佐倉市議会:平野裕子委員長の発言中止命令と「疑惑の報告書」(上)

Andrii Yalanskyi/iStock

前回の記事では、佐倉市議会文教福祉常任委員会において、私の委員会での発言に対し不当な中止命令をしたさくら会平野裕子委員長の振る舞いについて報告しました。

(前回:恥ずかしい佐倉市議会:委員長不信任決議可決を無視するさくら会平野裕子議員

ごく簡単に事実関係をおさらいすると、

  • 委員会質疑中、私が上程された議案について執行部に対して要望している最中、突然平野委員長から「発言の中止命令」が下された。
  • 平野委員長の当該行為を因として、当該委員会にて、平野委員長に対して委員長の不信任決議及び辞職勧告決議の二つの決議が上程され、可決した。

という事案です。

平野裕子委員長の不信任決議【PDF資料】

平野裕子委員長の辞職勧告決議【PDF資料】

繰り返しになりますが、議会に上程された議案を詳細に審議する場が常任委員会であり、全国のどの地方議会においても、執行部への要望を「してはいけない」議会は存在しないはずです。

要望をしてはいけないということは、議員に「仕事をしてはいけない」と言っていることと同義であるからです。

委員会に付託される議案とは、執行部が「この事業を、この金額で、こういう風に実施したいけれど、よろしいでしょうか?」と議会にうかがう内容です。議会の常任委員会で、委員会の委員たる議員は、議案に対して大きく以下の作業をします。

  • 「この議案はなぜこんなに予算が必要なのですか?」「この予算の内訳はどうなっているのですか?」といった「質問」。
  • 「内容はわかりましたが、この部分について市民への十分な広報をお願いします」「大きな騒音が発生する工事なので、騒音対策は万全にお願いします」といった「要望」。
  • 審議の結果、議案に修正が必要となった場合に行う「修正」。
  • 議案について、自分が「なぜ当該議案に賛成or反対するのか?」を述べ、委員に賛同を促す「討論」。
  • 委員の「賛成or反対」を確認し、多数決で当該委員会の賛否を決する「議決」。

確かに、常任委員会における委員からの「要望」は、慣例として許されている一方で、効力は極めて限定的であるのは確かです。しかし、議案に対して「この点は注意してください」と委員の立場で執行部に念を押す行為は議会の役割として重要ですし、そのような要望が委員会の意見として取り入れられれば、本会議で当該委員会の公式見解として読み上げられます。

平野委員長は、その「要望」をしてはいけない、という運営をしたのです。

平野委員長による「疑惑の報告書」提出

その事案が発生した12月13日の後、同月19日に開催された議会運営委員会(以下「議運」とする)にて、平野委員長は「文教福祉常任委員会における議事運営について(以下「平野文書」とする)」と題した資料を提出し、当該資料は議運で公式文書として配布されました。

平野文書【PDF資料】

この資料は、議運で配布された資料をもとに私があらためて起こした「レプリカ資料」です。元となった配布資料は、私がびっしりとコメントを書き込んだことにより、公開にそぐわないものになってしまったためそのような措置をしていますが、内容は一言一句間違いありません。

この公式文書で平野委員長は大きく二つの事実の捻じ曲げをしています。

私が「事実の捻じ曲げ」と断言する背景には、議会事務局から当日の問題個所のやりとりをテキストに起こしたデータを受領し、確認しているからです。この資料をここでは「事務局資料」と呼ぶことにします。なお、事務局資料は公式な議事録ではなく、委員会の録音音声をAI翻訳したものであるため公開はできませんが、以降はこの事務局資料と、疑惑の文書である「平野文書」をもとに解説します。

平野委員長の「捻じ曲げ」

平野文書では、平野委員長の不信任決議、及び辞職勧告決議が可決した原因になった事実関係を以下のように否定しています。

平野文書 本文全文(太字は筆者)

12月13日の文教福祉常任委員会において、当該委員会の委員長である、私、平野 裕子に対し、不信任決議及び辞職勧告決議が提出され、両決議ともに可決されました。

これらは、「委員長権限において、髙橋とみお委員の発言を中止する旨要請した」ことを理由として提出されたものですが、発言を中止した事実はなく当該委員の発言を簡明にすることを促し、円滑な委員会運営を期するため、要請したものであり、委員長の議事整理権の範疇であると認識しております。

委員会の使命である、付託案件の専門的審査を第一義として、円滑かつ効率的な委員会運営を図るため、今後とも引き続き、委員長としての職責を全うする所存でございます。

以上の文章の中に、以下二つの「事実の捻じ曲げ」が存在します。

  1. 髙橋とみお委員の発言を中止した事実はない
  2. 当該委員の発言を簡明にすることを促した

次回の原稿では、議運で配布された公式文書である平野文書が、事実の捻じ曲げをしていることを、事務局資料の内容を追う形で立証します。

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