口頭説明(訳)

ありがとうございます、議長。私は、日本国沖縄県の知事、翁長雄志です。沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見てください。沖縄県内の米軍基地は、第二次世界大戦後、米軍に強制接収されて出来た基地です。沖縄が自ら望んで土地を提供したものではありません。沖縄は日本国土の0.6%の面積しかありませんが、在日米軍専用施設の73.8%が存在しています。戦後70年間、未だ米軍基地から派生する事件・事故や環境問題が県民生活に大きな影響を与え続けています。このように沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされています。自国民の自由、平等、人権、民主主義、そういったものを守れない国が、どうして世界の国々とその価値観を共有できるのでしょうか。日本政府は、昨年、沖縄で行われた全ての選挙で示された民意を一顧だにせず、美しい海を埋め立てて辺野古新基地建設作業を強行しようとしています。私は、あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟です。今日はこのような説明の場が頂けたことを感謝しております。ありがとうございました。

太字にした箇所の英文は各々「Okinawans’ right to self-determination is being neglected」と「Our right to self-determination and human rights have been neglected」。この短い演説の中で2度も沖縄県民の「right to self-determination」が「neglect」されていると述べるなどは、如何にも異様だ。

エルドリッジ氏は、「しかも、このスピーチがなされたのは、国連で『組織的で深刻な人権問題』『少数民族問題』を討議するための場である」とし、「おそらく、この表現は意図的に使われたものなのであろう」と推察、論拠として、翁長演説を報じる「沖縄の未来 沖縄が決める/非暴力の闘い 大国に挑む」と題された「琉球新報 号外」を挙げる。

つまり、沖縄県の知事が「国連人権理」という場で用いた「right to self-determination」という語を英語圏の人々が耳にすれば、チベットや内モンゴルや新疆ウイグルのような深刻な人権侵害(人はそれをジェノサイドと呼ぶ)が沖縄で起きているとの錯誤が生じかねず、むしろそれを狙った節があるというのだ。

その「号外」の大意は、「1879年の琉球王国合併以来、沖縄の地位は植民地以下であり続けた。返還後のこの半世紀も、米軍基地の存在により人権侵害と戦争の恐怖が続いている。だから今、沖縄の先住民族自己決定権の獲得(民族自決=独立)を求めて、米国と日本を相手に闘っている」というもの。だが、果たしてこれは本当に沖縄県民140万余の総意なのか。

今回玉城氏は「自己決定権や人権」の語こそ使わなかったが、「意思決定への平等な参加が脅かされる」と言葉を換えて、演説のトーンを「平和を脅かす米軍基地」に反対する沖縄県民の「意思」が反映されないとのニュアンスを醸(かも)した。つまり、翁長演説が「辺野古移設反対」に重きを置いたのに比べ、玉城演説は「平和を脅かす米軍基地」をより強調したように筆者には感じられる。

思うに玉城氏がそうした理由は二つ。一つは9月4日に最高裁が、辺野古の軟弱地盤改良工事を承認しない沖縄県に対して国が行った「是正の指示」を「適法」と判決し、この先県は工事を承認する義務を負ったこと(従わない場合でも、結局は「代執行」となる)。そして二つ目は「中国への阿り」だ。

玉城氏は7月3日から「日本国際貿易促進協会」の河野洋平会長らと訪中した。22日まで約3週間の旅程という。5日の中国共産党序列2位の李強首相との会談では、「厚遇」に舞い上がってか、中国公船の尖閣領海侵入に触れもしなかった。理由を質す記者団に「話に出なかったので、私からあえて言及することもなかった」と嘯く。が、その腰抜けぶりには領土を守る気概の欠片も窺えない。

7月6日の「RKBラジオ」で元RKB解説委員長の飯田和郎氏は、玉城氏の訪中目的を「中国人観光客の沖縄誘致」を念頭に置いた「経済」と「独自外交」だと述べた。観光立県として観光客を誘致するのは当然としても、沖縄県の「独自外交」は何事か。

沖縄県は今年4月、新たに「地域外交室」を設けて、アジア太平洋地域の平和の構築に貢献する「地域外交」を重要施策と位置付けるという。「地域外交」が「観光客の誘致」や「交易の促進」にとどまるなら好ましい。だが「平和の構築」を余りに強調するなら、国の行う工事の差し止めと同様、地方公共団体としての矩を踰えてしまう。

飯田氏は習近平主席が6月に古文書の資料施設を視察したことを報じる「人民日報」にも触れている。それは習氏が解説員に「私は福建省の福州に勤務していた際、福州には琉球館や琉球墓があり、琉球との交流が長く深いことを知りました」「そして、福建出身の多くの人々が当時、琉球へ移住したことも知っています」と述べたと報じている。

7日の「琉球新報デジタル」に拠れば、玉城氏は6日にその福建省福州を訪ね、習のコメントをなぞるように、明代から清代にかけて「福州で亡くなった琉球人の船員や留学生らを埋葬した琉球人墓地」、「中国へ貢ぎ物を献上するため派遣された琉球人らが拠点とし、現在は沖縄と関係する文化財を展示」する「琉球館」、そして「98年に建設された福建・沖縄友好会館」を訪れた。習氏への「阿り」そのものではなかろうか。

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Fri, 22 Sep 2023 21:30:02 +0000 Fri, 22 Sep 2023 21:30:02 +0000 https://agora-web.jp/archives/230925074456.html https://agora-web.jp/archives/230925062831.html https://agora-web.jp/archives/230924231358.html https://agora-web.jp/archives/230924231639.html https://agora-web.jp/archives/230924115337.html